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100年経営対談
100年経営対談
成長戦略を実践している経営者、経営理論を展開している有識者など、各界注目の方々とTCG社長・若松が、「100年経営」をテーマに語りつくす対談シリーズです。
100年経営対談 2020.11.30

経営理念を共有し、貢献価値の高い経営を目指す 総合メディカル 相談役 小山田 浩定氏

世界に通じる日本型ヘルスケアビジネスをつくることが私たちの使命

 

 

目先の利益だけを追わないフェアな経営を貫く

 

若松 医療分野の課題を解決する貴社のサービスは、「開発」と言っても良いぐらいです。どこから着想を得ているのでしょうか。

 

小山田 医薬品メーカーや医療機器のリース会社に勤務した経験から、医療界の課題や病院の困り事、医師のニーズ、健康保険制度の問題などは把握していました。また、創業以来、「損か得か」「正か邪か」「善か悪か」の3つの判断基準を守ってフェアな事業に努めてきた結果、医療機関や医師から相談を受けるようになりました。そうした声に対して、「何とかお役に立ちたい」との思いが新規事業につながっています。

 

若松 1つ1つのサービスがつながり、今では医療界をトータルサポートする体制が出来上がっています。新しいビジネスが成功する秘訣は何でしょうか。

 

小山田 先を見通すには、情報が重要です。例えば、開業支援においては医師の人柄や経営能力が非常に大事。そのため、技量だけでなく人格を裏付ける情報まで集めており、その結果、サポートをお断りするケースもあります。後になって始末に追われないよう徹底して情報収集し、先を読んで行動する。それは目先の利益を追わないという、事業方針にも通じる姿勢です。

 

若松 業績を超える明確な判断基準があるからこそ、社員は迷わず行動できる。社内においても透明性の高いフェアな経営を実践されています。

 

小山田 会社は社員の人生を預かっています。経営者の考えが分からないと社員は不安ですから、当社はガラス張り経営を心掛けています。例えば、役員賞与は目標を達成し、社員の夏冬の賞与と決算賞与を出した上で実施することが条件。ですが、私の社長時代に役員賞与が出たのはたった3回のみ。第5期から今まで黒字経営を維持していますが、自己資本の充実や社員の福利厚生を優先するため、役員賞与が出るのはまれです。笑い話ですが、社長や会長時代は役員報酬の減額も頻繁にあったため、相談役に就いた際、妻に「これで減額はないわね」と言われましたよ。

 

若松 そこまで徹底できる会社は多くありません。自社を信頼できるから、社員も安心して働くことができる。それが良い仕事につながっているのでしょう。働き方改革と言ってその価値の方が先に語られがちですが、その本質が今回のコロナ禍で問われることになった。本当の働き方、仕事との向き合い方が変わってきました。

 

 

社員が自ら判断して実行できる会社が理想

 

若松 2011年の東日本大震災後間もなく、当時、専務だった私は田辺昇一に呼ばれ、「社長は元気か?」と聞かれました。全国の企業の社長が元気でなければ、復興は果たせないと言いたかったのでしょう。今、私がすべきは日本中の社長を元気にすることだと、目を覚まされました。リーダー次第で会社が変わり、社会が変わります。小山田相談役は、社長とはどのような存在だとお考えですか。

 

小山田 社長の指示ではなく、社員一人一人が考え、イキイキと仕事をしている会社が理想です。社員みんなが同じ魂を持って仕事に取り組むと会社は成長します。社長の役割や理想像よりも、「ミッション」「ビジョン」「バリュー」を共有することの方が重要だと思います。

 

若松 『克己』でも、「経営トップは、社員に、良い社会とは、良い会社とは何かを考えさせる。社員に、会社の明るい将来を、根拠を基に確信させる。」と記されていますね。

 

私はよく「新入社員と話していても、社長と話しているような会社は良い会社」と言っています。それは同じ言葉を使うということではなく、一人一人が理念を理解、咀嚼して発言している会社という意味です。同じ思いや価値観を持っていれば会社は自ずと成長する。非常に共感します。私だけでなく、相談役の考え方に共感される経営者が少なくありません。そうした経営者らが集う「三接塾」があるとお聞きしました。

 

小山田 三接とは、相手に敬意を払い、愛を持って接する「人に親接」、職場における自分の立場や役割を認識し、仕事に真剣に取り組む「仕事に深接」、原因自分論で自分を厳しく律しながら、謙虚な気持ちで行動する「自分に辛接」という考え方。有志の経営者らが集まって定期的に意見交換をしています。

 

若松 これからも「よい医療はよい経営から」の実現に向けた道は続きますが、2020年に上場を廃止(MBO)したことで、より長期的な視点での経営判断が可能になりました。そして、再上場に向けてさらに会社が新しいステージに入るようにも思います。

 

小山田 海外の状況と比較しても日本のヘルスケアビジネスには改善すべき部分が多く残されています。そうした状況を変え、「あるべき医療」の姿へ近づけていかないといけません。そのために総合メディカルグループが「よい医療、よりよい社会」の実現に貢献し、さらなる成長を遂げてほしいと願っています。

 

若松 「組織は戦略に従い、戦略は理念に従い、理念は組織で経営されて成果になる」という、自身が提唱する経営原則の実践者であり、大変共感しました。世界に冠たる日本型メディカル企業の実現に向けて、タナベ経営も引き続きご支援をさせていただきたいと思います。本日はありがとうございました。

 

 

 

総合メディカル 相談役 小山田 浩定(おやまだ ひろさだ)氏
1940年生まれ、宮崎県都城市出身。59年宮崎県立都城泉ヶ丘高校卒。製薬会社勤務などを経て、78年総合メディカル・リースを元同僚らと創業(89年総合メディカルへ社名変更)、専務取締役。90年代表取締役社長。2004年代表取締役会長。2012年から取締役相談役。2017年相談役、2018年総合メディカルホールディングス相談役。

 

(株)タナベ経営 代表取締役社長 若松 孝彦(わかまつ たかひこ)
タナベ経営のトップとしてその使命を追求しながら、経営コンサルタントとして指導してきた会社は、業種を問わず上場企業から中小企業まで約1000社に及ぶ。独自の経営理論で全国のファーストコールカンパニーはもちろん金融機関からも多くの支持を得ている。関西学院大学大学院(経営学修士)修了。1989年タナベ経営入社、2009年より専務取締役コンサルティング統轄本部長、副社長を経て現職。『100年経営』『戦略をつくる力』『甦る経営』(共にダイヤモンド社)ほか著書多数。

 

 

PROFILE

  • 総合メディカル(株)
  • 所在地:福岡県福岡市中央区天神2-14-8 福岡天神センタービル16F
  • 設立:1978年
  • 代表者:代表取締役社長 坂本 賢治
  • 売上高:1647億円(グループ計、2020年3月期)
  • 従業員数:1万3560名(グループ計、2020年10月現在)