1950年に設計士が創業した株式会社澤村は滋賀県高島市で設計・施工の一貫体制を基本として、オフィスや工場、住宅や店舗、公共施設などを手掛けている。
同社は滋賀という地域社会全体で「ゆたかな働き方・暮らし方ができる社会の実現」に取り組んでいる。建物を建てて終わりではなく「きっかけを創造する」ことを使命として掲げ、利用者がどんな生活をしたいのか、どのように建物を活用していきたいのかを考え、設計・施工のワンストップ体制で工事を提供している。さらに社内外のブランディングに注力することで、人手不足時代においても採用を勝ち抜き、持続的な成長を実現している。
今回の講演では「設計施工における企業ブランディング」と題し、設計起点の事業と同社の原動力であるブランディングに関する取り組みについて学ぶ。
開催日時:2025年9月12日(大阪開催)

原動力はブランディング
「ブランディングとは似合う服を着せること」と澤村社長は言う。伸びた身長に合わせる。パーティーに行く。新しい自分やこれから行く場所に合わせて似合う服に着替えるということだ。部屋着ではない。どんな服を着るかを考えるためにはワクワクするビジョンを持つ必要がある。
そこで、同社では経営方針発表の場を、社員主体で会社の未来を創る場に変えていった。どうすれば、社員が非日常を感じ、心が動くのか。自分事化ができるかを考えている。非日常に加え、スポットライトを「会社から個人」に当てるようにしている。
社員総会※では、輝いた人に表彰状やトロフィーを渡して、ワクワクしてもらう。しかし、このような取り組みも一過性になると効果がない。マンネリ化しないように8名のブランディング部隊中心に企画を考え、アウターブランディングはもちろん、インナーブランディングにも継続的に取り組んでいる。
※9月末が全員でワークショップを行うVISION総会、3月末が社内表彰式
社内表彰式「SAWAMURA AWARD 2025」の様子
共通言語による認識合わせと共感で組織風土を作る
同社はお互いの行動やその人そのものに共感を生むことを大切にしている。そのため月に数回、部署・年代関係なく、社員同士が特定のテーマについて対話する時間を設けている。
2025年9月のワークショップ形式での社員総会(VISION総会)では、「5年後に澤村はどうなりたいか」というテーマで対話した際、とあるチームが「五目炒飯」になりたいという結論を導いた。同社はお客様のためなら、部門を超えて、惜しみなく連携する風土がある。
住宅、土木、建築がライバル視する、営業と施工が対立するということがない。助け合う風土が自社の特長であり、強みであるという共通認識があった。その強みを生かし、自分たちは「混ざりあった時にこそ、おいしくなる最高の五目炒飯になる」という結論であった。
上司から「部門間での連携を強化しなさい」と言われても数日経てば忘れてしまう。しかし、自分たちがワークショップで考えた「五目炒飯」というキーワードは、そのユーモア性から共感とストーリーが生まれ、自分事化した共通言語として、忘れられることはなく、組織文化の醸成に寄与している。
ワークショップ形式での社員総会(VISION総会)では、「5年後に澤村はどうなりたいか」をテーマに対話を行った
設計施工×ブランディングが成果を生み出す
創業者が設計士であったこともあり、同社には設計起点にこだわる創業の精神が根付いている。創業の精神、会社のビジョン、事業上の自社の強みが共通言語で認識されると一人一人の意識も変わっていく。
設計施工一貫方式の優位性が社内で理解されると、自社ノウハウの蓄積も進む。ノウハウが蓄積されると、それを求める顧客が増えるので、価格勝負にならず、設計提案においてノウハウが生かしやすくなり、粗利の高い仕事が増える。専門性を求める顧客の問い合わせも増える。
ノウハウは設計だけではない。建てて終わりではなく、プロセスも重要視する同社は「施主とおもしろい仕事をつくっていく」マインドが醸成されている。建物を建てる際にはワークショップを行い、どんな建物がよいか議論する。
そして、竣工時に施主との議論や検討プロセスを纏めた冊子をプレゼントする。施主も喜び、様々な場面で説明し、広めてくれる。結果として、同社のブランディングにもつながり、仕事も増えていく。
また、採用面においてもブランディングの効果は高い。1dayインターシップには県外からも年間100名以上の学生が参加し、新卒採用は450名がエントリーする人気ぶりだ。
ブランディングの取り組みが、設計施工一貫方式における強みの共通認識を持たせ、共感を生み、組織文化を醸成することで、仕事や人材が集まることにつながっている。
リブランディングしたユニフォーム
オフィスづくり導入ワークショップの様子