建設ソリューション成長戦略研究会では、秀逸なビジネスモデル・経営ノウハウを持つさまざまな企業の現場を「体感」する機会と、経営改革・業務革新のヒントを提供する。また昨今、建設業界では高収益ビジネス構造、働き方改革の実現による生産性向上など、さまざまな課題に対して、問題の本質理解と課題へのアプローチ方法について学ぶ。
第6回1日目は株式会社EARTHBRAINより、建設現場の生産性向上や施工管理高度化に向けたDX・AIの活用や技術についての考え方をご講演いただいた。
2日目は白岩工業株式会社より、「採用と教育で日本一のサブコン」を掲げた採用・人財戦略についてご講演いただいた。
先進企業2社の事例を通じて、建設業の持続的成長に向けたDX推進と人財戦略のあり方を考える機会とした。
開催日時:2026年7月28日(東京開催)
はじめに
EARTHBRAINは、小松製作所・NTTドコモビジネス・ソニーセミコンダクタソリューションズ・野村総合研究所の4社が、それぞれの建設機械・現場DXノウハウ、通信・AI・クラウド基盤、センシング・画像解析技術、ビジネス変革支援を持ち寄り、2021年7月に価値共創により設立された企業である。前身のLANDLOGが2017年に手がけたICT建機の知見を土台に、現在は測量から施工、検査、維持管理までを一気通貫でデジタル化する「Smart Construction」を展開している。
人手不足・高齢化・生産性・安全性・DXの遅れという建設業の課題は、個別ではなく相互に連関しているとの認識のもと、現場全体をデータでつなぎ、AIによって判断を支援する仕組みづくりに取り組んでいる。今回は、その具体的な技術と現場実装の考え方について、小山氏よりご紹介いただいた。

EARTHBRAINの沿革を示す図
部分最適から工程全体の連携へ
小山氏は、2013年に導入したICT建機について、刃先位置のセンシングにより施工中の精度は上がったものの、効果を発揮できたのは盛土・切土といった施工の一部分にとどまり、現場全体で見れば生産性はほとんど変わらなかったと振り返った。この経験から、施工前・施工中・施工後・維持管理という4つのフェーズにデータを連携させる「Smart Construction」の発想へ転換したと説明した。
この発想の本質は、個別技術の性能向上ではなく、工程間でデータをつなぐことによって初めて生産性向上と利益最大化が実現するという点にある。建設ソリューション成長戦略研究会が重視するビジネスモデル革新の観点からも、自社の強みを個別工程の改善に閉じず、現場全体のプロセス設計として捉え直す視点が重要であると言える。

「誰でも簡単に」が現場実装の鍵になる
高精度な技術であっても、専門知識や高額な機材、複雑な操作を要する場合、現場への定着は進みにくい。実際にドローン測量は3次元データの取得自体は容易になった一方、点群データの処理には専門知識や高性能なPCが必要で、結局は従来手法の方が早いという判断に至り、普及が進まなかったという経緯があったと小山氏は振り返った。
この課題に対し、同社はデータを軽量化する技術やWebブラウザで完結する仕組みを開発し、専用機材がなくてもその場で点群データを確認できる環境を整えたと説明した。また、iPhoneやiPadだけで3次元データを取得できる「SC Quick3D」を開発し、誰でもその場で簡単に計測・確認できる仕組みを実現している。
この取り組みの意義は、技術力の高さそのものではなく、誰でも・その場で・簡単に使えることが現場への浸透を左右するという点にある。

屋外で実際の商品を体験されている様子
AIは人を代替せず、判断を支える
小山氏は、図面確認や書類作成、安全リスクの洗い出しといった作業はこれまで人が時間をかけて行ってきたものであり、AIが担うのは人の代替ではなく作業の肩代わりであると説明した。人は判断や調整、最終責任を担い、AIは解析や反復作業を担うという役割分担を示し、必要書類をアップロードするだけで工事書類のドラフトを約10分で生成するツールや、現場写真1枚から危険箇所とリスクを提示する安全支援アプリを紹介した。
この取り組みの本質は、人手不足や技術継承難という課題に対し、AIに現場作業の一部を任せることで、少ない人数でも品質を落とさず現場を回せる体制をつくっている点にある。限られた人材をベテランの経験が必要な判断業務に集中させ、若手や省人化された体制でも安全と生産性を維持できる仕組みづくりこそが、経営課題に直結する学びであると言える。

体験会終了後の集合写真
株式会社EARTHBRAIN
シニアマネジャー