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研究リポート
ビジネスモデルイノベーション研究会
秀逸なビジネスモデルを持つさまざまな企業の現場を「体感」する機会を提供しております。ノーボーダー時代に持続的成長を実現するためのヒントを学びます。
研究リポート 2026.07.08

技術を核とした多角化と有機的連携による成長戦略 新潟麦酒

第2回の趣旨
ビジネスモデル イノベーション研究会では、「イノベーションと成長に向けた戦略的融合」をテーマに、さまざまな分野における秀逸なビジネスモデルを構築し、成功している優良企業を視察訪問する。そのビジネスモデルを構築している経営者・経営幹部の方から直接講義いただくとともに、現地視察を通してビジネスの現場に、経営転換を「体感」する機会を提供している。
第2回では、新潟開催の視察・講義を通じて、グローバルニッチトップ戦略、両利きの経営、そして技術を核とした有機的な事業連携の在り方を学んだ。新潟麦酒・宇佐美氏の講義と工場視察では世界から選ばれ続ける唯一無二のアルコール飲料を生み出してきた製品に対する自信と、それを裏付ける技術力の高さを学んだ。

開催日時:2026年4月21日(新潟開催)



はじめに

全国15位となる約207万人の人口を抱え、日本海側最大の都市圏を有する新潟県。コメの収穫量全国1位に加え、原油・天然ガス生産量やスキー観光客数全国1位など、農業・エネルギー・観光といったさまざまな分野で数多くのナンバーワン・オンリーワンが共存する肥沃な複合型経済県である。

 

新潟麦酒は、代表である宇佐美健氏が1997年に設立した酒類製造企業。国内で初めて伝統的な「瓶内発酵/瓶内熟成」製法での酒造免許を取得した本格地ビール界のパイオニアである。創業以来、200種以上のビールを手掛けるOEM対応力を持ちながら、現在ではウイスキー事業や畜産事業など、各事業が有機的に連携するモデルで国内外に製品を供給し、持続的な成⾧を続けている。

 

新潟麦酒株式会社 代表取締役社長 宇佐美 健 氏

新潟麦酒株式会社 代表取締役社長 宇佐美 健 氏






品質起点の技術革新と多角化で世界から選ばれる商品へ

ビール製造における要諦はいかに衛生管理を徹底し、風味を害する雑菌の混入を抑えるか、ということと宇佐美氏は言う。新潟麦酒ではFSSCという食品安全管理の国際規格認証を受けており、二重、三重の衛生対策がされた環境で製造される製品が強みだ。従来であれば常温で3カ月程度しか日持ちしないビールが2年以上も日持ちすることから、県外はもちろん、遠く離れた海外への輸送にも効果を発揮し、低温コンテナを使うことなくアメリカや東南アジア、ヨーロッパを中心に輸出されている。

 

新潟麦酒ではビールに加え、ウイスキーやシードル、ジン、リキュールも製造する。特にウイスキーは海外での売れ行きが好調で、アメリカ最大の蒸留酒コンテストでは金賞を受賞。世界からの注目が集まっている。地方の中小メーカーでありながら国際空港の免税店にも製品が置かれ、新潟から世界に羽ばたくアルコール飲料ブランドとして成長している。



製造工程は徹底的に衛生管理されており、品質の高いアルコール飲料が製造されている

製造工程は徹底的に衛生管理されており、品質の高いアルコール飲料が製造されている



顧客の要望を叶える好奇心が開発の原動力

新潟麦酒における開発の起点は好奇心。「面白い」「難しそう」と感じさせる製品開発が宇佐美氏の好奇心を掻き立て、新たなチャレンジにつながっている。そうして生み出された製品も、自身の納得ができなければ世に出回ることはない。

 

海外からも注目を浴びる新潟麦酒であるが、目立ったプロモーションは実施していない。現在は営業職社員も存在しない。それなのになぜ200種類を超えるビールを手掛けているのか。それは新潟麦酒のこだわりに魅力を感じたクライアントからの熱烈なオファーに応え続けてきたからである。さまざまな味のリクエストに対して最適解を導き、それが口コミとなって拡散される。地ビールからウイスキーなど、他のジャンルに拡大してきたことも同様の理由だ。「いつも他力本願で、狙って海外進出をした製品はない」と宇佐美氏は謙遜しながら話すが、プロモーションをせずとも注目され、支持され続ける製品開発が新潟麦酒のコアコンピタンスとなっている。

 

工場内には国内のみならず、海外に出荷されるOEM製品が所狭しと並ぶ

工場内には国内のみならず、海外に出荷されるOEM製品が所狭しと並ぶ



資源循環と研究連携による価値創出

新潟麦酒のチャレンジは酒類製造にとどまらず、異なる分野へと進化を遂げている。

 

1つは畜産事業。ビールやウイスキーの製造では毎日1、2トンもの麦を消費するため、それらの麦芽残渣や酵母残渣、廃液など、大量の産業廃棄物が発生する。これらの廃棄物を減らし、かつ資源が循環するようにと考え出したのが畜産であった。本社工場敷地内にはおよそ30頭の牛が放牧され、毎日排出される残渣を餌として消費している。これにより工場で排出される廃棄物はわずか45リットルのゴミ袋2つ分ほどと、クリーンな経営を実現しつつ、畜産事業としてマネタイズに成功している。

 

もう1つ注目すべきはトリュフ事業だ。「面白そうだから」(宇佐美氏)という理由でスタートした事業であるが、ビギナーズラックで白トリュフの液体培養に成功したという。現在では新潟県内の大学と連携し、機能性製品の研究開発が進められている。医薬品としての研究も進められており「遅かれ早かれ世界中に拡がると思う」と、宇佐美氏は自信をのぞかせる。

 

「正しいことをしていれば運は付いてくる」というのが宇佐美氏の経営哲学。失敗を恐れず「まずはやってみよう」というマインドが新潟麦酒の価値創出につながっている。

 

本社工場敷地内には牛や羊が放牧されている

本社工場敷地内には牛や羊が放牧されている