社内の煩雑な業務をQRコード決済で改善:Colorkrew(カラクル)
福利厚生の一環として置いてある社内販売の飲み物や菓子。この経費精算が意外に煩雑な作業を伴っている。面倒な小銭精算をキャッシュレス化するとともに、フリーアドレスの課題も解決したアプリ開発の背景を探った。
仕事中、小腹を満たしてくれる社内販売の商品。飲み物だけでなく、クッキーやチョコレート、せんべいもある。何十種類もの菓子や飲み物の前でスマートフォンを取り出し、欲しい菓子の脇にあるQRコードを「ピッ」と読み取って、ケースから取り出す。これで決済完了。使ったのは、IT企業のColorkrew(カラクル)が開発した「Mamoru Biz(マモル・ビズ)」というアプリだ。
同社は、モバイルアプリの企画・開発で顧客を支援するBtoB(企業向け)事業の一方で、自社ブランドのアプリ開発も手掛ける。Mamoru Bizはその一つで、さまざまな社内決済をはじめ、勤怠管理や座席管理、資産管理などにも利用できるアプリとして、すでに約200社の企業が導入している。
「働き方改革」に直結するアプリを開発する背景には、同社のミッション(経営理念)がある。
「当社は『たのしい!をうみだしとどける』というミッションを掲げており、お客さまに対して働くことが楽しくなるインターネットサービスを提供しています。社内でもティール組織※への変換や、管理職・階層が一切ない『バリ(超)フラット(階層のない組織)』の形成に取り組んできました。さらに、従業員全員が楽しく仕事をするためには、仕事のやりがいを阻害する要因、つまり雑務と呼ばれるような『名もなき仕事』をなくすことが重要だと考えました。そこから生まれたアプリがMamoru Bizです」
開発した背景についてこう説明するのは、Mamoru Bizを開発したプロダクトオーナーである前澤俊樹氏だ。
同社はMamoru Biz以前にコミュニケーション型目標達成サービス「Goalous(ゴーラス)」を開発。チーム目標を設定し、達成のためにメンバーが何に取り組んでいるのかを共有したところ、社員の交流が増え、コミュニケーションが活性化した。前澤氏はこれを受け、面倒な入力を要するサイトへの認証を安全かつ簡単に行えるアプリ「Mamoru PUSH(マモル・プッシュ)」を開発し、社内で運用。社員に好評だったため、商品としてリリースした。
「当社のアプリは働き方をより良くするために開発されたものばかりです。実際に社内で使い、改善して使いやすく進化させていきます。その上で感触が良かったものを社外に提供しています」(前澤氏)
※フレデリック・ラルー著『ティール組織』(英治出版)で提唱された。指示系統がなくともメンバーが組織全体の目的を理解し、達成に向けて意思決定していくという特徴がある
Mamoru BizでQRコード決済をすると、スマホの画面に購入履歴が表示され、いくら支払ったのかをリアルタイムで確認できる。同時にその情報は管理者にも通知され、給与天引き用のデータが作成される。このデータが個人の給与情報とひも付けられており、半自動的に給与から引き落とされる仕組みになっている。
「Mamoru Bizの導入前は、経理担当者が現金を回収し、福利厚生用の口座にいったん入金して次回の仕入れ分に充てていました。回収金額と商品の在庫を照らし合わせるといった手間のかかる作業もありました。Mamoru Biz導入後はこうした雑務が減り、生産性の向上につながっています。社内で効果が見えたので、社外向けに販売することを決めました」(前澤氏)
アイデア次第でさまざまな使い方ができるMamoru Bizは、業種を問わずさまざまな企業で活用されている。企業規模も大企業から中小企業までと幅広い。特に、Mamoru Bizの社内決済機能を活用する企業は数十人規模の事務所が多いのが特徴だ。大企業でも、支店や事業所単位で導入して活用するケースがある。
「規模の小さい事業所は、営業が社内販売の管理を兼務することが少なくありません。Mamoru Bizを導入することで負担を減らし、本業に集中することができます。当社の社員数は120名程度ですが、Mamoru Bizは経理担当者1名分の業務をこなしていると思います」(前澤氏)