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研究リポート
PR/広報研究会
クロスメディア時代を生き抜くために欠かせない「PR/広報」の本質的価値と、顧客体験価値向上に成功している企業の事例を通して、最適なコミュニケーション手法を研究します。
第3回の趣旨
広報戦略においては、広報活動を単発の情報発信ではなく、「企業価値を高める経営機能」として捉え、再設計する視点が重要である。PR/広報研究会では、その企業価値向上に向けた広報戦略の成功事例として福岡県の企業2社から話を伺った。

1社目の株式会社丸信は、シールやラベルの印刷・包装資材の製造を手掛ける企業である。地方に立地するBtoB企業という、広報では不利な条件下で成果を上げている。2社目の株式会社大賀薬局は、ドラッグストア・調剤薬局・化粧品専門店を展開する企業。同社は“ヒーロー”を活用した広報活動を展開し、全国の注目を集めている。それぞれ2社から具体的な取り組みについて講演をいただいた。

開催日時:2026年6月15日(福岡開催)


株式会社丸信 マーケティング部 ブランドコミュニケーショングループ 代表取締役社長 平木 洋二 氏(写真:左)総務課 課長代理 田中 敏彦 氏(写真:右)

株式会社丸信
マーケティング部 ブランドコミュニケーショングループ
代表取締役社長 平木 洋二 氏 (写真:左)
総務課 課長代理 田中 敏彦 氏 (写真:右)



はじめに

株式会社丸信(福岡県久留米市)は、包装資材の販売やシール・ラベル・パッケージの印刷加工などを手掛けるBtoB企業である。同社は2019年、平木洋二社長が広報の重要性を提唱して広報機能を社内に立ち上げた。

 

BtoB企業の広報活動はBtoC企業に比べてターゲットが限定的であり、情報発信の内容も専門的で話題性を作りにくい上に、費用対効果の測定が難しい。さらに、首都圏のような情報発信力を持たない地方都市に立地する企業の場合は、全国に向けて自社や商品・サービスの魅力を効果的に伝えることが難しい。

 

BtoB事業で地方圏に立地する同社は、広報活動において「表に出す話題が少ない」と捉えていたが、世界ラベルコンテストでの最高位(「Best of the Best」)受賞、技能五輪日本代表といった出来事を機に社内で眠っていた価値が可視化され、話題の少なさ自体が思い込みであったと同社の田中敏彦氏(総務課・課長代理)は言う。

 

丸信本社・山川工場の外観と、エントランスにある制作実績のディスプレイ(出所:写真左は丸信講演資料、写真右はタナベコンサルティングが撮影)

丸信本社・山川工場の外観と、エントランスにある制作実績のディスプレイ
(出所:写真左は丸信講演資料、写真右はタナベコンサルティングが撮影)






広報機能は経営の起点である

同社は広報立ち上げ期の壁として、「広報とは何かが分からない」「発信するネタがない」「協力者がいない」「自社技術や製品を映せない」という4つを挙げた。これは地方のBtoB企業に共通する初期症状であり、広報不在ではなく「広報の定義不在」が本質的な課題である。

 

同社はまず、会社を知ること、広報を学ぶこと、社内理解を浸透させること、メディアへ情報提供することから着手した。つまり発信技術より先に、社内で何を価値として語るかを整えたのである。

 

この順序が重要だ。広報は露出獲得の手段ではなく経営の起点となる。自社の経営資源が持つ価値と社会の関心事を結び直し、継続的に伝わる形へ再編集する機能だといえる。オウンドメディアもメディアリレーションも、この土台があって初めて強固になる。

 

広報立ち上げ期から、平木社長へのインタビューによる同社の歴史を社内報で発信し続けている(出所:丸信講演資料)

広報立ち上げ期から、平木社長へのインタビューによる同社の歴史を社内報で発信し続けている
(出所:丸信講演資料)



オウンドメディアは発信の母艦となる

同社は、SNS(note、X、Instagram)や人材採用向けのオウンドメディアを運営するなど、情報発信の接点を複線化している。BtoB企業は商品・サービス単体の話題づくりが難しいだけに、会社の思想や社員の取り組みを継続的に発信・蓄積できる場が欠かせない。

 

中でもオウンドメディアについては、情報を載せることそのものに価値を置いていない。日々の活動を記事化し、社内外から参照できる一次情報に変換することで、報道機関からの取材時の説明コストを下げ、採用や営業でも再利用が可能な資産に変える点にある。

 

同社にとってオウンドメディアはPRの基幹メディアであり、いわば情報を発信する母艦である。SNSへの単発の投稿ではなく、企業の保有価値を継続的に編集・蓄積する媒体の設計こそが、広報の要諦である。

 

同社が運営するのオウンドメディアの一覧。発信する「癖」をつくることがBtoB広報の心得だという(出所:丸信講演資料)

同社が運営するのオウンドメディアの一覧。発信する「癖」をつくることがBtoB広報の心得だという
(出所:丸信講演資料)



取材対応が関係資本を育てる

同社によると、広報活動においてはプレスリリースはすぐに作ること、メディアの取材依頼は断らないこと、取材後に必ずお礼をすることが大事だという。BtoB企業の広報では露出件数以上に、メディアから相談される関係性を築けるかどうかが問われる。

 

同社は事前ヒアリング、情報発信、取材対応、取材後フォローまでを一連の流れとして捉えている。また、業界紙や地方経済誌、行政との情報共有、取材可能な社員や顧客の確保にも取り組んでいる。

 

マスメディアとの良好な関係を構築する「メディアリレーション」は、単なる属人的な人脈ではなく、取材するメディアへの協力姿勢の積み上げだということである。広報活動を強固にするのは、露出量の確保よりも、継続的にメディアから頼られる関係資本の形成なのである。

 

取材協力者として社内でタレント人材の発掘を行っており、メディアとの関係性構築に寄与している(出所:丸信講演資料)

取材協力者として社内でタレント人材の発掘を行っており、メディアとの関係性構築に寄与している
(出所:丸信講演資料)