「住まいと暮らしビジネス成長戦略研究会」では、全国で成長を続ける「住まいと暮らしドメイン」の優良企業への視察を行っている。
第12期のテーマは、「共創で『暮らし』に新たな価値を提供する~地域に必要とされる住まいと暮らし企業を目指して~」である。
第2回となる今回は、マエダハウジング、叡啓大学・早田教授、大英産業をゲスト講師に迎え、その事業戦略について研究を行った。
参加者は、本研究会において、地域に根差す企業として各産業界・学術機関・自治体等と連携し、知識やリソースを共有する「共創」を通じて、新たな技術やサービス、価値を創出するモデルを学んだ。
開催日時:2025年11月12日(九州開催)
はじめに
大英産業は、1968年に北九州市八幡西区で創業した。不動産事業から始まり、現在は九州・山口エリアに住宅・不動産を中心とした事業を展開している。人財、土地情報収集力、商品企画力を武器に、ここ十数年で売上高が倍増するなど、急成長を遂げている総合不動産会社である。
「元気な街、心豊かな暮らし」という経営理念を掲げ、子どもからシニアまで多世代が共生する、笑顔とにぎわいあふれる「元気な街づくり」を目指して、時代の変化に対応した「すまい事業」を推進している。
代表取締役社長の一ノ瀬謙二氏は、原価高騰の波を乗り超え、金利のある世界への回帰や住宅市場の変化の兆しが見られる中、「地域愛着経営」という経営方針を打ち出した。
本講演では、地域から愛され、必要とされる会社となるための「地域共創ワンストップモデル」について一ノ瀬氏にご講演いただいた。
理念体系と10年ビジョン
出所:大英産業講演資料
地域愛着経営は理念・戦略・行動が一気通貫した「地域共創経営モデル」
同社では、経営理念を最上位に置いた理念体系を構築し、中期経営計画までの結び付きを可視化している。経営理念の実現と社員一人一人の行動までが一気通貫となり、それぞれの思いが地域のステークホルダーとの共感を生み出している。
その中核となるのが「地域愛着経営」だ。①地域の課題を解決すること、②地域の魅力を創造すること、③地域のコミュニティと共存すること、この3つの方針を掲げている。
地域が求める「価値」と大英産業が提供する「価値」を合わせ、共に地域の価値を高めることが地域の「魅力創造」につながる。
そのために、地域のハブとなりコミュニティーをつなげることで、雇用や仕事、納税など、地産地消で地域を支える企業を目指している。理念・戦略・行動が一気通貫となることで、地域のステークホルダーからの共感が生まれプラットフォームが構築される。
それを通じて地域の価値と魅力を共創することが、大英産業の事業の持続性を高める「地域共創経営モデル」となっている。
地域愛着経営の3つの方針
出所:大英産業講演資料
広がり、重なる顧客
ビジネスパートナーを軸に、顧客層も拡大している。これまでは分譲事業を軸に事業展開していたが、「住まい」と「まち」の視点から賃貸戸建、相続相談、宿泊事業、街づくりへと事業領域を広げたことで、シニア層、富裕層、企業、地域、行政へと顧客ターゲットを拡張することが可能となった。そこで同社が得た気付きは、これまでのステークホルダーが顧客へと変化している点である。
用地特性を生かした分譲アパート事業では、既存事業で取引のあったビジネスパートナーからの反響も多く、新たな顧客層として顕在化した。また、サステナビリティ事業では、街づくりで共創関係にあった行政も顧客となっている。大英産業をよく知るビジネスパートナーからの支持を得られたことは、自社の強みをより強固にする自信にもつながっている。
ステークホルダーとの約束によるつながりと顧客の拡張
出所:大英産業講演資料
共感ストーリーの発信
サステナビリティ事業が手掛ける「KiTAQ WOOD」は、北九州市産材の利用拡大を目的とした木材利用促進プロジェクトである。地産地消の促進やカーボンニュートラルを身近に体感できる場づくりを通じて共感を生み、丁寧な対話により品質への納得感を醸成し、実際の行動に移すことで目的を実現する。こうした共感ストーリーを発信し、地域の企業や行政、教育機関などを巻き込んでいる。
このストーリー構造は社内においても同様であると考え、従業員に対して働きやすい環境づくりの場を提供している。
DX推進による事業支援として「情報戦略課」を設立し、社内全体の情報を「Kintone」に集約できるようシステム設計を行った。社員が主体的、かつ、スピーディーにシステム設計できる環境を整えることで、自らの働き方の変革に共感し、その価値を実感して行動する社員を増やし、10年ビジョンの実現可能性を高めている。
「KiTAQ WOOD」の共感ストーリー
出所:大英産業講演資料
DX推進による情報集約
出所:大英産業講演資料
大英産業 代表取締役社長