•  
設備工事研究会のメインビジュアル
研究リポート
設備工事研究会
設備工事業界の経営課題を乗り越え、生産性の向上策と付加価値の確保に
成功している企業を研究し、社内改革に挑みます。
研究リポート 2025.11.27

現場生産性の向上を目指したサプライチェーン強化 ~独自の物流・加工ネットワーク戦略~ 新日本空調

第2回の趣旨
タナベコンサルティングの設備工事研究会は、「生産性と企業価値の向上に向けた社内改革に挑む」をテーマに掲げる業界研究のプラットフォームである。
価格競争の激化や後継者不足、働き方改革など、設備工事業界が直面するさまざまな課題に対し、先進事例を学ぶことにより知見を深めつつ、会員同士の議論を生かし、改善に向けた方向性と自社が打つべき施策について探求する。
第2回は、建設ソリューション研究会との合同開催で、人手不足が叫ばれる中、いかに現場生産性を向上していくか、多数の空調設備の設計・施工を手掛ける新日本空調の事例について、都市施設事業部スマートテクニカルセンターの畔地哲男氏にご講演いただいた。
開催日時:2025年11月11日(関東開催)


はじめに

新日本空調は、1969年に設立された、空調、冷暖房、換気、給排水、衛生、電気、消防、計装など、建物のあらゆる環境設備を総合的に設計・施工する東証プライム市場上場企業である。

 

前身である東洋キヤリア工業として1930年に創業して以来、同社は一貫して時代の変化に対応してきた。高温多湿な日本へ「空調」という概念を導入した時代、高度経済成長期を支えた時代、クリーンルームに代表される品質管理の強化が求められた時代、そして、東日本大震災を契機とした省エネと防災の時代。

 

それぞれの局面において、同社は独自の高い技術力で「快適・最適な空気」という価値を提供し、社会のニーズに応え続けてきたのである。

 

研究会講演の様子



企業理念に根差した「2030年にありたい姿」の策定と、実現のための5つの基本戦略

同社の企業理念「Fill your tomorrow 社会と自然の調和を育み、未来へ向けた思いを満たす。」には、目には見えないがなくてはならない「快適な空気」を「当たり前」に提供することで社会に貢献するという思いが込められている。

 

そして、それを実現するためのマイルストーンとして、2030年にありたい姿「SNK Vision2030」を掲げるとともに、それを実現するための5つの基本戦略を掲げている。

 

今回のテーマは、「収益力向上戦略」の一環だ。現場での負荷軽減と生産性の向上は、企業としての収益性を高めるのはもちろんであるが、生産年齢人口が減少する中、現場施工遂行力を持続し、「快適な空気」を「当たり前」に供給するための前提となるものである。同社は、常に数千規模で工事を進行しており、さまざまな機器・機材が搬入・組み立て・設置されているため、現場での作業負担は低減しなければならない。そこで同社が導入したのが、物流・加工ネットワークシステム「SNK-SOLNet」である。

 

新日本空調が掲げる2030年にありたい姿「SNK Vision2030」
出所:新日本空調ホームページ

持続可能なネットワークシステム「SNK-SOLNet」の構築

2024年4月に首都圏を中心に運用を開始したのが、「SNK-SOLNet(SNK Sustainable Offsite & Logistics Smart Network System)」である。

 

従来の工事では、各協力会社が個別に資機材を現場へ搬入し、そこで加工・組み立てを行うのが主流であった。しかし、その方式では運搬や廃材処分といった付帯作業が増加するという問題があった。

 

SNK-SOLNetでは、まずは資機材をロジスティクスセンターに集約し、センター内で仕分け・加工・組み立てを済ませてから現場に搬入する。これにより、建設プロセス全体としての生産性が向上する。また、最適な物流ルートを柔軟に組むことで、ドライバー不足問題に対応するとともに、GHG(温室効果ガス)排出量の削減にもつながっている。

 

「SNK-SOLNet」の役割
出所:新日本空調ホームページ

「モジュール化」が持続可能な社会の実現に貢献する

研究会では実際にロジスティクスセンターを訪問し、多数の機材がいつでも出荷し、すぐ取り付けられる状態になっていることを目の当たりにした。

 

例えば、空調室内機本体に周辺機器や副資材などを組み付け、それらをコンテナで集約することで、積み込み・運搬が容易になるとともに、梱包材の削減にもつながる。また別の例では、空調室内機を現場・工区ごとに仕分けし、あらかじめ資機材を準備しておくことで、現場に搬入後すぐに作業へ取りかかることができる。

 

これら全体の動きの司令塔となるのが、スマートテクニカルセンターである。総勢約50名が社外・社内の各部署と連携しながら、サプライチェーン全体の生産性向上にまい進している。ぜひ、同社の取り組みを持続可能な社会の実現に向けた1つのヒントとしていただきたい。

 

ロジスティクスセンターでの仕分け・加工・組み立ての様子 出所:新日本空調ホームページ

PROFILE
著者画像
畔地 哲男 氏

新日本空調株式会社 都市施設事業部 スマートテクニカルセンター