「住まいと暮らしビジネス成長戦略研究会」では、全国で成長を続ける「住まいと暮らしドメイン」の優良企業への視察を行っている。
第12期のテーマは、「共創で『暮らし』に新たな価値を提供する~地域に必要とされる住まいと暮らし企業を目指して~」である。
第2回となる今回は、マエダハウジング、叡啓大学・早田教授、大英産業をゲスト講師に迎え、その事業戦略について研究を行った。
研究会1日目、参加者は、地域に根差す企業として産業界・学術機関・自治体などと連携し、知識やリソースを共有する「共創」を通じて、新たな技術やサービス、価値を創出するモデルについて学んだ。
開催日時:2025年11月11日(広島開催)
叡啓大学と共創プロジェクト
叡啓大学は2021年4月に開学した広島県の公立大学である。公立という特性を生かし、地域企業や行政との連携を柔軟に進められる点に特徴がある。
地方創生を担う拠点として、企業・行政・地域社会と協働しながら社会課題の解決に挑戦する「共創」を軸とした教育モデルを採用している。この教育モデルは、SDGsを意識したリベラルアーツ科目と、企業や自治体と連携する課題解決型学習(PBL)を融合させ、学生が教育の一環として実践的に課題解決に取り組む仕組みを構築している。
本講演では、産学官連携・研究推進センター長ソーシャルシステムデザイン学部教授の早田吉伸氏にご登壇いただき、大学が担う「パブリックなハブ」としての機能と役割について解説いただいた。同大学は、研究推進センターを通じて、企業の経営課題に対する具体的な解決策を共創する仕組みを整えている。
研究会講演の様子
連携の具体的な方法
叡啓大学との連携は、企業のニーズに応じて柔軟に設計される。代表的な仕組みが、「価値探索プロジェクト」と「学生実証プロジェクト」である。
価値探索プロジェクトでは、企業の経営層や事業責任者が大学教員とともにワークショップを行い、新しい価値を見い出すためのアイデアを創出する。学生実証プロジェクトでは、大学でプロジェクト推進手法を学んだ学生が企業と協働し、フィールドワークやプロトタイプ検証を通じてアイデアの実現性を検証する。
これらのプロジェクトは、企業にとって有用な知見やデータを得る機会となり、単なる座学にとどまらず、現場での実践を伴う点が特徴である。
さらに、大学は産学官連携・研究推進センターを通じて、企業の課題に応じたプロジェクト設計を支援する。これにより、企業は自社の課題解決に集中しながら、大学の専門知見と実践力を活用できる。
共創プログラムの構造
出所:叡啓大学講演資料
連携が生み出す新たな価値
企業が叡啓大学と連携することで得られる価値は多岐にわたる。
1つ目は、大学の研究知見や教育プログラムを活用することで、事業課題に対する科学的かつ体系的なアプローチが可能となる。2つ目は、学生との協働により、若い世代の視点や柔軟な発想を取り入れ、従来のビジネスモデルに新たな価値を付加できる。3つ目は、プロジェクトを通じて得られるデータや検証結果は、企業の意思決定において重要なエビデンスとなる。
さらに、大学との連携は、企業にとって地域社会との関係性を強化し、CSV(Creating Shared Value)戦略を推進する好機となる。加えて、大学が持つ広範なネットワークは、行政や他企業との協働を促進し、イノベーションエコシステムの形成を後押しする。
これにより、企業は新たな市場やパートナーシップを獲得し、持続可能な成長を実現できるのである。
叡啓大学による新しい価値創造の共創ポイント
出所:叡啓大学講演資料
今後の展望と企業への期待
叡啓大学は、地域と世界をつなぐ「共創型大学」として、企業との連携をさらに深化させる方針である。
今後は、産学官連携の枠組みを拡充し、企業の経営課題に対する高度なソリューションを提供する体制を強化する。また、国際ネットワークを活用したプロジェクトを増やし、企業のグローバルな視点での事業展開の支援を目指す。
企業に求められるのは、単なる協力者としてではなく、共創のパートナーとして積極的に関与する姿勢である。大学は、企業が直面する課題を共有し、解決策を共に創り出す場を提供する。
こうした取り組みは、企業にとって新たな市場機会を開拓し、持続可能な成長を実現するための重要なステップとなる。叡啓大学は、広島から世界へと発信するイノベーション拠点として、企業との協働による価値創造を加速させていく。
共創のための6つのステークホルダー
出所:叡啓大学講演資料
叡啓大学 産学官連携・研究推進センター長 ソーシャルシステムデザイン学部 教授