物流経営研究会は、価格競争に陥りやすい収益構造の脆弱性と、顧客依存度の高さという業界共通の課題に向き合い、ビジネスモデルの再設計によって高収益体質へと転換することをテーマに掲げている。路線事業を主軸に置く中堅・中小物流企業にとって、荷量の構造的減少と収益悪化は避けがたい現実であり、事業ポートフォリオの多様化は喫緊の経営課題である。
今回は、沖縄という島嶼県特有の地理的制約と移入依存型経済構造の中で、「言われたものを運ぶ」受動的姿勢から脱却し、集荷から海上輸送・港湾荷役・陸上輸送・倉庫・通関までをグループ内で一貫提供する「トータル物流システム」を構築してきた琉球海運株式会社を訪問。「夢とくらしと文化をはこぶ」というグループビジョンの下、社会インフラの担い手としての覚悟と、荷主のサプライチェーン全体を俯瞰して最適解を提示する「戦略的パートナー」への進化、さらには沖縄経済の活性化に貢献する移出創造の可能性について学んだ。
開催日時:2026年5月28-29日(沖縄開催)
はじめに
琉球海運は1950年の創業以来、沖縄の海上物流を支え続けてきた。2024年度の売上高は280億円、従業員251名(陸上職85名・海上職166名)。7隻のRORO定期船を運航し、東京・大阪・博多・鹿児島・宮古・石垣を結ぶ航路網を持つ。 「夢とくらしと文化をはこぶ」をグループビジョンに掲げ、「お客さまを大切にする企業」「地域社会に愛される企業」「社員が生きがいを感じる企業」の3つを経営の柱に据えている。主な事業は港湾オペレーション・荷役、陸上輸送、倉庫・流通加工、通関・フォワーディングの4領域にわたり、集荷から配送までをグループ内で一貫提供する「トータル物流システム」を全航路で構築している。

RKKグループの経営ビジョン(出所:琉球海運コーポレートサイトより)
歴史が証明する海運の本質——琉球王国から近世日本、そして現代へ
琉球王国は15世紀から19世紀にかけて、中国・日本・東南アジアを結ぶ「中継貿易」によって繁栄した海洋国家であった。近世日本においても沿海航路が「周縁と中枢をつなぐ物流インフラの主幹線」として機能し、経済・文化・社会を支える基盤そのものであった。
この歴史的文脈は、今日の琉球海運が担う役割と本質的に重なる。グループ戦略室は、戦後から続く沖縄の外部依存型経済構造を踏まえ、物流事業者の役割を「コストセンター」から「基盤産業(社会を支える存在)」へと再定義することを社内に訴えた。自社の社会的意義を経営の起点に据えることこそが、価格競争からの脱却への第一歩である。

RKKグループの海陸複合一貫輸送サービス(出所:琉球海運コーポレートサイトより)
トータル物流システムが生む「囲い込み」の競争優位
琉球海運は早い段階から「総合物流業」を標榜し、港湾荷役・陸上輸送・倉庫・通関の4領域をグループ内で一貫提供する体制を構築してきた。本土から沖縄への輸送は多重下請け構造になりやすく、荷主にとって「複雑さの交通整理」が大きな負担となっていた。同社はこの課題を解決する存在として、集荷から配送までをワンストップで担う体制を整えた。
グループ戦略室は「地場企業であることが強み。囲い込みがうまくいった」と述べた。沖縄で考え、利益を投資に回す経営姿勢が荷主との長期的な信頼関係を築いてきた。一気通貫モデルは価格競争に陥らない収益構造をつくり出している。

那覇港総合物流センターの外観
沖縄物流が映し出す、本土物流の未来図
沖縄の物流は「片荷構造」「多重下請け」「小規模・低収益」という三重苦を抱えるが、これは本土の物流業界が今まさに直面しつつある課題の先行モデルとも言える。復荷率15〜16%台という非効率、事業者あたり営業収入が全国平均を大幅に下回る収益構造は、価格競争に終始する限り本土でも避けられない未来である。
沖縄の物流事業者が生き残るために求められてきた「社会インフラとしての覚悟」「トータル物流による差別化」「荷主との戦略的パートナーシップ」は、そのまま本土の物流事業者が目指すべき方向性と重なる。極限の事業環境で磨かれた琉球海運の戦略は、本土の物流経営者にとって示唆に富む羅針盤であろう。

那覇港総合物流センター内の様子
琉球海運 グループ戦略室 アドバイザー