タナベコンサルティングの「企業価値を高める戦略CFO研究会」第2回のテーマは「企業価値の定義と財務・非財務戦略によるPBR改革」である。
企業価値とは企業のステークホルダーに対する価値である。また別の見方をすると、企業の現在から将来にかけての収益力を示すものであり、将来発生するキャッシュフローを見込んだ上での現在の価値を評価したものともいえる。企業価値を端的に示した指標がPBR(株価純資産倍率)であり、PBRを高めていくことが企業価値につながる。
企業価値を高めていくためには、財務資本・非財務資本によるPBR向上がポイントである。PBRが1倍であれば、会計上の価値(純資産)と企業価値(時価総額)は同等であり、PBRが1倍より高く、会計上の価値を超えている分は、非財務資本による付加価値だといえる。
PBRを高めていくには、ROE(自己資本利益率)を向上させる財務戦略と、資本コストを下げ、マルチプルを向上させる非財務戦略が重要であることを学んだ。
開催日時:2026年3月27日(東京開催)
成長と変革を実装する方法とは
インテグリティ代表取締役の田中慎一氏は、企業の財務戦略に関するコンサルタントであり、NewsPicksのプロピッカーやセミナー出講、出版活動などで企業財務・企業金融の世界をやわらかく、面白い形で情報発信している。
本研究会では「事例で見る価値創造経営」をテーマに、利益の最大化だけでなく、キャッシュフローと資本コストを踏まえた“資本配分”の意思決定を軸に、成長と変革を実装する方法について、「世界で最も持続可能な企業2025」(TIME誌およびStatista社)に選ばれた仏・シュナイダーエレクトリック社と、国際的なサステナビリティ評価機関・エコバディスによる評価で2025年に「ゴールド(評価対象の上位5%の企業に付与)」を受賞したスウェーデンのアトラスコプコ社のケーススタディーを用いて解説いただいた。
サステナビリティは「義務」ではなく、「本業」そのもの
シュナイダーエレクトリック社とアトラスコプコ社に共通するのは、サステナビリティをコストや社会貢献の文脈で捉えず、「顧客の環境課題を解決することが、そのまま売り上げ・利益・企業価値の拡大につながる」という設計にしている点である。
顧客のCO2削減、省エネ、稼働安定化に資する領域へ資本を重点配分することで、社会価値と経済価値を両立。資本コストを上回るリターンを生むテーマへ投資をシフトすることで、サステナビリティと収益化を両⽴することが、持続的な成長を実現するポイントとなる。
資料出所:インテグリティ講演資料
DX/SXの本質は「デジタル化」ではなくキャッシュフローの出方を変えること
両社は単なる業務効率化や電子化ではなく、機械、設備の売り切り型ビジネスモデルから、監視・保守・最適化・従量課金を含むサービス型(サブスクリプション型)へと事業モデルを転換している。
これは、収益の源泉を一時点の売り上げから、継続課金のストック型キャッシュフローへ移す資本配分の発想である。
結果として、利益率、ROE、株式市場での評価が高まり、変革投資がさらに可能になる好循環が生まれる。DXとは、競争力と資本効率を同時に高める稼ぎ方の再設計なのである。

資料出所:インテグリティ講演資料
企業変⾰投資のKPI設計は通常案件と分けて考える
事業を変革するトランスフォーメーション案件は、既存事業の延長線上にある投資と同じ基準で判断すると進まない。両社のような変革は、顧客価値の再定義、サービス化、買収による周辺領域の取り込みなど、成果が出るまでに時間がかかるため、市場性や収益性を段階ごとに見極める「ゲート管理」をする必要がある。
その際には、仮説修正を前提に資本を配分することが重要である。短期採算の視点だけではなく、将来の高収益事業を育てる意思決定が、成長と変革の実装を左右する。

資料出所:インテグリティ講演資料
インテグリティ 代表取締役社長