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研究リポート
PR/広報研究会
クロスメディア時代を生き抜くために欠かせない「PR/広報」の本質的価値と、顧客体験価値向上に成功している企業の事例を通して、最適なコミュニケーション手法を研究します。
研究リポート 2026.05.21

自己理解とブランド価値向上による老舗専門店の変革 粧苑すきや

第2回の趣旨
タナベコンサルティングのPR/広報研究会では、経営に「インパクト」を生み出すPR戦略~企業のブランディング戦略に沿ったPR戦略を策定し、企業価値向上にむけた「経営機能」としてPR活動を推進する~をテーマに、その実現を成功事例から学ぶ。
今回の講義の前半は、地域でのブランド力強化やDX推進など、独自の集客・ブランディングPR戦略に注力する、あいホームの「『過去』と『今』に立脚した地域工務店のリブランディング・PR戦略」、後半は日本を代表するコスメセレクトショップ、粧苑すきやの「メタ認知思考~一段上から客観的に捉える能力~」について解説いただいた。

開催日時:2026年4月24日(仙台開催)



はじめに

1945年創業の株式会社粧苑すきや(仙台市青葉区)は、仙台を中心に大型化粧品専門店を展開する老舗コスメセレクトショップである。今回の講義では、同社・取締役営業部長の由佐憲靖氏より、デジタルの未整備、社内の世代間ギャップ、新規ブランド開拓の難しさといった課題に対して、どのように向き合い、企業価値を高めたかについて講演いただいた。

 

由佐氏が一貫して重視しているのは「メタ認知」である。自社や自身の強みと弱み、取引先や顧客、テナントビル側の評価を俯瞰ふかんし、感情ではなく構造を理解して行動することが同社の変革の起点となっている。

  同社がS-PAL(エスパル)仙台本館2Fで展開するコスメ売り場 「Perfumerie Sukiya INTERNATIONAL」(2024年5月25日オープン)

同社がS-PAL(エスパル)仙台本館2Fで展開するコスメ売り場
「Perfumerie Sukiya INTERNATIONAL」(2024年5月25日オープン)






メタ認知による自己理解が「変革の出発点」に

由佐氏は自身について、「業界経験・会社員経験がない」「興味のあることしか深掘りできない」といった弱点を認識する一方で、「常に機嫌よく人と接する」「徹底的に調べる」「芸術的視点でブランドを見る」などの自身の強みも把握していた。

 

この自己理解により、得意分野のコミュニケーション力や情報収集能力を武器にし、苦手領域は人に任せるか仕組みで補うという判断が可能になった。

 

同時に、社長、従業員、既存ブランド、新規ブランド、顧客、テナントビルといった関係者が、それぞれ何を重視しているのかを整理し、相手ごとに異なるアプローチを取った点が特徴である。

 

SNSを社内外の信頼獲得に活用

由佐氏の入社当時、社内はEメールやSNSが十分に活用されておらず、顧客との接点は店頭・電話・封書が中心だった。同氏は会社の理解を得られない中、XやInstagramの運用を自ら始め、商品の撮影、投稿、分析、改善を継続した。

 

その結果、SNS経由で商品完売や来店増加などの成果が表れるようになり、1年でフォロワー数が1.3万人を突破。社内では「デジタルでも成果が出る」という理解が進み、社長や従業員からの信頼も高まった。

 

重要なのは、SNSを単なる流行の施策としてではなく、顧客接点の拡張や若年層との関係づくり、さらに社内のデジタル理解促進と県外での知名度向上を同時に実現する手段として位置付けた点である。

  由佐氏が自身の腕まで使ってバズらせたSNSの投稿写真。 同氏の草の根的なSNS戦略が完売や来店増加へつながった

由佐氏が自身の腕まで使ってバズらせたSNSの投稿写真。
同氏の草の根的なSNS戦略が完売や来店増加へつながった



ブランド誘致は熱意とともに「論理」で進める

同社は、国内メーカー中心の専門店から、外資系ラグジュアリーブランドも扱う店舗へと進化した。由佐氏は、ブランド誘致を「パズル」のように捉え、各ブランドの格、流通戦略、隣接ブランドとの相性、百貨店での配置、海外での展開状況まで徹底的に調査した。

 

また誘致交渉においては、単に「売れそうだから扱いたい」と伝えるのではなく、自社の立地、顧客基盤、内装投資、既存ブランドの実績などから、相手ブランドへどう貢献できるかを論理的に提示した。このように、ブランドに貢献するための情報収集(学習)をいとわない同氏の姿勢は一貫しており、それが取引の拡大につながっている。

 

その結果、10年間で外資系高級ブランドを含む20以上のブランド契約を実現し、店舗面積も拡大。全社の売り上げは10年前に比べ約1.8倍となり、業界内での同社の評価も大きく上昇したのである。

  これから売れる可能性のあるブランドを扱っているブース。 メーカーとタッグを組んでブランド育成を図っている

これから売れる可能性のあるブランドを扱っているブース。
メーカーとタッグを組んでブランド育成を図っている

PROFILE
著者画像
由佐 憲靖 氏
Noriyasu Yusa

株式会社粧苑すきや 
取締役営業部長