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100年経営対談
100年経営対談
成長戦略を実践している経営者、経営理論を展開している有識者など、各界注目の方々とTCG社長・若松が、「100年経営」をテーマに語りつくす対談シリーズです。
100年経営対談 2022.11.01

「いま、必要とされるもの」を追求し、家庭総合サービス企業へ進化する:テノ.ホールディングス 代表取締役 池内比呂子×タナベコンサルティング 若松 孝彦

「女性目線」で考えることが、
当グループのビジネスやイノベーション、働き方の源です

 

 

コロナ禍で苦境に立たされた女性の新たな挑戦を応援する

 

若松 したがって、D&Iが企業の強みになる時代です。また、タナベコンサルティングは人事制度と人材育成制度の改革をお手伝いしていますが、人材活用で言えば、保育士を養成する「テノスクール」も個性と言えますね。

 

池内 テノスクールは当グループの一番の売りです。他社との差別化を目的に2005年から開講しています。「ベビーシッタースクールを卒業したスタッフを派遣します」と伝えることでお客さまにご安心いただけます。

 

2020年以降は、オンラインの保育士養成講座を無償で開講しています。コロナ禍でサービス業や飲食業に従事されていた女性が多く失業されたという話も聞きます。そうした女性を応援するのが1番の目的です。加えて、サービス提供側としては保育士を増やすという意味合いもあります。

 

若松 新たに働く機会を提供されており、素晴らしい取り組みです。また、コロナ禍は人材不足という課題を解決するチャンスとも言えます。人材について言えば、テノ.ホールディングスのグループ長期ビジョン「teno VISION 2030」の達成に向けた中期経営計画においても、人事施策を重点項目に挙げています。今の時期に人事施策に注力する理由をお聞かせください。

 

池内 社員の希望をかなえたいというのが理由です。2020年2月にteno VISION 2030を策定し、その達成に向けて社内の若手人材から意見を集めたところ、人事評価の公平性・妥当性に関する意見が多く集まりました。サービスを提供しているのは社員です。働き手にとっても良い会社を目指すために、まずは不満の多い人事制度の改革に着手しました。

 

若松 2019年に東証1部(現東証プライム)市場に上場されています。その時に人事制度を整備されていたのではないでしょうか。

 

池内 上場前に整備すべき部分は全て整えたものの、まだ足りない部分もあります。「組織は利で動き、人は情で動く」がビジネスの姿であり、組織を動かすのは人の情に近いと私は思います。もちろん、「利」の部分は先ほど申し上げたような制度づくりで対応していますが、「情」の部分である社員のやる気を高めるコミュニティーや社員が自分ごとと感じられる組織づくりこそ、最重要ではないかと考えています。

 

若松 同感です。これからはエンゲージメント指数の高い、共感を生む組織が成長すると思いますし、そのような企業がイノベーションも起こすでしょう。

 

 

組織づくりに注力し100年企業の実現を目指す

 

若松 創業から22期連続で増収を記録されています。teno VISION 2030は、目標として売上高500億円を掲げていますが、重点分野はありますか。

 

池内 女性のライフステージを応援する、あらゆるビジネスを手掛けていきたいと考えています。2021年12月現在、保育事業の売上高は約108億円ですが、それを200億円まで上げていきたいですね。これは保育周辺の教育も含めて200億円を目指していくイメージです。例えば、インターナショナルスクールなど、付加価値を高めながら保育を深掘りしていきたいと考えています。保育はさまざまな掘り方ができる分野なので、本当に楽しみです。

 

若松 500億円のうち、200億円が保育事業。残る6割はどの分野を想定されていますか。

 

池内 介護事業や保育に付随する事業が伸びていくと予測しています。介護事業は競合相手が多いものの、保育事業よりもニーズは大きい。保育で培ったノウハウは当グループの強みと言えます。介護事業に関しても、そのノウハウを生かしながら、直営と受託の両輪で成長させていきたいと考えています。

 

若松 なるほど。保育のスキルやノウハウが生かせる分野であり、成長が期待されます。

 

池内 保育事業は、親にとって最も大切なお子さまを預かるサービスであり、ここで信頼を獲得できると「テノさんの介護なら安心」「テノさんの結婚相談所なら」「テノさんのハウスサービスなら」といったように、次のビジネスにもつながっていく。そうしたシナジーが循環する仕組みをつくりながら、女性やその家族がいま必要とするサービスを提供し続けていきたいですね。

 

若松 経営理論的に言えば、女性のライフステージをサポートするバリューチェーンの構築です。バリューが途切れた箇所はM&Aなどで補うなどして、しっかりとつないでいくと経営理念の実現に近付きます。

 

最後に社長として挑戦したいことや、今後のビジョンについてお聞かせください。

 

池内 上場を目指した最大の理由は、「100年企業」の実現にあります。創業からこれまでの20年間は、「必要とされるものをつくり続ける」をコンセプトに事業を展開してきました。現在は創業者として、100年先も世の中の役に立ち続ける会社を目指して取り組んでいます。

 

介護1つとっても、時代によって必要とされるサービスは変わります。「今、必要とされるものを提供する」という軸をぶれさせず、社会貢献と収益を両立しながら100年続く経営に挑戦したい。また、次世代へのバトンタッチも上場した目的の1つです。そこに向けてしっかりと人事制度の改革に取り組んでいきます。

 

若松 これからも「女性のライフステージを応援する」を軸に、世の中に必要とされる製品・サービスを生み続けることで持続的成長を実現されることを願っています。私たちも100年企業に向けた組織づくりのお手伝いができることを大変光栄に思います。本日はありがとうございました。

 

 

 

テノ.ホールディングス 代表取締役 池内 比呂子(いけうち ひろこ)氏

長崎県大村市出身。短期大学卒業後、外資系企業に勤務。ベビーシッターサービス提供を目的に、1999年7月にドウイット(現テノ.コーポレーション)を設立。2013年より九州経済連合会理事に就任。趣味はゴルフ。

 

 

タナベコンサルティンググループ タナベコンサルティング 代表取締役社長 若松 孝彦(わかまつ たかひこ)

タナベコンサルティンググループのトップとしてその使命を追求しながら、経営コンサルタントとして指導してきた会社は、業種・地域を問わず大企業から中堅企業まで約1000社に及ぶ。独自の経営理論で全国のファーストコールカンパニーから多くの支持を得ている。1989年にタナベ経営(現タナベコンサルティング)に入社。2009年より専務取締役コンサルティング統轄本部長、副社長を経て2014年より現職。2016年9月に東証1部(現プライム)上場を実現。関西学院大学大学院(経営学修士)修了。『100年経営』『戦略をつくる力』『甦る経営』(共にダイヤモンド社)ほか著書多数。

 

 

タナベコンサルティンググループ(TCG)

大企業から中堅企業のビジョン・戦略策定から現場における経営システム・DX実装までを一気通貫で支援する経営コンサルティング・バリューチェーンを提供。全国600名のプロフェッショナル人材を有し、1957年の創業以来15,000社の支援実績を持つ日本の経営コンサルティングのパイオニア。

 

 

PROFILE

  • (株)テノ.ホールディングス
  • 所在地:福岡県福岡市博多区上呉服町10-10 呉服町ビジネスセンター5F
  • 設立:2015年(創業:1999年)
  • 代表者:代表取締役 池内 比呂子
  • 売上高:114億5400万円(グループ計、2021年12月期)
  • 従業員数:1885名(グループ計、2021年12月現在)