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研究リポート
物流経営研究会
”物流は世の中を支えている”にもかかわらず、他業種と比較して長時間労働、低賃金です。第7期は高収益ビジネスモデル、人財確保・デジタル化への取組を全6社と参加企業から学びます。
研究リポート 2026.07.31

定温物流のパイオニアが描く4つの成長戦略 福岡運輸

第6回の趣旨
タナベコンサルティングの物流経営研究会では、「物流業のビジネスモデル変革に挑む~価格競争からの脱却!ビジネスモデル変革で収益構造をリ・デザインする~」をメインテーマに据えている。現場の「勘」や「頑張り」を再現性のある組織の仕組みへと昇華させ、価格競争を脱し、次代に選ばれ続ける持続可能な高収益モデルの確立を目指し先進事例から学ぶ。
第6回は、福岡運輸の代表取締役社長である富永泰輔氏をお招きし、➀M&A、②倉庫、③DX、④人材確保の観点から描いている成長戦略や取り組み事例についてご講演いただいた。

開催日時:2026年7月2日(福岡開催)



はじめに

1956年に創業した福岡運輸は、1958年、創業者・富永シヅ氏が日本で初めて機械式冷凍車を走らせた定温物流のパイオニアである。同車は「重要科学技術史資料(未来技術遺産)」に登録されており、「社会に必要な仕事をしたい」という創業者精神は今日まで受け継がれている。現在は22拠点(うち17拠点に冷凍冷蔵倉庫を併設)、グループ12社を擁し、売上高は617億円(令和8年3月期)。全国ネットワークによる定温輸送と倉庫事業を軸とした総合物流サービスを展開する。

 

日本国産1号の冷凍輸送車 (出所:富永氏講演資料より 福岡運輸コーポレートサイトより など)

日本国産1号の冷凍輸送車
(出所:富永先生講演資料より 福岡運輸コーポレートサイトより など)






再生案件は手がけない、規定しすぎないM&A

同社はこれまで12社をM&Aによりグループ化し、全国の定温物流ネットワークを拡大してきた。その絶対的な基準は「再生案件は手掛けない」こと。健全な企業を対象とし、親会社のノンコア切り離しや後継者不在、単独では投資余力がないといった相手側の事情に寄り添う形でグループ入りを実現している。譲渡後も元オーナーや非同族社長が続投するケースを認めるなど経営への介入は最小限にとどめ、非上場企業の強みを生かして多様な形態を柔軟に受け入れる。回収期間を短期で区切らない長期視点の投資姿勢が、「失敗した感覚はない」(富永氏)と言い切れるM&Aを支えている。



TC+DCを軸とした全国倉庫ネットワークの構築

倉庫開発では「TC+DCを軸とした倉庫機能の高度化」「全国をカバーする倉庫配置でボトルネックを生まない」「地方エリアは協力会社との連携を重視」の3方針を掲げ、継続的に拠点開発を進めている。2024年に移転・増設した福岡支店(鳥栖市)は、総延床面積1万5000平方メートルとグループ最大規模の冷凍冷蔵倉庫であり、自然冷媒のCO₂冷凍機や屋上全面の太陽光パネルなど環境対応も先進的だ。一方、トラック駐車場とバースの確保により土地の容積を半分程度しか生かせない構造的制約や、投資コストの高騰といった課題も率直に語られ、制約の中で投資を続ける経営判断の重要性を学んだ。

 

福岡支店の冷蔵・冷凍倉庫の視察の様子

福岡支店の冷蔵・冷凍倉庫の視察の様子



中堅社員のワーキンググループがDXを現場に根付かせる

同社はバース予約受付システム(問い合わせ・呼出作業を年間8000時間削減)や、ファックス受注を基幹システムへ取り込むAI受注入力システムなど、現場起点のDXを次々と実現してきた。特筆すべきは「システムを作っただけでは現場に降りていかない」という課題への打ち手である。

 

全国から業務の中核を担う中堅社員を集めてワーキンググループを組成し、自らシステム化テーマを議論・開発させる仕組みを構築。「自分たちが考えた仕組みだから広めたい」という当事者意識が縦横への普及速度を高め、受領書デジタル管理システムなどの成果と、中堅社員の視野拡大という人材育成効果を同時に生んでいる。

 

福岡運輸(株)のDX投資の考え方(出所:コーポレートサイト「DX戦略書」より)

福岡運輸(株)のDX投資の考え方(出所:コーポレートサイト「DX戦略書」より)

PROFILE
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富永 泰輔 氏

福岡運輸株式会社 代表取締役社長