100年経営対談
2023.11.01
食品業界への総合的なソリューションで成長を続けるファーストコールカンパニー:丸信 代表取締役社長 平木 洋二×タナベコンサルティング 若松 孝彦

食品業界向けの包装資材やシール・ラベル印刷製造、そしてデジタルソリューション事業を掛け合わせたバリューチェーンで37期連続増収を続ける丸信グループ。グループの中核を担う丸信は売上高約113億円、従業員数464名、同グループが見据えるのは食品業界の課題を解決するソリューション企業だ。代表取締役社長の平木洋二氏にこれからのビジョンや戦略を解説いただいた。
顧客の声に誠実に耳を傾けて事業を拡大
若松 丸信グループとタナベコンサルティングは長いお付き合いで、25年ほどになります。私自身もお父さまの平木信義会長(ファウンダー)時代からのご縁ですからね。平木社長も勉強熱心で当社のセミナーや研究会へのご参加、コンサルティングなどで今もご支援させていただいていることに感謝します。そして、タナベコンサルティンググループのグループ企業であるリーディング・ソリューションの中田義将社長や月田幸穂取締役とも、デジタルコンサルティングでご一緒していることに運命すら感じています。
丸信グループは、5つの事業会社と丸信ホールディングスからなる企業グループです。創業は1968年。祖業は乾燥しいたけの進物用木箱の製造ですが、現在は食品包装資材の販売からシール・ラベル印刷、パッケージ印刷・加工に加え、デジタルサイトの制作・運営まで幅広い事業を手掛けておられます。
あらためてお伺いしますが、祖業に加え、新しい事業に取り組む転機となった時期はいつごろでしょうか。
平木 創業当初、会長は木箱の製造技術の水平展開を模索していたようです。幼い頃、家には父が作った積み木や将棋盤など木のおもちゃの試作品がいくつもありました。
ただ、その分野は参入が困難と判断。次に着目したのが「包む」という機能です。1972年に包装資材の販売を始めると、最初こそ苦労したもののお客さまのニーズにうまく乗って成長しました。
若松 現在も主力事業である包装資材事業ですね。シール・ラベル印刷に進出されたのも、包装資材からのつながりでしょうか。
平木 包装資材事業は競合とまったく同じ物を販売するため差別化が難しく、価格勝負になってしまいます。そこで会長は、新事業のヒントを求めて顧客に話を聞いて回りました。そうした中、あるお客さま(スーパーマーケット)からいただいたアドバイスが、「ラベル印刷かお客さまの店舗のカゴを洗う仕事、どちらかが良いのではないか」というもの。そこでラベル印刷を始めましたが、ものづくりは会長の性に合っていたようです。シール事業が軌道に乗ると新工場を建設。1990年にはオフセット印刷を導入してパッケージ印刷加工を開始しました。
若松 包装資材事業からメーカー事業、ものづくり事業への転換ですね。企業の成長過程における大きな戦略転換です。現在のセグメントとして、シール・ラベル印刷やパッケージ印刷加工といったものづくりと、包装資材などの各事業の比率はどの程度ですか。
平木 今でも売上高の軸は包装資材の卸売事業です。2023年2月期の売上高は113億円。そのうち卸売事業が59億円と52.2%を占めています。シール・ラベル印刷が31.7億円(28.1%)、紙器が19.9億円(17.6%)、その他事業が2.4億円(2.1%)です。
製造、卸売り、デジタルの一貫したバリューチェーンで37期連続増収を達成
若松 先代が製造ビジネスに参入し、それを平木社長の代でさらに磨きながら多様なデジタル事業を立ち上げ、食品業界に対する製造、卸売り、デジタルの一貫したバリューチェーンを構築しているところに、第2創業と呼ぶにふさわしい独創性を感じます。
平木 顧客層が同じですから、包装資材とシール印刷の組み合わせは相性が良いと思います。訪問営業をする際もシール印刷だけでなく、包装資材とも一緒に営業が可能であることも、成功の一因だと思います。
現在は包装資材事業、シールやパッケージ印刷事業に加え、デジタルソリューション事業に積極的に取り組んでいます。食品業界に対して幅広いソリューションを提供しており、「ラベル印刷・シール印刷.com」「食品衛生.com」「食品開発OEM.jp」「丸信×indeed」「九州お取り寄せ本舗」といったウェブサイト運営も含め、食品業界に対するソリューション事業を育てています。ウェブサイトを見た全国の方々からお問い合わせをいただいており、貴重な顧客リード(情報)獲得の場となっています。
もともと当社のデザイン力には定評があったため、いつのころからか「ECサイトをつくってほしい」といった要望が寄せられるようになりました。そうした声に応えるべくウェブ人材を採用して試行錯誤し、対応できる体制になったことは、その後の展開にとって非常に大きかったですね。自前のウェブサイトを立ち上げてあらゆる販促活動を試しながら蓄積してきたノウハウが今、顧客のECサイト制作や運営などの支援につながっています。
若松 大切なことは、「顧客の困り事」や「直面している課題」の解決です。いつの時代も顧客の声に耳を傾け、その解決をビジネスにすることです。その中でも「食品開発OEM.jp」は、デジタルソリューションの中核を担っていると感じます。
平木 おっしゃる通りです。「食品開発OEM.jp」はリーディング・ソリューション協力のもと丸信が運営する、食品に関する総合情報の提供と、食品開発に取り組む企業のマッチング機能を併せ持つ食品総合ソリューションサイトです。
食品に関するトレンド・技術情報をはじめ、商品・サービス情報などを発信するだけでなく、食品製造を受託できるメーカーを探す商品開発企業と、食品工場の稼働率向上や新規製造案件の増加などを目的とする食品受託製造企業をマッチングするプラットフォームでもあります。
もともとは私が社長ブログとしてウェブサイトを運用しており、ウェブ広告も勉強する中で、少数ではありますが問い合わせをいただいていました。デジタルソリューションに可能性を見いだす中、タナベコンサルティングが開催する「FCC(ファーストコールカンパニー)フォーラム」で中田社長の講演を聞き、相談の機会をいただいたことが、「食品開発OEM.jp」の実現につながりました。
新規・既存顧客のマッチングをサポートする中で、新商品のシール・ラベル印刷やウェブサイト制作のご相談があれば当社の売り上げにつながります。現在は月のサイトアクセスが3万を超え、約200件のリード情報を獲得するなど、デジタルソリューション事業の中核を担うウェブサイトに成長しています。
リーディング・ソリューションには、デジタルマーケティングの企画立案や毎月の安定的な運用をお願いしており、検索エンジンで1位に表示されるなどの成果も生まれています。
若松 新たに食品衛生管理や商品開発、マーケティングなどのデジタルソリューション事業を相次いで立ち上げていらっしゃいます。人材採用メディアも運営されていますね。
平木 はい。きっかけは当社の成功体験です。ウェブ上で求人広告を掲載するIndeed(インディード)を通して良い人材を採用できたので、食品業界の採用にも役立つだろうと代理店を志願しました。
今はいくつかの媒体と組んで採用ソリューションを提供しています。HR(人的資源)領域は将来、事業の柱になるのではないかと期待しています。
若松 人材の流動化が進んでいますし、食品業界も人手不足も深刻化しているため、HR領域は今後も伸びていく分野だと思います。丸信グループが成長した背景として、顧客が抱える課題を見つける力があるだけでなく、そうした課題を固定観念で捉えずに独自のソリューションを提供している点が挙げられます。その結果、多様な事業が生まれて相互に補完し合っていることが、唯一無二のビジネスモデルを形成しています。
丸信ホールディングスの「食品企業の成長のためにトータルソリューションの提供を通じて貢献したい」という「志」と、平木社長の「意志」がビジネスモデルやバリューチェーンに表れています。
企業価値を高めるグループM&A戦略を推進
若松 長期間、増収を続けるもう1つの要因としてM&Aが挙げられます。平木社長が就任されて以降、2018年に清水盛光堂とはし萬を、2022年には松栄美術印刷と創美をグループ企業にされています。関連する企業ばかりですが、M&Aを実施する上で方針や基準をお持ちですか。
平木 現在も工場建設を進めていますが、M&Aでグループに入った企業は、当社が製造する製品を顧客へダイレクトに販売することで工場の生産回転率を上げています。その上で、販売エリアを広島、大阪、東京と拡大できています。そうしたシナジー戦略は常に念頭に置いています。
また、後継者育成という側面もあります。当社の場合、親族の後継者がいないので、プロパー社員から次期社長を選ぶと宣言しています。しかし、現在の規模の会社をいきなり任せるのは難しい。ですから、若いうちから子会社で経営者としての経験を積んでもらいたいと思っています。
若松 経営者育成として役立っていますね。すでにいくつかの子会社を任されているのでしょうか。
平木 はい。例えば、清水盛光堂は40歳代前半の営業部門出身の社員が社長を務めていますし、松栄美術印刷は30歳代半ばの社員に社長を任せています。若い社員にそういったチャンスがあることで、新たな人材を引き付ける魅力になると考えています。
丸信インターナショナル保育園の開設とD&Iの推進
若松 丸信は人材育成に関して昔から力を入れていました。平木社長も人材育成に注力されています。また、2018年に企業主導型保育事業として丸信インターナショナル保育園を開設されたほか、ダイバーシティー&インクルージョン(D&I)も積極的に推進しています。
平木 当社の社員構成は女性比率が約52%です。女性の力は大きいですし、強みであるデザイン部門にも女性社員が多く活躍しています。地方においては、女性の力を生かして会社を変えていくことが大切だと思っています。
企業主導型保育事業については、地域の貧困問題が関係しています。実は、地域によっては貧困率の高い地域があります。地元の子どもの4人に1人以上が統計上の貧困に分類されていると知り、以前から子ども食堂を支援してきました。
あるとき、NPO(非営利団体)の方から「シングルマザーのご家庭に貧困問題は偏在している」と教えていただいたのをきっかけに社内を調査すると、当社もシングルマザーの社員が働いていることが分かりました。彼女たちにインタビューすると、「子どもが病気になったときに預ける先がない」ことが課題だと。当時も市に病児保育のインフラはあったものの、利用する際にさまざまなハードルがありました。
そうした課題を何とかしたいと考えていた中、2016年度に内閣府主導で企業主導型保育所が認可されたため、病児保育所を併設する保育園の開設に至りました。保育所は社員だけでなく地域にも開放しており、病児保育だけ利用される方も多くおられます。
若松 それはD&Iの推進であると同時に、企業の持続的成長のためのサステナビリティ活動、社会貢献活動でもありますね。社員はもちろんですが、地域の方々も大変喜ばれていると思います。今後の展望についてはどのようにお考えですか。
平木 実は、規模だけの拡大はあまり考えたことはありません。常に考えているのは、食品業界に向けたソリューションをいかに増やしていくかということ。食品業界に絞ってソリューションを総合的に展開することで、食品関連の会社が何か困ったときに一番に相談していただける存在になりたいと思っています。
若松 もともと創業時から顧客に寄り添う思いを強くお持ちですし、情報をビジネスに実装させるリーダーシップ、社員を非常に大切にされながら人材育成を推進する点にも敬意を表します。それが高いオリジナリティーを創り上げているのだと、あらためて感じました。長年ご一緒してきて思うのは、平木社長は「学び、成長し続ける経営者」です。第2創業者として、ますます会社を成長させていかれることでしょう。本日はありがとうございました。
食品に関するトレンド・技術情報をはじめ、商品・サービス情報などを発信する食品総合情報サイト「食品開発OEM.jp」は、平木氏が運用していた社長ブログで得た経験をヒントに開発。多様なデジタルサイトの展開で潜在・顕在顧客のニーズをつかみ、新規・継続受注につなげる
丸信 代表取締役社長 平木 洋二(ひらき ようじ)氏
1969年福岡県久留米市生まれ。東京理科大学理工学部卒業後、1993年アイ・エヌ・エイ生命保険(現SOMPOひまわり生命)入社。1998年に丸信入社後、2003年より取締役、2010年より現職。
タナベコンサルティンググループ タナベコンサルティング 代表取締役社長 若松 孝彦(わかまつ たかひこ)
タナベコンサルティンググループのトップとしてその使命を追求しながら、経営コンサルタントとして指導してきた会社は、業種・地域を問わず大企業から中堅企業まで約1000社に及ぶ。独自の経営理論で全国のファーストコールカンパニーから多くの支持を得ている。1989年にタナベ経営(現タナベコンサルティング)に入社。2009年より専務取締役コンサルティング統轄本部長、副社長を経て2014年より現職。2016年9月に東証1部(現プライム)上場を実現。関西学院大学大学院(経営学修士)修了。『100年経営』『戦略をつくる力』『甦る経営』(共にダイヤモンド社)ほか著書多数。
タナベコンサルティンググループ(TCG)
大企業から中堅企業のビジョン・戦略策定から現場における経営システム・DX実装までを一気通貫で支援する経営コンサルティング・バリューチェーンを提供。全国600名のプロフェッショナル人材を有し、1957年の創業以来15,000社の支援実績を持つ日本の経営コンサルティングのパイオニア。
PROFILE
- (株)丸信
- 所在地 : 福岡県久留米市山川市ノ上町7-20
- 設立 : 1968年
- 代表者 : 代表取締役社長 平木 洋二
- 売上高 : 113億200万円(2023年2月期)
- 従業員数 : 464名(2023年3月現在)