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研究リポート
デザイン経営モデル研究会
経営に『デザインの力』を活用して、魅力ある自社らしいブランドづくりを実践している素敵なデザイン経営モデル実践企業の取り組みの本質を視察先講演と体験で学びます。
研究リポート 2026.03.13

「老舗ベンチャー企業」として新規事業を多数展開 大賀薬局/オーガーデン

第3回の趣旨
第4期デザイン経営モデル研究会では、社内の新しい取り組みを頓挫させず、0から1を生み出し、形にし、組織への定着および成長までを描く「デザイン力」のコアスキームを研究している。
第3回1日目には、1902年創業の大賀薬局グループの取り組みに学んだ。ポイントは、①業界の枠を超えた顧客視点での価値創造、②社員の「やりたい」を形にする仕組みの構築、③医療従事者という専門人材を孤立させず、つなぐプラットフォームの設計、である。
エンタメ・動物医療・医療従事者コミュニティーなど、業界常識を打破する新規事業を次々と展開する同社の取り組みから、持続的成長に必要な条件を探る。
開催日時:2026年1月22~23日(九州開催)


大賀薬局 取締役 マーケティング室 室長 薬剤師 大賀 彩益子氏(左) 株式会社オーガーデン 代表取締役 竹重 文貴氏(右) 大賀薬局 取締役 マーケティング室 室長 薬剤師 大賀 彩益子氏(左)
株式会社オーガーデン 代表取締役 竹重 文貴氏(右)

地域密着型マーケティングで認知度向上

大賀薬局は、1902年に福岡県筑紫野市で創業。2025年10月1日付で持ち株会社体制へ移行し(持ち株会社:株式会社オーガホールディングス)、調剤薬局・ドラッグストアを核としながら、動物専門調剤、動物病院、メディカルコミュニティー事業など多角的な事業ポートフォリオを構築している。

 

同社が掲げる2029年に向けたビジョンは「One Health Leading Company」。人の健康・動物の健康・環境の健全性を一体として捉え、地域一体の総合ヘルスケア企業への進化を目指している。

 

2019年10月に、薬剤師ヒーロー「薬剤戦師オーガマン」を誕生させ、エンタメを起点とした地域密着型マーケティングを展開。コロナ禍を経て保育園・幼稚園への訪問活動を本格化させ、5年間で351園・約3万9000人の子どもたちにリーチした。この取り組みにより、同社の認知度は上昇し、処方箋枚数は約120%増加。地域密着で業界常識を覆す取り組みは注目を集め、優秀な人材が集まる企業へと変貌を遂げた。

  オーガマンの取り組みは書籍『ヒーローマーケティング』(幻冬舎、2024年12月)として発刊された。企業と地域社会の結び付きを強め、地域における自社のブランド力と認知度向上を実現した成功事例として注目を集めている 出所:大賀薬局グループ講演資料 オーガマンの取り組みは書籍『ヒーローマーケティング』(幻冬舎、2024年12月)として発刊された。企業と地域社会の結び付きを強め、地域における自社のブランド力と認知度向上を実現した成功事例として注目を集めている
出所:大賀薬局グループ講演資料

業界の常識を打破する新規事業の創出

同社は「薬局はこうあるべき」という固定観念から脱却し、顧客視点での価値創造を追求してきた。同社の歴史は、挑戦と改革の歴史である。祖業である調剤薬局事業は、「医薬分業」、すなわち医療と薬業の現場を分離した事業として、当時の時代背景からすると大きな挑戦だった。

 

以降、九州初となる全自動調剤ロボットの導入や、美容特化型店舗など、顧客体験の高度化を推進してきた。近年では、動物調剤・動物病院事業において、調剤業務負担と薬剤在庫管理の課題解決に向けた取り組みや、飼い主への治療選択肢の増加と適切な治療を提供する仕組みの構築に挑んでいる。

 

さらに、医療従事者向け会員制バー「MEDs(メッズ)」を2025年2月に開設し、医療従事者の憩い・交流の場を提供するコミュニティー事業を開始した。会員数は2200名、スタッフは医療従事者34名で構成され、「医療従事者×○○」という新たな価値創造の起点となっている。同社の新規事業は、既存の薬局事業の枠を超え、地域課題の解決に直結する。

 

※会員数、従業数はいずれも2026年1月時点

  「ずっとこのまちで」をメッセージに、さまざまな事業をホールティングスで展開。地域社会の結び付きを強める事業を推進している 出所:大賀薬局グループ講演資料 「ずっとこのまちで」をメッセージに、さまざまな事業をホールティングスで展開。地域社会の結び付きを強める事業を推進している
出所:大賀薬局グループ講演資料

社員が誇りを持てる組織文化の醸成

同社の組織づくりの根幹は、「この会社で働くと面白そうかどうか」を創ることにある。応募動機は2019年の「家から近い」「給与が良い」から、2025年には「オーガマンと働きたい」「面白そうな会社」「社会貢献したい」へと劇的に変化した。

 

ある社員は娘から誕生日に「お父さんの会社は素敵」という手紙をもらい、別の社員は息子から「お父さんってオーガマンと一緒に働いているの? すげえ」と言われたと、誇らしげに報告したという。

 

同社は「大賀薬局グループで働くことが誇りであり、子どもの憧れとなるような、夢と尊敬を集める企業」を目指すと明言している。さらに、接遇指導・理念浸透・業務効率化を担う「AIオーガマン」を導入し、社員の成長を全力でサポートする仕組みも構築した。

 

社員が自社の取り組みに誇りを持ち、子どもに胸を張って語れる企業文化こそが、優秀な人材を引き付け、持続的成長を支える最大の条件である。

  大賀薬局グループ代表が実際に受け取った娘からの手紙。同社では「大賀薬局グループで働くことが誇り」となるような事業を展開している 出所:大賀薬局グループ講演資料 大賀薬局グループ代表が実際に受け取った娘からの手紙。同社では「大賀薬局グループで働くことが誇り」となるような事業を展開している
出所:大賀薬局グループ講演資料

医療従事者がつながり、新たな価値を生み出す場を創造

医療従事者向け会員制バー「MEDs」は、医療従事者の孤立を防ぎ、連携を強化するプラットフォームとして機能している。竹重氏は「地域一体のヘルスケアを担う以上、医療従事者同士がコミュニケーションを取らないと、医療の質も上げられない」と述べ、医療従事者が集まる場の必要性を強調する。

 

立ち飲みバー形式を採用し、医師300名、看護師350名、薬剤師300名を含む会員2200名が登録。スタッフ34名も全員が医療従事者である。スタッフと同じ業種の顧客が、スタッフとのコミュニケーションを目的に通い、業界ならではの悩みを相談したり、子ども連れで通ってソフトドリンクを楽しむ“常連さん”もいる。

 

「個人が試行錯誤しながら対応せざるを得ない現場が多く、横のつながりによる支えが必要。医療従事者が境界を乗り越えてコミュニケーションを取り続けるための場を作りたい。この試みで得られたヒントを会社にフィードバックし、大賀薬局グループ全体で新たな価値を創り出したい」(竹重氏)

 

このプラットフォームは、人材紹介・転職相談・セカンドキャリア支援の場としても機能し、医療従事者という専門人材をつなぐ、新たな価値創造の起点となっている。

  竹重氏には、「MEDs」で新規事業を立ち上げのポイントを講話いただいた(右手前:竹重氏) 竹重氏には、「MEDs」で新規事業を立ち上げのポイントを講話いただいた(右手前:竹重氏)