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100年経営対談

100年経営対談

成長戦略を実践している経営者、経営理論を展開している有識者など、各界注目の方々とTCG社長・若松が、「100年経営」をテーマに語りつくす対談シリーズです。
100年経営対談 2024.09.02

「“はたらく”に歓びを」をデジタルサービスで実現する

リコー 代表取締役会長 山下 良則氏

 

自律型人材の育成でデジタルサービスというバリューチェーンの構築を

 

若松 社長時代に、「OAメーカーからの脱皮」と「デジタルサービスの会社への変革」を打ち出されました。ビジネスモデルの入り口が「利潤型のサプライチェーン」から「価値型のバリューチェーン」に変わっていきます。

 

山下 従来は、本社の開発・統括組織が商品を作り、お客さまに提供していました。デジタルサービスの会社としてのバリューチェーンは、顧客接点で各地域のお客さまに最適なソリューションを「共創」する地産地消型の価値提供が必須となります。今後は、プラットフォームを日本に置きながら、各地域にある会社がお客さまの課題を咀嚼して最適なデジタルサービスを展開する形になっていくでしょう。

 

若松 サプライチェーンの構築には、物流や倉庫、輸送などの機能連鎖が必要ですが、バリューチェーンという価値連鎖には人的資本の連鎖が鍵を握ります。顧客価値創造のために自主的に考える善循環のチームワークがなければ、価値連鎖は機能しません。

 

山下 誰かが見張っていないといけない会社では大きくなれませんから、ここは焦らずにつくっていきたい。バリューを咀嚼して届ける能力を高めていくために、デジタル人材の育成に取り組んでいます。2022年には「リコーデジタルアカデミー」を設立しました。

 

また、2023年に「はたらく人の創造性コンソーシアム」を異業種8社(2024年7月現在は10社)で立ち上げました。そこでは創造性の価値をどのぐらい認めるか、どのような環境が創造力を発揮しやすいかなどを協働で研究しています。

 

若松 日本の生産性はOECD(経済協力開発機構)の中で低い水準にあります。本質は、「クリエイティブな仕事が組織の中でデザインできていないこと」です。システムでできることはシステムに任せて、人はクリエイティブな仕事を担い、組織価値を高めていく必要があります。私は「ジョブ・リデザイン」と呼んでいますが、日本の生産性を高める大事な鍵になると考えます。

 

山下 その通りですね。社長時代、「働くことは、価値をつくることだ」と発信しているのに、生産性や効率ばかりを支援するのでは100周年を迎えられないのではと不安になりました。生成AIの波がきて、今後も相当量の仕事が変わっていくでしょう。価値を生み出し、それをやりがいや達成感につなげることで社会の役に立つ。2036年には、そんな会社になっていたい。101歳になるのではなく、1歳に生まれ変わる会社になりたいと思っています。

 

若松 私は「100年続く会社は変化を経営する会社」と定義付けました。企業変革には経営理念以外は全て変えるぐらいの気概が必要ですが、「古人の跡を求めず、古人の求めたる所を求めよ」(松尾芭蕉)という言葉があるように、変革には原点を掘り下げていく思考も必要ですね。

 

山下 やはり不易流行が大事です。原点である「三愛精神の実践」と「お客さまに寄り添う」という2つは変えてはいけませんが、後は時代に先行しながら変えて良い。最近は、三愛精神も古くて新しい言葉になっているとつくづく思います。「国を愛す」は、今ならば「地球を愛す」でしょう。1998年に当時代表取締役社長だった桜井正光が「環境経営」を掲げて以降、当社は積極的にサステナビリティ経営に取り組んできました。そして「勤めを愛す」は、「“はたらく”に歓びを」につながっている。三愛精神は不易ですが、中身は時代に合わせて流行している。それが「不易流行」なのだと思い至りました。

 

若松 私は、経営者は経営理念の翻訳者だと言っています。時代に合わせて解釈をアップデートするセンスが求められます。山下会長は、まさにそれを実践されています。タナベコンサルティンググループも今の時代に合わせてパーパスを策定しましたが、創業の精神とクライアントへの向き合い方は変わりません。

 

山下 非常に共感します。また、新しく翻訳したものを、いかに会社の共通価値にできるかが大事です。役員から現場まで、ポジションに関係なく共通言語や共通概念として共有した上で、いかにお客さまのために自律的に動けるかにかかっています。

 

若松 優秀な会社は、新入社員と話していても社長と話しているような気持ちになる会社だと思いますが、会社の思いが自分の言葉で語られている状態。それが、自律的な働き方のベースになり、「らしさ」をつくっていくのです。

 

100周年に向けて、リコーグループが三愛精神を胸に、ますます社会変革へ貢献される存在になられることを楽しみにしています。そして最後に、当社としても日本経済の社会課題となっている企業のDX戦略を、今回の業務提携を通じて共に力強く推進していきたいと思っています。本日はありがとうございました。

 

 

リコー 代表取締役会長 山下 良則(やました よしのり)氏

1957年兵庫県生まれ。1980年広島大学工学部卒業後、リコー入社。1995年RICOH UK PRODUCTS LTD.管理部長、2008年RICOH ELECTRONICS, INC.社長、2010年リコー グループ執行役員、2011年常務執行役員、総合経営企画室長、2014年ビジネスソリューションズ事業本部長、2016年副社長執行役員、2017年代表取締役 社長執行役員・CEOなどを経て、2023年より現職。

 

 

タナベコンサルティンググループ タナベコンサルティング 代表取締役社長 若松 孝彦(わかまつ たかひこ)

タナベコンサルティンググループのトップとしてその使命を追求しながら、経営コンサルタントとして指導してきた会社は、業種・地域を問わず大企業から中堅企業まで約1000社に及ぶ。独自の経営理論で全国のファーストコールカンパニーから多くの支持を得ている。
1989年にタナベ経営(現タナベコンサルティング)に入社。2009年より専務取締役コンサルティング統轄本部長、副社長を経て2014年より現職。2016年9月に東証1部(現プライム)上場を実現。関西学院大学大学院(経営学修士)修了。『チームコンサルティング理論』『100年経営』『戦略をつくる力』『甦る経営』(共にダイヤモンド社)ほか著書多数。

 

 

タナベコンサルティンググループ(TCG)

大企業から中堅企業のビジョン・戦略策定から現場における経営システム・DX実装までを一気通貫で支援する経営コンサルティング・バリューチェーンを提供。全国660名のプロフェッショナル人材を有し、1957年の創業以来17,000社の支援実績を持つ日本の経営コンサルティングのパイオニア。

 

 

PROFILE

  • (株)リコー
  • 所在地 : 東京都大田区中馬込1-3-6
  • 創業 : 1936年
  • 代表者 : 代表取締役 社長執行役員 大山 晃
  • 売上高 : 2兆3489億円(連結、2024年3月期)
  • 従業員数 : 7万9544名(連結、2024年3月現在)

 

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