タナベコンサルティングの住まいと暮らしビジネス成長戦略研究会では、全国の各エリア、地域で成長・成功している「住まいと暮らしドメイン」の優良企業を視察訪問している。
第12期のテーマは、「共創で暮らしに新たな価値を提供する~地域に必要とされる住まいと暮らし企業を目指して~」とし、第6回は北陸・金沢にて、クラスコ・ホールディングス、加賀建設をゲスト講師に招き、その事業戦略について研究を行った。
クラスコ・ホールディングスの代表取締役社長である小村典弘氏からは、オーナー提案や、人材育成、人事制度の整備、業務マニュアルのデジタル化など全業務の仕組み化を実装し、収益性と組織安定化を実現した取り組みについて講演いただいた。属人依存から脱却した経営モデルへの転換が住まいと暮らし企業の成長道筋を示し、共創と仕組み化が成長エンジンになることを実感する講演となった。
開催日時:2026年7月16日(金沢開催)
グループ会社の共創と仕組み化による成長モデル
石川県を拠点に地域No.1の賃貸仲介企業へと成長したクラスコ・ホールディングスは、単なる規模拡大ではなく、グループ会社との共創と仕組み化を軸に、質的な成長を追求してきた企業である。賃貸仲介で築いた顧客基盤をリノベーション提案や建物管理へとつなげ、オーナーとの長期的な関係を事業の核に据えてきた。
こうした成長の根幹にあるのが、同社のミッション「DO IDEA(アイデアを、カタチにする。)」である。現状に満足せず、アイデアを実装し続ける企業文化が、グループ全体の推進力となっている。オーナー提案の仕組み化、人材育成・評価制度の整備、業務マニュアルのデジタル化、そして全業務へのAI実装を通じて、収益性と組織の安定化を同時に実現した同社の実践は、住まいと暮らし企業が次のステージへ進むための具体的な道筋を示している。

出所:クラスコ・ホールディングスホームページ
共創を起点にした事業領域の拡張
賃貸仲介を主軸とする企業が成長の壁を超えるためには、単独での事業拡大には限界がある。グループ会社や異業種との連携を通じて、顧客接点を広げ、提供価値を重層化することが求められる。
クラスコ・ホールディングスは、グループ会社との共創を経営の中核に据え、賃貸仲介で得た顧客情報とオーナーとの信頼関係をリノベーション提案や建物管理へとつなげ、顧客の暮らしに関わる課題を総合的に解決する体制を構築している。各グループ会社が強みを持ち寄ることで、一社では生み出せない価値を顧客に届けている。
この取り組みの本質は、グループ内の資源を「足し算」ではなく「掛け算」で活用している点にある。住まいと暮らし企業においても、自社単独の発想を超え、共創によって顧客への提供価値を再設計する視点が、持続的成長の鍵を握る。

講演の様子
全業務の仕組み化が収益体質を変える
現場の品質や生産性が担当者の経験値に左右される企業では、スケールアップに伴いサービスのばらつきや再クレームが増加しやすい。これは収益性を圧迫するだけでなく、オーナーや入居者からの信頼を損なうリスクにもつながる。
同社は、外壁診断のデジタル化、建物点検・修繕履歴の一元管理、オーナー提案の仕組み化、Web業務マニュアルの整備など、現場業務を支える仕組みを体系的に構築してきた。
個人の経験値に依存せず、誰もが一定水準のサービスを提供できる基盤を整えている。仕組み化とは、「優秀な個人の再現」ではなく、「組織全体の底上げを実現する経営インフラ」である。
収益性の向上と組織の安定化を同時に実現した背景には、部分的な改善ではなく全業務を仕組みとして設計し直した点がある。住まいと暮らし企業が持続的に成長するためには、現場の属人依存を断ち切り、仕組みそのものを競争力の源泉として位置付ける経営視点が不可欠である。

クラスコ・ホールディングス本社1階に設置されたディスプレイ
攻めと守りのAI活用が競争優位を生む
業務効率化を目的としたAI導入は「守り」の活用にとどまりがちである。しかし、それだけでは競合との差別化は難しく、やがて同質化の罠に陥る。真の競争優位は、AIを顧客提案や価値創造にも活用する「攻め」の実装によってはじめて生まれる。前述の通り、構築した仕組みの基盤があってこそ、AIはその力を最大限に発揮する増幅装置となる。
同社は全業務へのAI実装を推進し、現場の生産性向上にとどまらず、オーナーへの提案精度の向上や顧客体験の改善にもAIを活用している。蓄積データをAIが分析し、最適化された提案を迅速に行うことで、顧客との関係を「取引」から「信頼」へと昇華させている。守りの効率化と攻めの価値創造を両輪で回す設計が、同社の差別化の核心にある。
住まいと暮らし企業においても、AIを「省力化ツール」として捉えるだけでは不十分である。業務効率化は生き残りの条件に過ぎず、企業成長の条件にはなり得ない。顧客接点の質を高め、提案力を強化する「攻め」の活用まで視野に入れることが、次世代の競争優位を築く鍵となる。AIを経営戦略の中枢に据える発想への転換が今まさに求められている。

不動産オーナー向け展示スペース「満室ギャラリー」
株式会社クラスコ・ホールディングス 代表取締役社長