はじめに
株式会社むさしは、『紀州・白浜温泉むさし』の屋号で1950年に創業した業歴70年を超える老舗の旅館である。古き良き伝統ともてなしの心はそのままに、時代の流れとともに変化し続ける。 「5つ星の宿認定」「日本の温泉 100選」「日本の夕陽 100選の宿」などに認定され、白浜地域でも有数の知名度を誇る。
施設の中で完結する「発地型観光」だった施設が、白浜時間の中心地という新コンセプトで商品、サービスを抜本的に改革。 CXの最大化をキーワードに着地型観光施設への変革を遂げ、劇的な収益性向上を実現した経営改革手法を学ぶ。
まなびのポイント 1:新たな視点と感性でつくられる、新たな観光のカタチ 「発地型観光」から「着地型観光」へ
同社は「旅館自体が持つ魅力だけでなく、周辺環境も魅力の核となる」と考え、2020 年に「白浜時間の中心地」という新たなコンセプトを打ち出した。南紀白浜には白良浜のきれいな海と砂浜、豊かな海の幸・山の幸、自然が生んだ他にない自然風景、アドベンチャーワールドをはじめとした魅力的な施設が存在する。訪れた人々へ白浜の魅力を同社が中心となって提供することで、着地型観光型の経営スタイルに転換した。
「白浜時間の中心地」のコンセプトの下、体験型プログラムとして❶円月島フォトグラファー、❷白良浜 裸足で深呼吸、❸紀州厳選利き酒梅酒サロンなど、和歌山県・南紀白浜地区の魅力を体感できる企画を立案。特に人気の高い円月島フォトグラファーはインスタグラムなどのSNSを活用したアプローチで訴求。知人と共有したくなるプログラムだ。顧客からの評判は非常に高く、プログラムを目当てに来訪する顧客も多い。
個ではなく、地域一体での発信を行うことで着地型観光施設への変革を遂げている同社は、今後関西だけではなく関東の顧客も取り込む高級旅館への進化を目指し、さらなるブランド強化に挑戦している。
まなびのポイント 2:絶え間ない設備投資による滞在魅力の向上
創業当初は2階建ての建屋からスタートしたが、業況の拡大に応じて3階建てへの増築、 5階建ての別館の新築などを行い、規模拡大を図ってきた。現在は単価の低い団体客から一定の単価で集客できる個人客へと変化したニーズに合わせ、当初330あった部屋数を148部屋に削減し、一部屋当たりの空間を広く取る間取りへ変更している。
また、顧客アンケートにより、強みが浴場施設であると再認識したことから、最上階である17階に南紀白浜地区を一望できる展望風呂を設置。他社を圧倒する景観の提供を実現している。現在は1階・2階の大浴場の改装を行うなど、絶え間ない設備投資によってCX(顧客体験価値)の強化を図っている。
自社のクオリティを磨き上げることで滞在魅力を向上させ、客室稼働率と平均客単価を改善。現在の客単価はコロナ前と比較して一人当たり約5,000円UPしており、劇的な収益性向上を実現している。
まなびのポイント 3:社員の活躍と成長を推進する組織づくり
従業員満足度を向上させることが顧客満足度向上に繋がるという考え方のもと、従業員の資格や知識を活用できる観光案内のサービスを導入し社員が活躍できる場をつくっている。
前述の円月島フォトグラファーや白良浜 裸足で深呼吸などの体験型プログラムは「白浜で有意義な時間を感じてもらうためにはどのような魅力・価値を具現化すべきか」をテーマにスタッフが考えたものであり、スタッフの意見を積極的に取り入れている。
また、社長、女将自らが積極的に駐車や清掃などの日常業務を担うことで、社内全体に助け合いの精神を浸透させ、従業員同士の連携やコミュニケーションの向上に繋げている。フロントはフロントだけ、清掃は清掃だけということではなく、社員が様々な業務を担う多能工化をすることで全員経営を実現し、時間や役割の概念を取り払った高生産性を実現している。
写真はむさしホームページより抜粋
https://www.yado-musashi.co.jp/