パイオニア精神の発揮で積極果敢な海外展開
若松 時代の変化に経営をどう合わせていくかは、企業の生命線です。そのような意味で小泉は海外進出も早かったですね。特に中国で合弁会社を設立した日本企業の先駆けではなかったでしょうか。
植本 滋賀県と中国・湖南省が友好提携関係にあった縁で私が音頭を取り、1986(昭和61)年、現地に日本法人として第1 号の縫製合弁会社を設立しました。現在は、中国でのアパレル生産の主力を2001年設立の江蘇省の工場に移していますが、積年の協力関係が実を結び、おかげさまでフル操業の状態。中国が広大な消費市場であることにも注目し、志を新たに現地内販に力を入れ始めたところです。
若松 アパレル生産は中国沿海部の人件費高騰から、近年ASEAN諸国やバングラデシュに拠点を移す動きが活発になっているようですね。そんな中で今、「ポスト中国」として注目されているのがインドです。インドは2020年代には中国を抜いて人口世界一になるとみられていますし、日本企業で進出しているところはまだ少なくて可能性が非常に大きいですね。
植本 当社の場合はすでに中国での投資を終えていますので、人件費の上昇コストも回収できています。ASEAN諸国での生産は結局、原材料を中国に頼らざるを得ませんのでコストと時間がかかるのです。インドでの先鞭を付け、2007年に北西部のジャイプールに検品センターを開設し、現在は営業支店や工場も設置するなど力を入れています。
若松 アパレル事業においても先々をにらんだ、チャンスを逃さない海外戦略をいち早く進行させています。先に伺った照明や生活家電と同様、時代の変化に敏感に対応する姿勢は小泉グループの根幹になっているようですね。
小泉グループの輪を広げて企業力をさらに高めていく
若松 300周年という節目を越え、この後400年、500年と続いていくためにどのような経営を目指されているのでしょうか。
植本 まず、現在の事業の継続と継承が第一です。これを確実に実現するため、積極的に自社の商品を変え、売り場を変え、売り方を変えていく覚悟です。昨今はインターネットを使ったeコマースが当たり前になり、さまざまな商売に新規参入する企業が増え続けています。eコマースと実店舗を組み合わせるオムニチャネルも急速に進化しているので、どんな業界も構造変化が加速して競争が激化していくことでしょう。そのような状況下で、例えばアパレル事業ならこれまで洋服を中心にしていた商品レンジを、靴やバッグ、アクセサリーを含めたファッション全体に広げていく必要がある。そうなると、既存ではない新しいノウハウをどんどん蓄積して活用する経営が重要と考えます。
若松 新しいノウハウはどのような方法で創造していかれるのでしょうか?
植本 小泉は2004年以降、オッジ・インターナショナルやコスギ、ギャルソンヌなどアパレル7社とグループ化し、今ではそれらの事業が連結売上高の約半分を占めるまでになっています。そうした実績から見れば、M&Aは1つの有効な方法だと思います。ただ、単なる事業規模の拡大を目的にしたものではなく、戦略パートナーとして向き合います。親会社として振る舞うのではなく、相手の強みを生かす統合と考えているのです。当社と新しく仲間になる企業の関係は、団結を柱にした「求心力」と、新領域への広がりを図る「遠心力」が大事だと考えています。
若松 自社グループだけでなく、関わる者全ての満足を目指していく経営ですね。植本会長の言葉からは、まさに近江商人の売り手よし、買い手よし、世間よしの「三方よし」精神で次代への進化を追求していかれるという、強い意志を感じました。これからさらに100年後、200 年後に向かう小泉グループの動向が楽しみでなりません。本日はどうもありがとうございました。
PROFILE
- 小泉㈱
- 所在地 : 〒541-0051 大阪府大阪市中央区備後町3-1-8
- TEL : 06-6223-7800
- 設立 : 1871年
- 資本金 : 4億8000万円
- 売上高 : 530億円(連結、2015年2月期)
- 従業員数 : 1538名
- 事業内容 : グループを統括管理する持ち株会社
http://www.ap.koizumi.co.jp/