食品業界への総合的なソリューションで成長を続けるファーストコールカンパニー:丸信 代表取締役社長 平木 洋二×タナベコンサルティング 若松 孝彦
企業価値を高めるグループM&A戦略を推進
若松 長期間、増収を続けるもう1つの要因としてM&Aが挙げられます。平木社長が就任されて以降、2018年に清水盛光堂とはし萬を、2022年には松栄美術印刷と創美をグループ企業にされています。関連する企業ばかりですが、M&Aを実施する上で方針や基準をお持ちですか。
平木 現在も工場建設を進めていますが、M&Aでグループに入った企業は、当社が製造する製品を顧客へダイレクトに販売することで工場の生産回転率を上げています。その上で、販売エリアを広島、大阪、東京と拡大できています。そうしたシナジー戦略は常に念頭に置いています。
また、後継者育成という側面もあります。当社の場合、親族の後継者がいないので、プロパー社員から次期社長を選ぶと宣言しています。しかし、現在の規模の会社をいきなり任せるのは難しい。ですから、若いうちから子会社で経営者としての経験を積んでもらいたいと思っています。
若松 経営者育成として役立っていますね。すでにいくつかの子会社を任されているのでしょうか。
平木 はい。例えば、清水盛光堂は40歳代前半の営業部門出身の社員が社長を務めていますし、松栄美術印刷は30歳代半ばの社員に社長を任せています。若い社員にそういったチャンスがあることで、新たな人材を引き付ける魅力になると考えています。
丸信インターナショナル保育園の開設とD&Iの推進
若松 丸信は人材育成に関して昔から力を入れていました。平木社長も人材育成に注力されています。また、2018年に企業主導型保育事業として丸信インターナショナル保育園を開設されたほか、ダイバーシティー&インクルージョン(D&I)も積極的に推進しています。
平木 当社の社員構成は女性比率が約52%です。女性の力は大きいですし、強みであるデザイン部門にも女性社員が多く活躍しています。地方においては、女性の力を生かして会社を変えていくことが大切だと思っています。
企業主導型保育事業については、地域の貧困問題が関係しています。実は、地域によっては貧困率の高い地域があります。地元の子どもの4人に1人以上が統計上の貧困に分類されていると知り、以前から子ども食堂を支援してきました。
あるとき、NPO(非営利団体)の方から「シングルマザーのご家庭に貧困問題は偏在している」と教えていただいたのをきっかけに社内を調査すると、当社もシングルマザーの社員が働いていることが分かりました。彼女たちにインタビューすると、「子どもが病気になったときに預ける先がない」ことが課題だと。当時も市に病児保育のインフラはあったものの、利用する際にさまざまなハードルがありました。
そうした課題を何とかしたいと考えていた中、2016年度に内閣府主導で企業主導型保育所が認可されたため、病児保育所を併設する保育園の開設に至りました。保育所は社員だけでなく地域にも開放しており、病児保育だけ利用される方も多くおられます。
若松 それはD&Iの推進であると同時に、企業の持続的成長のためのサステナビリティ活動、社会貢献活動でもありますね。社員はもちろんですが、地域の方々も大変喜ばれていると思います。今後の展望についてはどのようにお考えですか。
平木 実は、規模だけの拡大はあまり考えたことはありません。常に考えているのは、食品業界に向けたソリューションをいかに増やしていくかということ。食品業界に絞ってソリューションを総合的に展開することで、食品関連の会社が何か困ったときに一番に相談していただける存在になりたいと思っています。
若松 もともと創業時から顧客に寄り添う思いを強くお持ちですし、情報をビジネスに実装させるリーダーシップ、社員を非常に大切にされながら人材育成を推進する点にも敬意を表します。それが高いオリジナリティーを創り上げているのだと、あらためて感じました。長年ご一緒してきて思うのは、平木社長は「学び、成長し続ける経営者」です。第2創業者として、ますます会社を成長させていかれることでしょう。本日はありがとうございました。
食品に関するトレンド・技術情報をはじめ、商品・サービス情報などを発信する食品総合情報サイト「食品開発OEM.jp」は、平木氏が運用していた社長ブログで得た経験をヒントに開発。多様なデジタルサイトの展開で潜在・顕在顧客のニーズをつかみ、新規・継続受注につなげる
丸信 代表取締役社長 平木 洋二(ひらき ようじ)氏
1969年福岡県久留米市生まれ。東京理科大学理工学部卒業後、1993年アイ・エヌ・エイ生命保険(現SOMPOひまわり生命)入社。1998年に丸信入社後、2003年より取締役、2010年より現職。
タナベコンサルティンググループ タナベコンサルティング 代表取締役社長 若松 孝彦(わかまつ たかひこ)
タナベコンサルティンググループのトップとしてその使命を追求しながら、経営コンサルタントとして指導してきた会社は、業種・地域を問わず大企業から中堅企業まで約1000社に及ぶ。独自の経営理論で全国のファーストコールカンパニーから多くの支持を得ている。1989年にタナベ経営(現タナベコンサルティング)に入社。2009年より専務取締役コンサルティング統轄本部長、副社長を経て2014年より現職。2016年9月に東証1部(現プライム)上場を実現。関西学院大学大学院(経営学修士)修了。『100年経営』『戦略をつくる力』『甦る経営』(共にダイヤモンド社)ほか著書多数。
タナベコンサルティンググループ(TCG)
大企業から中堅企業のビジョン・戦略策定から現場における経営システム・DX実装までを一気通貫で支援する経営コンサルティング・バリューチェーンを提供。全国600名のプロフェッショナル人材を有し、1957年の創業以来15,000社の支援実績を持つ日本の経営コンサルティングのパイオニア。
PROFILE
- (株)丸信
- 所在地 : 福岡県久留米市山川市ノ上町7-20
- 設立 : 1968年
- 代表者 : 代表取締役社長 平木 洋二
- 売上高 : 113億200万円(2023年2月期)
- 従業員数 : 464名(2023年3月現在)