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研究リポート
顧客創造モデル研究会
顧客創造の仕組みだけではなく、体制や制度等にも注目し、時代に合った“顧客創造モデル”を実現している企業を研究していきます。
研究リポート 2026.10.07

地域ニーズをつなぐSCプラットフォーム経営 JR西日本SC開発

第4回の趣旨
タナベコンサルティングの顧客創造モデル研究会では、顧客の変化を捉え、新たな価値を生み出す企業の実践から、持続的な成長を実現する経営モデルを学ぶ。
第4回では、顧客・消費者起点で事業を再設計する取り組みをテーマに、JR西日本SC開発の舟本 恵 氏が講演。「ルクア大阪」や「バルチカ03」を題材に、地域特有のニーズとテナントを結ぶプラットフォームへの転換や、立地を生かした事業拡大、AI・データ活用による知的資産の事業化を学んだ。

開催日時:2026年9月9日(大阪開催)



はじめに

JR西日本SC開発は、ルクア大阪をはじめとする商業施設の開発・運営を担い、JR西日本グループのショッピングセンター(SC)事業を統括する。執行役員でカンパニー統括本部副本部長を務める舟本氏は、20年以上にわたりSCの開発・運営に従事し、「ルクア イーレ」や「バルチカ03」などの開発を手掛けてきた。

 

従来のSCは、施設が集客し、テナントが販売する役割分担で成り立ってきた。しかし、昨今は消費者ニーズの細分化により、来館者数が売り上げや利益につながりにくくなっている。そんな中同社は、地域生活者のニーズを自ら把握し、それに応えるテナントを結ぶ事業へ転換。立地に依存した集客型から、地域の需要と供給をつなぎ、双方に価値を生むプラットフォーム型の経営を目指している。

  JR大阪駅に直結する「ルクア大阪」。都心の立地を基盤に、地域のニーズを捉えながら、店舗構成の充実と事業領域の拡張を進める。

JR大阪駅に直結する「ルクア大阪」。都心の立地を基盤に、地域のニーズを捉えながら、店舗構成の充実と事業領域の拡張を進める。
出典:ルクア大阪 公式サイト






「立地」を起点に稼げる事業領域を広げる

JR大阪駅直結という立地は、同社の重要な経営資源である。ただし、好立地をそのまま収益力と捉えるのではなく、施設の規模や競争地位に応じて戦略を変えている。

 

「ルクア大阪」では、商圏内の利用実態を調査し、幅広い顧客層や商品分野を担うリーダー戦略を採用。駅南側へのエリア拡張によって提供できる価値の幅を広げている。一方、「バルチカ03」では、梅田で働く男性の「日常の食」に着目し、顧客・利用場面を絞り込むニッチャー戦略を選んだ。

 

事業拡大とは単に売り場を増やすことではない。立地と経営資源を見極め、地域の未充足ニーズを満たす事業領域を広げることである。



顧客起点でテナントとのマッチングを実現

同社はウェブアンケートとグループインタビュー等を通じ、既存顧客や未利用者の声を収集する。「バルチカ03」の開発では、近隣で働く男性の日常的な飲食への不満を捉え、質や希少性を重視し、目的の店があればオフィスビルの中層階にも足を運ぶ層を特定。求める価値を明らかにし、その価値を提供できる店舗を誘致した。

 

さらに、営業時間や定休日を各店に委ね、閑散時間帯の人件費などの抑制にも配慮した。重視するのは集客数の最大化だけではなく、顧客満足とテナントの採算を両立させることだ。顧客ニーズと店舗の強みを結び、運営条件まで設計する姿勢こそ、利益を生むプラットフォーム経営の要諦といえる。

 

地域の困りごとから店舗を選び、運営条件まで設計。集客の量だけでなく、顧客の満足とテナントの利益を重視する。

地域の困りごとから店舗を選び、運営条件まで設計。集客の量だけでなく、顧客の満足とテナントの利益を重視する。
出所:JR西日本SC開発 講演資料を基にタナベコンサルティング作成



データを蓄積し「知的資産」を事業化する

既存施設でも毎年定点観測を行い、顧客ニーズの変化をテナント構成や店舗の入れ替えに反映している。アンケートの回答データやインタビューの文字起こしにはAIエージェントを活用し、顧客との関係強化、新規顧客獲得、離反防止に向けた分析の効率化を進めている。

 

さらに、蓄積した調査・分析のノウハウは、他のSC事業者へのコンサルティングにも展開。現場で磨いた知見を自社内にとどめず、再利用可能な知的資産として事業化する取り組みである。

 

中堅・中小企業にも、日々の顧客接点で得た一次情報を蓄積し、AIで活用しやすくすることで、既存事業の競争力と新たな収益機会の双方を育てる視点が求められる。

 

顧客情報と分析手法を継続的に蓄積。自社施設の改善に加え、他社へのコンサルティングにも展開する。

顧客情報と分析手法を継続的に蓄積。自社施設の改善に加え、他社へのコンサルティングにも展開する。
出所:JR西日本SC開発 講演資料を基にタナベコンサルティング作成

PROFILE
著者画像
舟本 恵 氏

JR西日本SC開発株式会社
執行役員