東陽電気工事株式会社は、福島県西郷村を拠点に、電気・通信・消防設備工事を手がける地域密着型企業である。創業は昭和8年、設立は昭和40年7月1日。公共施設・学校・文化施設・発電所・変電所などの公共電気工事に加え、オフィス・商業施設・生産施設向けの電気工事、さらには住宅・店舗向けの照明、通信配線、エアコン設置まで幅広く対応している。「地域の暮らしに、光を灯す。」を掲げ、目に見えないところまで丁寧に仕上げる姿勢と、他には真似できない質の高いサービスを強みとしている。
また同社は、地域に根差した事業展開に加え、人材育成にも注力しており、研修棟の整備などを通じて若手技術者の育成と技能向上を支援している。地方の中小電気工事会社として新卒・若手人材の定着をどのように実現してきたのか、その具体的な取り組みについて石川社長より紹介いただく。
開催日時:2026年3月23日(東北開催)
「現場では失敗できない」からこそ、失敗を前提に学べる研修環境を整える
同社では、若手の早期離職の背景に「現場で失敗できない怖さ」と「十分に教えてもらえない教育環境」があると捉えた。実際、現場は工期や品質が厳しく、先輩側にも教育の余裕がないため、若手は失敗を恐れて受け身になりやすい。
そこで同社は、公共工事の閑散期を活用し、安心して失敗しながら学べる研修施設を自社敷地内に整備した。実際の現場を模した設備の中で、見て・触って・試して・やり直す経験を積めるようにしたことで、若手の不安を軽減し、主体的に学ぶ姿勢を引き出している。失敗を責めるのではなく、失敗からのリカバリーまで教える仕組みこそが、人材育成の土台になる。
「育てる前提」の高校新卒採用へと舵を切る
同社は一時期、中途採用や大卒・専門卒採用にも取り組んだものの、応募はあっても定着せず、2015年~2021年にかけては3年以内離職率100%、2019年~2021年にかけては1年以内離職率が100%になるなど、厳しい状況に直面した。
その要因を振り返る中で、経験者や他業界を経た人材よりも、先入観が少なく、基礎から育てやすい高校新卒に注力する方針へ転換した。あわせて、求める人物像を明確にし、説明会や採用資料、体験機会の内容も整理したことで、採用活動が会社全体で一貫して行えるようになった。
さらに、高校生向けの体験会や資格取得支援、小中学生向けの仕事体験まで広げることで、採用を「募集の場」ではなく「業界理解を育てる活動」として再設計している点に大きな特徴がある。

研修施設の様子
自社だけで人を囲い込むのではなく、業界全体の人材育成基盤づくりに貢献する
同社の取り組みは、自社の離職防止や採用強化にとどまらない。電気工事業界では、資格保有者の大量減少や若手不足が大きな課題となっており、1社だけで解決できる問題ではないとの認識がある。そのため同社は、自社の研修施設を同業他社にも開放し、研修プログラムの提供や指導者育成まで行っている。実際に県外企業が研修を受け、自社内に研修環境を整備する動きも生まれている。
また、工業高校での資格取得支援や地域の子ども向け職業体験イベントも継続し、業界への興味喚起と裾野拡大に取り組んでいる。自社の競争力向上だけでなく、地域と業界の未来を見据えて人材育成の仕組みを共有する姿勢は、業界全体の持続可能性に資する実践といえる。
中期ビジョンを説明する石川社長
東陽電気工事株式会社 代表取締役社長