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100年経営対談
100年経営対談
成長戦略を実践している経営者、経営理論を展開している有識者など、各界注目の方々とTCG社長・若松が、「100年経営」をテーマに語りつくす対談シリーズです。
100年経営対談 2020.11.30

経営理念を共有し、貢献価値の高い経営を目指す 総合メディカル 相談役 小山田 浩定氏

         
医療機器のリース事業から始まった総合メディカルグループは、今や病院経営コンサルティングや医師転職・開業支援、調剤薬局の運営へと事業を広げ、グループ売上高は1600億円を超える。新型コロナ感染が発生した今だからこそ、経営理念を軸とする経営の要諦を相談役の小山田浩定氏に伺った。
    今こそ、経営理念と向き合い進むべき方向性を合わせる   若松 総合メディカルとは深く、長いお付き合いをさせていただいており、生前、田辺昇一(タナベ経営創業者)からも小山田相談役のお話をよく聞いていました。私自身も福岡(九州本部)でコンサルタントをしていた頃、「世界に通用する日本型ヘルスケアビジネスをつくる」と相談役が当時、社長としてお話されていたことを鮮明に覚えています。   小山田 今でも同じ思いを持っています。ですが、タナベ経営との出会いがなければ今のような成長はなかったと思います。田辺昇一先生には本当に多くのことを教えていただきました。自分1人では20年、30年たっても気付かないような問題を、瞬時に指摘していただけるのですから、本当にありがたいことです。日本の経済界にも多大な貢献をされたと思います。   若松 ありがとうございます。そう言っていただいて田辺昇一も喜んでいると思いますし、今もご支援をさせていただいているタナベ経営としても大変光栄です。   小山田相談役は創業メンバーであり、長期にわたって会社のかじ取りを担ってこられました。相談役が記された『克己』(次頁左下写真)を拝読しましたが、会社経営への思いが凝縮されており、深い共感と感銘を受けました。「経営とは変化に挑戦することである」「経営とは準備である」「自分の敵は、驕奢である」など、田辺昇一から学ばれた言葉も多く掲載されていて本人も喜んでいると思います。   小山田 『克己』には経営方針や私の思いをまとめました。同書を通して、当社の社是や社訓、「わたしたちの誓い」の理解度を高めることが1つの目的です。創業10年目に当たる1988年に、「わたしたちは、よい医療を支え、よりよい社会づくりに貢献します。」という社是と、その使命を果たすために社員が共有すべき価値観を社訓にまとめました。社是・社訓をどれだけ社員が理解し、実践できているかで会社の将来や社風が変わると思います。   若松 田辺昇一は、それを「志」と言っていました。一流の経営者かどうかも「志」で決まると。小山田相談役との出会いもこの理念への共感があったからだと、今なら分かります。彼はよく「人というのは、志や性格に合った人や出来事と出会う」と言っていました。貴社の経営理念には、世界的に広がる社会課題の解決や持続可能な社会の実現といった考え方と重なる部分が多くあります。   小山田 以前からCSR(企業の社会的責任)が叫ばれていましたが、最近は企業を指す「C」を抜いたSRが一般的です。あらゆる組織に透明性やガバナンス、ルールの厳守が求められています。   さらに、近年は自然保護など社会課題の解決に向けた議論が活発化していますが、それらは創業当時からの考え方に通じます。持続可能な社会の実現に向けた取り組みが盛んになるのは非常に良いことだと思います。     創業時の様子や、「社是・社訓」「わたしたちの誓い」に込めた思い、小山田氏の生き方や経営哲学が記された著書『克己』       2000年には東証2部へ上場(左から2人目が小山田氏)     創業から貫くガラス張りの経営   若松 経営理念とビジネスモデルが密接に結び付いており、経営理念が会社の仕組みや事業展開を立体的にデザインされています。開業支援、医業経営コンサルティング、DtoD、そして調剤薬局、医療モールと、理念を中核に事業拡大、展開されています。貴社の原点ですでに、自社のあるべき姿が形成されていたようです。   小山田 そう言っていただけると光栄です。もともと医薬品メーカーに勤務していた私は、さまざまな企業との交渉や与信管理を担当する中、良い会社や良い経営者を見極める目を養うことができました。また、再就職した医療機器のリース会社では、医療機関の経営状況を厳密に審査するノウハウを学びました。   当時、会社は成長し、私も本社営業部長を任されるなどやりがいがありました。ただ、企業体質は不満でした。経営判断の基準が不明瞭で公私混同も見られるなど、企業としての厳格さを欠いていたのです。改善を求めて上司に進言したものの聞き入れられず、最終的には退社して同じ志を持つ元同僚ら7名で起業する道を選びました。   若松 そうした経験が、創業当初から公明正大で透明性の高い経営につながったのですね。田辺昇一は勤めていた会社が倒産するという現実に直面し、「会社を潰さない仕事をしたい、日本はその仕事が必要だ」という思いで創業をしたと聞いていますから、そこも同様ですね。創業の原体験は企業性格と企業成長を形成します。この点は昨今の日本のベンチャー、スタートアップビジネスブームと違うところです。   小山田 加えて、育った環境も影響しています。父方の先祖は、島津家に仕える武家の出身。礼節を重んじており、人のあるべき姿や経営のあるべき姿、高潔さについてよく聞かされました。また、自由の前に責任、権利の前に義務があることを厳しく諭された記憶があります。   一方、母方の祖父はリヤカー引きから事業家になった努力家。家族よりも社員を大事にする人だったと母から聞かされており、自然と社員の人生を大切にする経営哲学が培われたように思います。     ※Doctor to Doctorの略。勤務医、開業医、医療機関の抱える課題を総合的に支援していくシステム             社員に直接語りかけて一人一人の生き方を問う   若松 経験が土台にある貴社の理念には説得力があります。若い世代にも受け継いでいってもらいたいと切に思います。人材や組織に対する考え方をお聞かせください。   小山田 今でも現社長が新入社員研修などで直接語りかけています。同じ会社で働くことは、本当に奇跡的な縁です。一人一人が「かけがえのない」存在であることを理解し、社員が生きている意味やこの世に存在している重みを強く自覚し、志を持って日々を過ごしてほしいと願っています。   また、自分だけでなく、周囲の人や他者を大切に思う気持ちは、医療界に携わる上で欠かせません。世の中には「誰の助けも借りていない」と勘違いしている人もいますが、1人で大人になれた人などいません。ご両親や周囲の人が育ててくれたから成長できたのです。そこを理解すると自分がいかに大切な存在か分かり、命の尊さにも気付きます。それが周囲への感謝や敬う心、譲る心につながっていくと思います。   若松 誰もがかけがえのない存在であり、互いに支え合って生きている。当たり前のことですが、それを忘れると謙虚さを失ってしまいます。感謝と報恩です。   小山田 おっしゃる通りです。私は新入社員に対して上から目線で接したり、見下げたりしたことは一度もありません。年齢や役職は違っても同じ人間として付き合うことが原則です。それが会社の元気の源となり、ミッションの実現につながると信じています。   若松 言葉だけでなく、行動で示しておられる。経営理念を体現する態度や行動が信頼につながります。だからこそ、どう行動し、どう生きるかが問われます。「わたしたちの誓い」はその指針となる存在です。   小山田 実は、経営理念「わたしたちの誓い」は反省から生まれました。社是・社訓を策定した後、当社は2000年に株式上場を果たしましたが、その過程で古くから会社を支えてくれた社員が数名、相次いで退職しました。何が原因だったのかと考えた末、「上場が会社の目標になってしまっていたのではないか」と猛省し、創業からの「価値高い人生を送る」という原点に立ち返るために「わたしたちの誓い」を策定しました。   若松 先の道の見えない暗い夜道だからこそ、灯が必要です。そうでなければ進むべき道を見失います。暗い時代こそ、明るい未来を見せる経営理念が必要なのだと思います。       世界に通じる日本型ヘルスケアビジネスをつくることが私たちの使命     目先の利益だけを追わないフェアな経営を貫く   若松 医療分野の課題を解決する貴社のサービスは、「開発」と言っても良いぐらいです。どこから着想を得ているのでしょうか。   小山田 医薬品メーカーや医療機器のリース会社に勤務した経験から、医療界の課題や病院の困り事、医師のニーズ、健康保険制度の問題などは把握していました。また、創業以来、「損か得か」「正か邪か」「善か悪か」の3つの判断基準を守ってフェアな事業に努めてきた結果、医療機関や医師から相談を受けるようになりました。そうした声に対して、「何とかお役に立ちたい」との思いが新規事業につながっています。   若松 1つ1つのサービスがつながり、今では医療界をトータルサポートする体制が出来上がっています。新しいビジネスが成功する秘訣は何でしょうか。   小山田 先を見通すには、情報が重要です。例えば、開業支援においては医師の人柄や経営能力が非常に大事。そのため、技量だけでなく人格を裏付ける情報まで集めており、その結果、サポートをお断りするケースもあります。後になって始末に追われないよう徹底して情報収集し、先を読んで行動する。それは目先の利益を追わないという、事業方針にも通じる姿勢です。   若松 業績を超える明確な判断基準があるからこそ、社員は迷わず行動できる。社内においても透明性の高いフェアな経営を実践されています。   小山田 会社は社員の人生を預かっています。経営者の考えが分からないと社員は不安ですから、当社はガラス張り経営を心掛けています。例えば、役員賞与は目標を達成し、社員の夏冬の賞与と決算賞与を出した上で実施することが条件。ですが、私の社長時代に役員賞与が出たのはたった3回のみ。第5期から今まで黒字経営を維持していますが、自己資本の充実や社員の福利厚生を優先するため、役員賞与が出るのはまれです。笑い話ですが、社長や会長時代は役員報酬の減額も頻繁にあったため、相談役に就いた際、妻に「これで減額はないわね」と言われましたよ。   若松 そこまで徹底できる会社は多くありません。自社を信頼できるから、社員も安心して働くことができる。それが良い仕事につながっているのでしょう。働き方改革と言ってその価値の方が先に語られがちですが、その本質が今回のコロナ禍で問われることになった。本当の働き方、仕事との向き合い方が変わってきました。     社員が自ら判断して実行できる会社が理想   若松 2011年の東日本大震災後間もなく、当時、専務だった私は田辺昇一に呼ばれ、「社長は元気か?」と聞かれました。全国の企業の社長が元気でなければ、復興は果たせないと言いたかったのでしょう。今、私がすべきは日本中の社長を元気にすることだと、目を覚まされました。リーダー次第で会社が変わり、社会が変わります。小山田相談役は、社長とはどのような存在だとお考えですか。   小山田 社長の指示ではなく、社員一人一人が考え、イキイキと仕事をしている会社が理想です。社員みんなが同じ魂を持って仕事に取り組むと会社は成長します。社長の役割や理想像よりも、「ミッション」「ビジョン」「バリュー」を共有することの方が重要だと思います。   若松 『克己』でも、「経営トップは、社員に、良い社会とは、良い会社とは何かを考えさせる。社員に、会社の明るい将来を、根拠を基に確信させる。」と記されていますね。   私はよく「新入社員と話していても、社長と話しているような会社は良い会社」と言っています。それは同じ言葉を使うということではなく、一人一人が理念を理解、咀嚼して発言している会社という意味です。同じ思いや価値観を持っていれば会社は自ずと成長する。非常に共感します。私だけでなく、相談役の考え方に共感される経営者が少なくありません。そうした経営者らが集う「三接塾」があるとお聞きしました。   小山田 三接とは、相手に敬意を払い、愛を持って接する「人に親接」、職場における自分の立場や役割を認識し、仕事に真剣に取り組む「仕事に深接」、原因自分論で自分を厳しく律しながら、謙虚な気持ちで行動する「自分に辛接」という考え方。有志の経営者らが集まって定期的に意見交換をしています。   若松 これからも「よい医療はよい経営から」の実現に向けた道は続きますが、2020年に上場を廃止(MBO)したことで、より長期的な視点での経営判断が可能になりました。そして、再上場に向けてさらに会社が新しいステージに入るようにも思います。   小山田 海外の状況と比較しても日本のヘルスケアビジネスには改善すべき部分が多く残されています。そうした状況を変え、「あるべき医療」の姿へ近づけていかないといけません。そのために総合メディカルグループが「よい医療、よりよい社会」の実現に貢献し、さらなる成長を遂げてほしいと願っています。   若松 「組織は戦略に従い、戦略は理念に従い、理念は組織で経営されて成果になる」という、自身が提唱する経営原則の実践者であり、大変共感しました。世界に冠たる日本型メディカル企業の実現に向けて、タナベ経営も引き続きご支援をさせていただきたいと思います。本日はありがとうございました。       総合メディカル 相談役 小山田 浩定(おやまだ ひろさだ)氏 1940年生まれ、宮崎県都城市出身。59年宮崎県立都城泉ヶ丘高校卒。製薬会社勤務などを経て、78年総合メディカル・リースを元同僚らと創業(89年総合メディカルへ社名変更)、専務取締役。90年代表取締役社長。2004年代表取締役会長。2012年から取締役相談役。2017年相談役、2018年総合メディカルホールディングス相談役。   (株)タナベ経営 代表取締役社長 若松 孝彦(わかまつ たかひこ) タナベ経営のトップとしてその使命を追求しながら、経営コンサルタントとして指導してきた会社は、業種を問わず上場企業から中小企業まで約1000社に及ぶ。独自の経営理論で全国のファーストコールカンパニーはもちろん金融機関からも多くの支持を得ている。関西学院大学大学院(経営学修士)修了。1989年タナベ経営入社、2009年より専務取締役コンサルティング統轄本部長、副社長を経て現職。『100年経営』『戦略をつくる力』『甦る経営』(共にダイヤモンド社)ほか著書多数。    

PROFILE

  • 総合メディカル(株)
  • 所在地:福岡県福岡市中央区天神2-14-8 福岡天神センタービル16F
  • 設立:1978年
  • 代表者:代表取締役社長 坂本 賢治
  • 売上高:1647億円(グループ計、2020年3月期)
  • 従業員数:1万3560名(グループ計、2020年10月現在)