タナベコンサルティングの「企業価値を高める戦略CFO研究会」第2回のテーマは「企業価値の定義と財務・非財務戦略によるPBR改革」である。
企業価値とは企業のステークホルダーに対する価値である。また別の見方をすると、企業の現在から将来にかけての収益力を示すものであり、将来発生するキャッシュフローを見込んだ上での現在の価値を評価したものともいえる。企業価値を端的に示した指標がPBR(株価純資産倍率)であり、PBRを高めていくことが企業価値につながる。
企業価値を高めていくためには、財務資本・非財務資本によるPBR向上がポイントである。PBRが1倍であれば、会計上の価値(純資産)と企業価値(時価総額)は同等であり、PBRが1倍より高く、会計上の価値を超えている分は、非財務資本による付加価値だといえる。
PBRを高めていくには、ROE(自己資本利益率)を向上させる財務戦略と、資本コストを下げ、マルチプルを向上させる非財務戦略が重要であることを学んだ。
開催日時:2026年3月27日(東京開催)
真の「稼ぐ力」とは
現代経営において企業価値を向上させるには、売上規模重視から「資本効率重視」への転換が不可欠である。真の「稼ぐ力」とは、株主や債権者の期待収益率である「資本コスト(WACC)」を上回るリターンを安定的に創出することに他ならない。
経営陣には、限られた資源を慣習で配分するのではなく、資本効率に基づいた最適なポートフォリオへ戦略的に再配分する責務がある。
将来の成長投資と株主還元のバランスを最適化し、数値の背景にあるストーリーを論理的に言語化してステークホルダーとの信頼を築くことこそが、戦略的経営の根幹である。
資料出所:西山氏講演資料
ROIC経営の導入とポートフォリオの最適化
企業価値を高めるためには、単なる利益額の追求ではなく、投下した資本に対してどれだけ効率的に利益を上げたかを測るROIC(投下資本利益率)を導入し、事業ごとの「稼ぐ力」を客観的に評価することが重要である。
このROICと資本コスト(WACC)を比較することで、価値を創造している事業と資本を毀損している事業を明確に区分し、経営判断の確固たる根拠とする必要がある。
特に収益性が低く、将来的な改善の見込みが立たないセグメントについては、現状維持という安易な選択を排除し、撤退や売却を含めた大胆な構造改革を断行することで、全社の資本効率を最大化させるポートフォリオへの再編が求められる。
資料出所:西山氏講演資料
戦略的キャッシュ・アロケーションと還元政策
持続的な企業価値の向上のためには、営業キャッシュフローを原資として、将来の成長を牽引する設備投資やM&A、そして株主への適切な利益還元にどのように配分するかという明確な「キャッシュ・アロケーション」の指針を策定しなければならない。
全ての投資案件において、資本コストを上回るハードル・レートを厳格に設定し、確実なリターンが見込める案件を厳選して優先的にリソースを投じることが不可欠である。
また、資本構成を最適化しながら、機動的な自己株式取得や配当政策を通じて株主価値を高めていくことで、市場からの信用を獲得し、対外的な評価と企業価値の向上を同時に実現することが可能となる。
資料出所:西山氏講演資料
経営管理の高度化とDX・人財育成
これからの財務組織には、単なる過去の数値集計を行う管理会計の枠を超え、高度な予測分析に基づき経営の意思決定を多角的に支援する「FP&A(ビジネスパートナー)」としての機能を確立することが期待されている。
この体制を支えるためには、財務データの収集や分析プロセスにAIや最新のデジタルツールを積極的に導入し、変化の激しい市場環境に即応できるスピード感を持った経営管理体制を構築しなければならない。
さらに、定量的な数値目標の達成だけでなく、その背景にある成長戦略や価値向上のストーリーを論理的に言語化し、投資家や全従業員との深いエンゲージメントを通じて信頼関係を醸成するコミュニケーション能力を養うことが重要である。

資料出所:西山氏講演資料
早稲田大学大学院 経営管理研究科(ビジネススクール) 教授