ビジネスモデル イノベーション研究会では、「イノベーションと成長に向けた戦略的融合」をテーマに、さまざまな分野における秀逸なビジネスモデルを構築し、成功している優良企業を視察訪問する。そのビジネスモデルを構築している経営者・経営幹部の方から直接講義いただくとともに、現地視察を通してビジネスの現場に、経営転換を「体感」する機会を提供している。
今回は、食品輸出事業・テクニカルロジ事業・輸入オフィス家具物流・2024年問題への対応など、多岐にわたる事業変革の実例を通じて、物流業界における真のビジネスモデルイノベーションとは何かを探求した。
開催日時:2026年6月16日(大阪開催)

関空運輸の代表取締役社長の内畑谷氏。内畑谷氏に加え、取締役1名および部長2名にもご登壇いただき、ご講演いただいた
(出所:関空運輸採用サイト)
はじめに
関空運輸は、1991年に大阪府泉佐野市で創業した物流企業である。従業員170名、11拠点13事業を展開し、売上高38億円(直近期)、自己資本比率50%超という強固な財務基盤を誇る。「はこぶ・預かる・つなぐ・つくる・育み合う」の5機能を軸に、運送・倉庫・食品輸出・テクニカルロジなど多角的な事業を展開。2026年1月にはホールディングス体制へ移行し、次世代への永続的発展を見据えた経営基盤を整えた。
講演では、「物流は商流の下請けではなく、物流があるから商流が生まれる」という強い信念の下、物流の力で新たな価値を共創する「超・物流」の概念が示された。食品輸出事業では物流と商流を融合した「物流商社」機能を確立し、テクニカルロジ事業では「運ぶ」から「価値を現場で完成させる」へと物流の定義そのものを変革。ビジネスモデルイノベーションの本質は、顧客の困りごとを起点に、自社の強みを掛け合わせて新たな事業領域を切り開く「誠実な挑戦」にあると学んだ。

視察したりんくう物流センター。 2023年に開設された
(出所:関空運輸ウェブサイト)
「超・物流」の思想——物流の再定義が新事業を生む
関空運輸が掲げる「超・物流」とは、単なる輸送を超え、物流の力で新たな価値を創出する思想である。その象徴であるテクニカルロジ事業は、輸入家具やフィットネス機器の配送・組立・設置・品質管理を一体化し「現場で完成品質を提供する」という新カテゴリーを確立した。
従来、運送や施工など複数の主体に分断されていた業務をワンストップで担うことで、顧客の負担を排除し、リードタイム短縮と責任の明確化を実現した。最終的な使用可能な状態まで責任を持つ姿勢は、物流の概念を再定義している。自社の事業定義を問い直し、付加価値領域を拡張し続ける視点こそが、既存の枠を超えたイノベーションの本質である。

配送のみを担っていた従来の物流機能を見直し、配送に加えて組立・設置までを担い、「完成」までを一貫してサポートしている
(出所:講義資料より)
顧客の困りごとを起点に、強みを掛け合わせて新市場を創る
食品輸出事業は、関西空港の航空会社から「帰り便の貨物不足」を相談されたことを機に誕生した。空港至近の立地を生かして輸出入卸売免許を取得し、全国の魅力的な生鮮食品や調理器具を発掘・提案している。特筆すべきは、梱包や手続きに加え、代理輸出者として海外バイヤーとの決済代行まで担う「物流商社」機能を構築した点だ。これにより国内生産者は、国内販売と同様の感覚で海外取引が可能となった。
現在、世界20カ国以上へ輸出し、売り上げ8億円規模へと成長している。物流ノウハウを核に商流や金融機能を組み合わせ、はんざつな手続きという課題を解決して新市場を創出した。本業に固執しない柔軟な姿勢こそが、同社の変革の源泉といえる。

パレット化により、店舗の中継拠点化や積込時間の削減、積載量が向上した。この取り組みは、荷主企業との「共働」によって実現したものである
(出所:講義資料より)
「為に」から「共に」へ——荷主との共働がイノベーションを生む
2024年問題への対応では、コンプライアンス遵守とコスト抑制という相反する課題に対し、荷主企業と「共働」することで解決策を見いだした。時間外労働規制の強化により、法令を守れば輸送能力が不足しコストが上昇するというジレンマが生じたが、この打開策として中継輸送へ切り替えるとともに、全108店舗への納品をパレット化することで手積み・手降ろしを廃止し、作業時間を大幅に削減した。さらに集約納品を実現した結果、ドライバーの拘束時間を19.5時間から12.75時間へと短縮しながら、積載率も88.7%へと向上させた。「お客様のために」尽くすのではなく、「お客様と共に」課題を解決するプロセスそのものがイノベーションであるという考え方は、物流業に限らず、あらゆる業種に通じる学びである。