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研究リポート
デザイン経営モデル研究会
経営に『デザインの力』を活用して、魅力ある自社らしいブランドづくりを実践している素敵なデザイン経営モデル実践企業の取り組みの本質を視察先講演と体験で学びます。
研究リポート 2025.12.05

デザイン経営の実践に向けた組織改革の取り組み ~メーカー知財部門での取り組み事例~ オムロン

第2回の趣旨
タナベコンサルティングの「デザイン経営モデル研究会」第2回2日目は、オムロンの知財戦略に深く関わる奥田武夫氏が、デザイン経営の実践事例を通じて組織変革のプロセスと学びを紹介した。奥田氏は内閣府知的財産戦略推進事務局において「経営デザインシート」や「知財・無形資産ガバナンスガイドライン」の策定に携わり、知財を活用した経営戦略の推進に尽力してきた。
  講演では、オムロンで奥田氏が実施したデザイン経営の取り組みをケーススタディーとし、現状認識の共有、本質的課題のあぶり出し、課題解決に向けた動き出しという3つの要点を解説。システム思考を活用した悪循環の整理や、心理的安全性を確保した議論の場づくりを通じて、変化が少しずつ広がるプロセスが示された。研究会参加者は、組織変革の実践的な知見を学んだ。
開催日時:2025年11月10~11日(東京開催)


オムロンのデザイン経営

奥田氏は、内閣府知的財産戦略推進事務局において「知財のビジネス価値評価検討タスクフォース」や「知財・無形資産ガバナンスガイドライン」の策定に従事し、知的財産を活用した経営戦略の推進に深く関与してきた。また、一般社団法人デザイン経営推進機構の理事も務め、デザイン経営を広く推進している。

 

奥田氏は、デザイン経営の理論を踏まえた上で、実際にオムロンが行った取り組みを通じて、施策をどのように進めていったかという具体的なプロセスを紹介。デザイン経営の本質的なメリットを提唱した。研究会参加者は、奥田氏の豊富な知財政策活動歴から得られた知見を背景に、デザイン経営の実践で得られることを学んだ。

  本研究会1日目に、三菱総合研究所の山越理央氏が講演した「デザイン経営の実践で得られる3つの効果」とつなげる形で、オムロンがデザイン経営により体現した4点を解説 オムロン講演資料 本研究会1日目に、三菱総合研究所の山越理央氏が講演した「デザイン経営の実践で得られる3つの効果」とつなげる形で、オムロンがデザイン経営により体現した4点を解説
出所:オムロン講演資料



あるべき姿を描き、現状認識を共有して行動を模索

オムロンは、デザイン経営の推進に当たり、まず組織として目指すべき「あるべき姿」を描き出し、それを基準に現状とのギャップを明確化することを重視した。

 

このプロセスでは、同社知財センタのメンバー全員で現状を認識し、課題を共有した。これにより、メンバーは自分たちが置かれている状況を理解し、課題を自分事として捉える土台を築くことができた。

 

その上で、ギャップを埋めるために今できる具体的な行動を模索し、実現可能な取り組みを一つずつ積み上げていった。理想を描くだけで終わらせず、現実的な行動に落とし込むことで、メンバー全員が主体的に課題解決に向き合う環境を整えた。

 

この取り組みは、組織全体が一体となり、未来に向けた希望を持ちながら変革を進めるための強い基盤となった。

 

参加者とコンタクトを取りながら講演を進める奥田氏 参加者とコンタクトを取りながら講演を進める奥田氏

本質的な課題をあぶり出し、悪循環を整理

オムロンの知財センタでは、人員削減や業務の標準化、アウトソーシングの活用が進む中で、メンバー自身の存在意義が希薄化し、組織としてのアイデンティティーが揺らいでいた。この課題に対し、未来に向けた新しい取り組みを行うために、全メンバー参加の定例会議「みらい会議」を開催した。

 

会議での議論の中では、ポジティブな意見だけでなく、「やっても無駄だ」「難しそう」といったネガティブな意見も多く出た。奥田氏は、これらの意見を否定せず受け止めることで、組織が抱える本質的な課題を浮き彫りにした。

 

特に、「取り組みが続かないから新しいことをやっても無駄」という意見が出る背景には、組織風土に根付いた短期的な視点や保守的なメンタリティーがあることが明らかになった。この課題は、目の前の業務の成果を出せば短期的に評価されるため、長期的な変革を避ける傾向があるという組織の集合意識に起因していた。

 

奥田氏は、こうした課題を共有し、メンバーが課題の根本原因を理解していく取り組みを丁寧に進めた。


「みらい会議」では、傍聴席を設ける、会議の時間を延長せず1時間で終わる、任意参加とするなど、心理的なハードルを下げることで「大勢をみて動くフォロワー」「変革に消極的な者」を動かす工夫が施された 出所:オムロン講演資料 「みらい会議」では、傍聴席を設ける、会議の時間を延長せず1時間で終わる、任意参加とするなど、心理的なハードルを下げることで「大勢をみて動くフォロワー」「変革に消極的な者」を動かす工夫が施された
出所:オムロン講演資料

課題解決に向けた動き出しと変化の広がり

本質的な課題を認識した後、組織は課題解決に向けて動き出す必要がある。奥田氏は、意識の高いメンバーから少しずつ変化が始まり、大勢を見て動くフォロワーたちへと広がっていく仕組みを設計した。変化に積極的なメンバーを刺激してフォロワーを動かす方向性に導き、消極的なメンバーはその動きに倣う形で変化を受け入れてもらうことで、組織全体の変革を促進したのである。

 

このプロセスでは、「やる気が出てから動くのではなく、動き出すことでやる気が生まれる」という考え方が重要な役割を果たした。変化は一朝一夕ではなく、時間をかけた議論とプロセスを通じて徐々に進んでいくものであり、組織の持続的な成長を支える基盤となった。


オムロン知的財産センタ ミッション 課題への解決策として同センタは「ミッション策定」を行った。本質的な課題が特定されるまでのプロセスが大事であり、ミッションの策定は、本質的な課題を認識したメンバーの積極的な参画により、建設的かつ効率的に進んだ
出所:オムロン講演資料

PROFILE
著者画像
奥田 武夫 氏

奥田研究室 主宰
オムロン株式会社 技術・知財本部 Principal Intangible Asset Strategist
一般社団法人デザイン経営推進機構 理事
一般財団法人日本知財学会 経営デザイン分科会 幹事