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研究リポート
物流経営研究会
”物流は世の中を支えている”にもかかわらず、他業種と比較して長時間労働、低賃金です。第7期は高収益ビジネスモデル、人財確保・デジタル化への取組を全6社と参加企業から学びます。
研究リポート 2026.10.20

CLO主導で開く物流経営改革 ロジスティード

第1回の趣旨
物流経営研究会は、物流現場に眠る人的資産・構造資産・関係資産を仕組み化し、属人的な強みを利益に結びつく「価値創造ストーリー」へと転換することを重視している。
第1回はロジスティードの大澤健氏を講師に招き、講義テーマ「CLO時代の到来」を通じて、物流を現場改善の延長ではなく経営マターとして捉え直す視点を学んだ。「CLO主導で物流を経営の武器へ転換する」という考察の観点を軸に、ネットワーク・庫内オペレーション・システム基盤という3領域における意思決定のあり方を考察することを今回の狙いとした。

開催日時:2026年9月10日(東京開催)



はじめに

物流業界では、輸送力不足や人手不足、物流コストの上昇、デジタル化の遅れなど、従来の業務改善だけでは解決が難しい課題が顕在化している。さらに、2026年4月からは一定規模以上の荷主企業に物流統括管理者(CLO)の選任が求められ、物流は経営層が向き合うべきテーマとなった。

 

CLOには、物流部門だけでなく、調達・製造・販売を含むサプライチェーン全体を見渡し、全社最適の視点から改革を推進する役割が期待される。本講演では、物流ネットワーク、庫内オペレーション、物流システム基盤という3つの領域を切り口に、物流をコストセンターから経営成果を生み出す基盤へ転換するための考え方と実践方法が示された。






CLOが最初に着手すべきは物流ネットワークの可視化

物流改革を進める際、目の前の輸送費や作業費を削減するだけでは、持続的な成果にはつながらない。どこに拠点を置き、どこに在庫を配置し、どの輸送手段で顧客へ届けるのかという物流ネットワークそのものを、経営戦略に合わせて再設計する必要がある。講演では、デジタルツインを活用し、拠点配置、輸送ルート、在庫水準などをデータで可視化した上で、複数の将来シナリオを比較する手法が紹介された。

 

新工場の建設や事業拡大、M&Aなど、経営環境が変化する局面では、経験や勘だけに頼らず、全体最適の視点から意思決定することが重要である。物流ネットワークは、単なる配送の仕組みではなく、収益性と事業継続性を左右する経営インフラである。

  ロジスティードが提供する「SCDOS」はサプライチェーン・ロジスティクスネットワークのデジタルツインを構築し、さまざまな変化を想定したシミュレーションを実施することができる

ロジスティードが提供する「SCDOS」はサプライチェーン・ロジスティクスネットワークのデジタルツインを構築し、さまざまな変化を想定したシミュレーションを実施することができる
出所:ロジスティードホームページ(https://www.logisteed.com/jp/scdos/)



現場と設備を一体で設計し自動化効果を高める

人手不足への対応として、倉庫の自動化や省人化への関心が高まっている。しかし、設備を導入するだけで生産性が向上するわけではない。入荷から出荷までの業務フロー、作業者の動線、保管方法、物量の波動などを踏まえ、現場の運用と設備を一体で設計することが重要である。

 

講演で紹介されたメディカル物流センターの事例では、レイアウト・運用設計、自動化エンジニアリング、3Dシミュレーションを組み合わせ、稼働前にボトルネックや投資効果を検証していた。シミュレーションでは、人の生産性や設備能力に余裕率を持たせるなど、実運用上の不確実性も考慮する必要がある。自動化の本質は機械を増やすことではなく、属人性を抑え、誰もが安定した品質で業務を行える仕組みをつくることにある。

 

ロジスティード 埼玉北営業所 東日本第二メディカル物流センターに導入されている設備

ロジスティード 埼玉北営業所 東日本第二メディカル物流センターに導入されている設備
出所:大澤氏講演資料



データをつなぎ荷主主導の改善サイクルをつくる

拠点ごとにシステムが分立している状態ではCLOによる全体最適の統制が利かないことが指摘された。そこで重要になるのが、現場データを集め、可視化し、経営判断につなげる物流システム基盤である。講演では、WMSなどからデータを収集し、在庫・輸送・物流KPIを統合的に可視化したうえで、最適な拠点への出荷指示や在庫配置の判断を行うLMS(Logistics Management System)の役割が示された。

 

物流を3PLに委託している場合でも、データと改善の主導権まで外部に委ねる必要はない。CLO組織が自社の物流を統合的に把握し、委託先と共通のデータをもとに対話することで、物流はブラックボックスから経営管理の対象へ変わる。デジタル化の目的はシステム導入ではなく、変化に迅速に対応できる改善サイクルを確立することにある。

 

今後、物流会社は「運ぶ・保管する」という下流の受託にとどまらず、サプライチェーン設計という上流の意思決定に入り込むことが重要なテーマとなる。顧客との日々の接点の中に埋もれている数多くの課題をただ処理して終わるか、型化して改善提案へつなげるかが問われる。価格以外の付加価値を創出していくことが顧客から選ばれ続ける理由となる。

  物流ネットワーク、庫内オペレーション、システム基盤を整えることが物流を経営の武器に転換する鍵となる。

物流ネットワーク、庫内オペレーション、システム基盤を整えることが物流を経営の武器に転換する鍵となる。
出所:大澤氏講演資料

PROFILE
著者画像
大澤 健 氏

ロジスティード
エンジニアリングイノベーション本部
ソリューション開発部 部長補佐