1940年6月に珈琲卸売りとして創業し、2025年で創業85年を迎えるイノダコーヒ。戦前から続く老舗企業として、京都の喫茶文化の一役を担っている。また、「イノダコーヒ流おもてなし」の源流は、1947年のコーヒーショップ開業にあると言われている。
同社は現在、京都に6店舗、東京、神奈川、広島に各1店舗ずつ展開し、ホテルのような格式の高さを誇りながらも、心やすらぐ空間を提供している。
同社の代表であり、旧加賀藩・前田利家から続く19代目当主である前田利宜氏に、京都の老舗喫茶店経営の伝統と革新のバランスについてご講演いただいた。
イノダコーヒ本店
イノダコーヒのこだわり
イノダコーヒの「コーヒ」という表記は、珈琲を「コーヒ」と呼んでいたことに由来する。同社の代表的ブレンド「アラビアの真珠」は、深いコクと香りが特長で、コーヒー好きから高い評価を得ている。また、創業以来、お客さまに最高の状態でコーヒーを楽しんでもらうために、コーヒーにはミルクと砂糖を入れた状態で提供しているという。
店舗については、外観や内装が異なり、好みの店舗を見つけることも楽しみの1つである。京都にある本店は、クラシックなヨーロッパ風の建物で、店内に大きな時計を設置せず、BGMも流していない。食器を片付ける音など、自然の音の中でお客さまのくつろぎを提供している。
また、喫茶店では珍しくスタッフの多くが正社員である。タブレット注文が増えている中、スタッフの接客態度、細部にまでこだわったサービススタイルは、イノダコーヒが創業以来こだわってきた原点である。
イノダコーヒのこだわり
一つ一つ課題を解決
前田利宜氏は上智大学を卒業後、三菱商事でキャリアを積み、2020年7月にイノダコーヒの代表に就任。就任直後は多くの課題を感じながらも、一つ一つ課題を解決してきた。
まず最初に行ったことは、役職ではなく「前田さん」と社員に呼んでもらうことで、オープンなコミュニケーション環境をつくった。次に、会社の収益を社員の家計に例えて丁寧に説明し、経営を自分事として考えるきっかけをつくった。最後に、社員との定期的なコミュニケーションの場として食事会を開き、親睦を深めている。
イノダコーヒの理念体系
パーパス経営の実践と今後の展望
パーパス経営とは、自社ならではの「価値」を見い出し、社員にパーパス(目的)を共有し、自らが何者であるか定義することから始まる。
前田氏は、同社の標語である「京都の朝は、イノダコーヒの香りから」を実践する企業の存在意義として、企業理念「お客様に感謝し、仲間を大切にし、笑顔とおいしさの追求そしてくつろぎの空間を創造する会社です。」を策定した。
新たなくつろぎ空間を提供する店舗として、「New Classical」というコンセプトのもと、本店近くの三条支店を2024年10月29日にリニューアルオープンする。今後も同社は、イノダコーヒならではの「くつろぎ空間の創造」に取り組んでいく。
2024年10月29日には三条支店をリニューアルオープン