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研究リポート
設備工事研究会
設備工事業界の経営課題を乗り越え、生産性の向上策と付加価値の確保に
成功している企業を研究し、社内改革に挑みます。
研究リポート 2026.04.16

北陸電気工事に学ぶ「人がすべて」を仕組みに落とす経営 ~若手人材育成から事業競争力を生み出す~ 北陸電気工事

第4回の趣旨
タナベコンサルティングの設備工事研究会は、「生産性と企業価値の向上に向けた社内改革に挑む」をテーマに掲げる業界研究のプラットフォームである。価格競争の激化や後継者不足、働き方改革など、設備工事業界が直面するさまざまな課題に対し、先進事例を学ぶことにより知見を深めつつ、会員同士の議論も生かし、改善に向けた方向性と自社が打つべき施策について検討を行う。
第4回は、ユニークな採用・育成の仕組みにより、人材難という業界課題に正面から挑み続けてきた企業を紹介。同社が取り組む人材戦略の全体像について、常務取締役の早瀬 庄一郎氏と、企画部部長の古村峰雄氏にご講演いただいた。

開催日時:2026年3月12日(富山開催)


常務取締役 早瀬 庄一郎氏と企画部部長 古村 峰雄氏

北陸電気工事株式会社
常務取締役 早瀬 庄一郎氏(右)
企画部部長 古村 峰雄氏(左)


はじめに

同社は、1944年創立の総合設備企業であり、配電・送変電・内線・空調管・通信・土木までを一貫して担う施工体制を有している。同社が掲げるスローガン「『まるごとあんしん 北陸電工』~発電所からコンセントまで~」は、単なるキャッチコピーではなく、発電から送配電、建物設備、保守に至るまでを自社グループで完結できる事業構造そのものを表している。

 

こうした事業領域の広さは、多様な工事を横断的に統合する「一括受注力」という強みに直結している。電気・空調・通信・管工事などを分断せずに請け負うことができるため、発注者にとっては調整負荷が低く、同社にとっては工程・品質・安全を一体で最適化できる点が大きな競争優位となっている。

 

近年は連結売上高が過去最高水準を更新し、利益面でも安定した成長を継続している。中期経営計画「Action Plan 2027」では、売上高1000億円企業への飛躍を見据えた成長の土台づくりを掲げ、人財投資・DX・技術開発・安全・品質を連動させた経営を推進。

 

また、技術開発においては現場を起点とし、生産性の最大化と働き方改革をテーマに、さまざまな新技術の開発の実績を重ねている。再生可能エネルギー分野や海外事業へも積極的に取り組み、地域密着型企業でありながら環境変化に力強く適応し続けている。

  北陸電気工事テレビCM

北陸電気工事テレビCM
出所:北陸電気工事ホームページ






採用・育成・定着を貫く人財戦略

同社では、若手人財を即戦力として消費するのではなく、「数年後に大きな戦力へと成長するダイヤモンドの原石」として捉えている。

 

この思想は採用段階から一貫しており、地域の子ども向け職業体験や高校生向け技能イベントなどを通じて、将来の担い手との長期的な関係づくりを行っている。また、技能五輪大会では世界基準を目指し、2024年の国際大会では銅メダルを獲得している。「育てることを前提に人を迎える」という確固たるスタンスが、結果として施工体制の安定につながっている。

 

育成においては、能力開発センターを核とした体系的な教育制度が特徴である。新入社員研修から部門別の長期初期教育、階層別研修、さらには「2年1サイクル研修」へと連なる設計により、若手社員が数年かけて着実に力を伸ばす道筋が明確に描かれている。「5年後には大きな戦力になる」という前提で人財と向き合い、短期的な成果を求めるのではなく、中長期的な「投資」として育成を捉える姿勢が根付いている。

 

定着面では、健康経営や女性活躍推進、エンゲージメント向上施策などを通じて、社員が安心して成長し続けられる環境を整備している。人財を磨き続けることで企業価値を高めるという思想が、組織全体に深く共有されているのだ。

 

技術開発センターの取り組み

技術開発センターの取り組み
出所:北陸電気工事中期経営計画「Action Plan 2027」



目標連鎖と実践重視の人財育成

同社が「外部環境に適応し続ける企業」である背景には、理念・ビジョンから個人目標までを一貫して連鎖させる仕組みがある。経営理念やビジョンが抽象論で終わらず、部門目標、チーム目標、個人目標へと具体化され、それぞれが相互に接続された構造を持っている。

 

この目標体系は、決して設定して終わりではない。PDCAサイクルを回しながら振り返りと修正を繰り返し、組織と個人の成長を同時に促す運用になっている。「成長ノート」などの取り組みも、本人が自らの変化を言語化し、次の行動につなげるための効果的なツールとして機能している。

 

また、人財教育においては「インプットだけでは成果は出ない」という認識を明確に持っている。知識や研修を与えるだけでは意味がなく、現場で実践できて初めて成果につながり、成果が出て初めて本人が自身の成長を実感できる。この実感こそが次の挑戦意欲を喚起し、好循環を生み出すという考え方だ。

 

そのため、教育内容は必ず現場業務と結び付けられ、「実践、振り返り、改善」という流れの中で定着が図られている。育成を“日常業務の一部”として組み込んでいる点にこそ、同社の人財育成の本質がある。

 

研究会の講演風景

研究会の講演風景



人財基盤が事業競争力を生む。一括受注力と持続的成長

同社の人財戦略は、足元の施工体制を安定させるための施策にとどまらず、事業の競争力そのものを支える強固な基盤として機能している。配電・送変電・内線・空調管・通信・土木といった幅広い工事領域に対応できるのは、単に事業を多角化しているからではない。複数の領域を理解し、連携できる人財を計画的に育成してきたからだ。

 

その強みが顕著に表れているのが、建物工事を中心とした「一括受注力」だ。電気・空調・通信といった工事を分断せずに一体で請け負うことで、発注者にとっては調整負荷やリスクが低減される。一方で同社にとっても、工程・品質・安全を統合的に最適化できるという大きなメリットがある。

 

中期経営計画で描かれる成長シナリオも、まさにこうした人財基盤を前提としたものだ。人財を育て、組織力を高め、その成果を再び人財へ投資する。この好循環を回すことで、同社は環境変化に左右されにくい持続的な成長力を確保している。

 

「人」を起点に事業競争力を構築する同社の姿勢は、「外部環境適応企業」を目指す企業にとって重要な示唆を与える。

  中期経営計画の位置付け

中期経営計画の位置付け
出所:北陸電気工事中期経営計画「Action Plan 2027」