見積もりの自動化で調達にイノベーションを起こす:CADDi(キャディ )
図面データをアップロードして必要項目を入力すると、最短7秒で見積もり結果が返ってくる。受発注者の双方を助ける“サービス”が製造業の「調達」を革新し、注目を浴びている。
日本の製造業を支える町工場にとって、メーカーの発注に対する見積もり作業の負担は重い。手間をかけた揚げ句、受注を逃すこともある。
「受注の機会を得るためには仕方ない」と町工場が諦めたこの課題の解決に挑戦している企業がある。2017年に創業し、「モノづくり産業のポテンシャルを開放する」をミッションに掲げるキャディだ。
板金加工などの金属加工を専門とする受発注プラットフォーム「CADDi(キャディ)」を開発。経済産業省主導の官民によるスタートアップ支援プログラム「J-Startup」に認定、『週刊東洋経済』(2019年8月24日号、東洋経済新報社)の「すごいベンチャー100」にも選出され、2018年12月には総額10億2000万円の資金調達を行うなど、破竹の勢いで製造業界に旋風を巻き起こしている。
CADDiは、独自開発の原価計算アルゴリズム(計算手順)にのっとった受発注システム。図面データを基に、品質・納期・価格が最も適合する会社とのマッチングを図る。
発注者はまず、CADDiのサービスサイトに図面データをアップロードし、完成品の材質や表面加工方法、溶接の種類といった仕様を指定する。その入力条件をシステムが自動で解析。3D(3次元)CADデータならわずか7秒、2Dの場合でも平均2営業日以内に見積もりが算出される。発注側は低価格で高品質な加工品を安定発注でき、受注側である加工会社は相見積もりによる失注をなくし、安定的に仕事を受けることができる。
2020年3月現在、CADDiは板金加工品をメインに取り扱っているが、顧客の需要に応える形で、機械加工をはじめとする他の製品カテゴリーについても対応を進めている。
製造業においては、設計にはCADなどのシステムが導入され、製造現場では自動化やロボット化が進み、販売にもAIやビッグデータが活用されている。だが、調達には大きなイノベーションが起きていない。特に、見積もり作業は旧態依然のやり方が続けられてきた。
メーカーの調達担当者は、多品種少量の図面を1日に400枚ほど確認しつつ部品を調達しなければならない。そのため、100~200枚の図面をまとめて数社の加工会社に渡し、相見積もりを取ることになる。
見積もりが算出されるまでは1~2週間。途中で設計や仕様の変更があればさらに延びる。そこから一番価格の安いところに発注し、値段交渉、納期の調整と、まだまだ手数と時間がかかる。
また、加工会社側は、まとめて受注した図面に得意でない加工があっても無理して受けるか、できない場合は外注するので、コストも納期もどんどん厳しくなっていく。
見積もり作成業務にもかなり時間を取られ、営業時間外に行うことがほとんどだが、受注率は2割程度しかなく、ほとんどが無駄な作業になってしまう。
このように、受発注の両方にとって見積もり業務は大きな負担だが、CADDiはその負担を大幅に軽減することができる。形状解析、工程分解、原価計算の3ステップで実現した独自のアルゴリズムによって、設計変更があってもすぐに新たな見積もり金額が算出できる。シンプルで使いやすいUI(ユーザーインターフェース※)の裏側で、高度なテクノロジーが仕事をしているのだ。
※ユーザーがパソコンとやり取りをする際の入力や表示方法などの仕組み