はじめに
アイルは、販売・在庫・生産管理システム「アラジンオフィス」や、BtoBのECサイト「アラジンEC」といったシステムの開発・販売・サポートを手掛ける企業である。1996年にアイルキャリアカレッジを設立し、人材育成のための企業研修サービスの提供も開始した、システム開発と人材育成を両輪で手掛ける企業である。
同社は、新人から中堅、管理者まで幅広い階層を対象とした研修を年に300回程度開講しているが、近年は特に次世代リーダー育成に対するニーズが高まっている。
今回は、「DX推進に不可欠な人材育成の3つのコツ」をテーマに、①ビジネス全体の俯瞰、②リーダーシップの発揮、③思考と行動を自律させることの重要性について、アイル・アイルキャリアカレッジ・マネージャー兼チーフトレーナーの多根誠志氏にご講演いただいた。
販売・在庫・生産管理システム「アラジンオフィス」 出所:アイルホームページ
DX人材の確保は採用と育成の両軸で進める
DX人材の確保という観点では、まず即戦力となる中途採用が挙げられる。その採用に当たっては、①ターゲット人材像の明確化、②多様な採用チャネルの確保、③魅力的なDXビジョンの提示、④高度な専門スキルを習得する機会の提供が重要となる。
一方で、大手企業もDX人材の採用には積極的であるため、自社ならではの魅力を発信することも不可欠である。
次に、ITリテラシーの高い新卒者を育成する上では、長期的な視点での関与が重要となる。ポイントは、次の3つだ。
①心理的安全性の確保(相談しやすい関係構築や定期的な1on1の実施) ②計画的な教育(育成ステップシートの作成など) ③複数部署での業務経験(ジョブローテーション)
DX推進メンバーによるビジネス全体の俯瞰
DX推進メンバーの視座が低いと漠然としたアイデアしか生まれず、自部門の利益を優先した部分最適の議論に終始し、結果として全体最適の実現が困難になるといった負の状況に陥りやすい。
この課題を解決し、メンバーの視座を高めるためには、ビジネス全体を俯瞰で見る必要がある。具体的には、MVV(ミッション・ビジョン・バリュー)を浸透させて会社が目指す方向性を明確にし、長期的な投資感覚を養わせることが有効である。
一方で、短期的なコスト感覚も不可欠であり、状況に応じてこれらを使い分ける「視座のコントロール」も重要となる。これについて受講者からは、具体的な施策として「目的意識の醸成」や「現場課題の可視化」が不可欠であるという意見が出された。また、5SやVM(ビジュアルマネジメント)といった手法も有効であり、実際に効果を実感しているという声もあった。このほか、ジョブローテーションや社内インターンシップ制度などを導入し、メンバーが多様な業務に触れる機会を設けている参加企業もあった。
研究会において、チームで議論を行っている様子
「サーバントリーダシップ」の発揮
「私に付いてこい」というトップダウン型のリーダーシップは、DX推進においてはもはや有効ではない。今求められているのは、多くの人々の協力を得ながら成果を上げ、周囲を巻き込んでいく「サーバントリーダーシップ」である。
サーバント(Servant)とは「奉仕者」を意味し、リーダーにはまず「部下の成長に貢献したい」「部下と共にwin-winの成果を出したい」といった奉仕のマインドセットが求められる。
また、DXによる改革の推進には、「ポジティブ・謙虚・自責」という3つの姿勢が重要であり、これが前例のないDXという壁を乗り超える突破口となる。対立する意見を恐れず活発に出し合い、建設的に物事を前進させるためには、心理的安全性の高い環境が不可欠だ。その環境を醸成することもまた、リーダーに求められる重要な役割である。
講師と受講者で議論を行っている様子