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研究リポート
食品ビジネス成長戦略研究会
食品業界の構造変化が進む中、先進企業の事例や現場視察・対話を通じて、選ばれ続ける事業づくりとビジネスモデル革新を学びます。
研究リポート 2026.06.17

ヒット商品の育て方と持続的成長のつくり方 有楽製菓

第2回の趣旨
食品価値創造研究会は「E・A・T」※をコンセプトに、先進事例の研究を進めている。第2回は『老舗企業に学ぶ「守るべきもの」と「変えるべきもの」』をテーマに4つのセッションを進めた。
2日目の有楽製菓株式会社様では「ヒット商品の育て方と持続的成長のつくり方」についてご講演いただき、ヒット商品の裏にある試行錯誤、マーケティングの本質、組織文化を変える難しさと必要性を、会社の歴史と実例を交えて学んだ。 ※「E・A・T」= Engineering(技術進化)・Association(新結合)・Transformation(改革・転換) 開催日時:2026年4月10日(東京開催)



はじめに

有楽製菓株式会社は1955年に東京で創業し、当初はウエハースを製造する会社としてスタートした。ソフトクリームに添えるウエハース需要に着目したことが原点である。その後はPB・OEM商品を数多く手がけるメーカーとして成長し、長らく売上高の多くを他社ブランド向け商品が占めていた。

 

一方で、2代目社長の「せっかく菓子屋をしているので、自社ブランドを持ちたい」という強い思いから、さまざまな挑戦を重ね、その中で誕生したのがブラックサンダーである。

 

現在は本社機能を東京に置きながら、創業者ゆかりの地であり主力生産拠点でもある愛知県豊橋市との結びつきが非常に強く、地域との共生を大切にしている。工場見学施設の整備、地元イベントへの協賛、スポーツチーム支援、地域企業とのコラボなどを通じて、地域に支えられ、地域を支える企業を目指している点も大きな特徴である。

  有楽製菓株式会社の主力商品であるブラックサンダー

有楽製菓の主力商品であるブラックサンダー






価値ある商品は、すぐに売れなくても諦めずに磨き続ける

ブラックサンダーは、発売当初から順調だったわけではない。むしろ、「子ども向けにしては価格が高く、ネーミングやデザインがわかりにくい」などの理由から一度は販売終了になったという、厳しいスタートを切った商品であった。

 

それでも、とある営業担当者の熱意で復活し、長い間“売れない商品”として生き残り続けた。ここから分かるのは、本質的な価値を持つ商品は、すぐに結果が出なくても簡単に諦めてはいけないということである。

 

同社はその後も商品を改良し続け、近年では「変わらずおいしい」と感じてもらうために、中身も時代に合わせて進化させてきた。ヒットとは、一度の当たりではなく、本質的な価値を見極め、継続する力の上に生まれるという学びが示されている。

 

社内でただ一人、ブラックサンダーの製造継続を主張した社員

社内でただ一人、ブラックサンダーの製造継続を主張した社員



売れるかどうかは、「誰に・どう届けるか」で変わる

ブラックサンダーの転機は、商品そのものを大きく変えたことだけではなく、価値を感じる相手に届いたことである。当初は子ども向けの駄菓子として売っていたが、大学生協では「手頃な価格で満足感が高いお菓子」として支持されていた。つまり、同じ商品でも、相手が変わることで価値の見え方が変わったのである。

 

さらに、コンビニでの販売や話題性のあるプロモーション、有名人による紹介、SNSでの拡散、他社とのコラボによって、商品との接点は一気に増えた。講演ではこれを「実際に買える状態をつくること」と、「頭の中で思い出してもらえる状態をつくること」の両面から説明している。

 

つまり学ぶべきは、良い商品を作るだけでは不十分で、価値を感じる人に、買える場所と想起される機会の両方を設計することが必要である、という点である。

 

ブラックサンダーのプロモーションの一例(駅広告の様子)

ブラックサンダーのプロモーションの一例(駅広告の様子)



成長を持続させるには、顧客視点と組織づくりが不可欠

ブラックサンダーが一時のブームで終わらず、企業成長につながった背景には、マーケティングと組織改革があった。同社はブーム後に「これからは自力で成長しなければならない」と考え、マーケティング部門を立ち上げた。そして、「なぜブラックサンダーは愛されるのか」を徹底的に分析した。その中で大切にした考え方が、「作り手の思い込みではなく本当の顧客視点で考えること」である。

 

さらに組織面でも、トップダウン一辺倒からの脱却、言語化による理念共有、小さな成功の積み重ねによる信頼形成、共通の判断基準づくり、チームが自走できる仕組み化を進めていった。企業の成長は、ヒット商品だけでは続かない。顧客理解を深め、それを再現できる組織に変えていくことで、初めて持続的な競争力になるということである。

 

ユーラク社員の心得(有楽製菓株式会社HPより)

ユーラク社員の心得(有楽製菓株式会社HPより)

PROFILE
著者画像
河合 辰信 氏

有楽製菓株式会社 代表取締役社長