はじめに
医療法人伯鳳会グループは、保健医療複合体として兵庫県を中心に大阪府、東京都などに10件の病院を展開するほか、60あまりの介護施設や訪問医療ステーションを運営している。コロナ禍では、能動的に重点医療機関・協力医療機関を設置、2022年には災害時も医療が提供できる、世界初のCTなどの検査機関を搭載するトラックを導入するなど、医療業界をけん引している。
「平等医療、平等介護」を理念に掲げ、コロナ禍の病院経営において増収・増益を達成し、医療関連雑誌にも取り上げられるほど注目を集める同法人の理事長である古城資久氏に、今後の医療業界を生き抜くヒントを聞いた。
まなびのポイント 1:病院における「経営指針書」の在り方
病院において経営指針書を作る目的の1つとして、「職員の経営者的感覚を醸成し、『病院経営』を自分事とする」ことが挙げられる。経営指針書をもとに、経理情報を全職員に公開することで、病院発展の戦略・戦術を全職員とともに考えることができる。
また、職員のなりたい姿、病院の在るべき姿を描き、理念に落とし込む。医療人として職業倫理を大切にしながら、患者・自院・社会の幸せを考えることが経営の成功(売り上げの達成)につながる。その結果として、個人の成果・成長に還元されるという仕組みになっている。
兵庫県赤穂市の赤穂中央病院。1960年から赤穂地域の医療拠点として地域医療を支えている
まなびのポイント 2:経営指針書の策定に向けたポイント
伯鳳会グループでは、理事長の立てた今年度重点目標、新規事業計画を基に各責任者がSWOT分析※を行う。各責任者が自院の社会での立ち位置や分析を行うことで、当事者意識を持つことができるというメリットがある。 経営者は、各責任者が提出した数値計画を俯瞰し、前述の年度方針と齟齬がないかを確認している。また、併せて戦略の方向性も確認しているため、各責任者、従業員の業績に対する意識が高い。 ※自社の社内リソースと自社を取り巻く外部要因を照らし合わせて分析し、今後挑戦できる市場領域や解決すべき事業課題を見つける手法
各拠点の経営指南書。エリアごとに経営方針書と明確な定量目標を定めて発信している
まなびのポイント 3:業績と処遇の連動性
同法人の人事制度について、全職員がリアルタイムで現在の賞与基準額の金額を確認することができる。年度初めに賞与配分の計算式を発信し、職員は業績を当てはめることで金額が分かるという仕組みだ。業績・目標をダッシュボードで見える化することで、社員のモチベーションを上げる仕組みもつくっている。 また、「医療職・介護職は真面目で優しく、倫理感のある人が多い」というイメージがある中、個人の成果主義を前面的に押し出すのではなく、集団成果主義的な要素を制度面に取り入れることで、「病院の業績と処遇の連動性」を実現している。
埼玉県日高市の旭ヶ丘病院。職員の特性を加味した独自の人事制度を設計している