タナベコンサルティングの「企業価値を高める戦略CFO研究会」第5回のテーマは「企業価値を高める上場という選択肢とPBR改革」である。
上場は単なる知名度・信用力の向上ではなく、広く一般の投資家から資金を調達し、株主の期待に応えながら企業価値を高める重要なステップであり、企業の成長を加速させる選択肢になり得る。研究会参加者は、企業価値を高めるための上場という選択肢が持つ戦略的意義について学んだ。
開催日時:2025年10月22日
地方発の上場モデル事例
フクヤ建設の代表取締役社長である福家淳也氏に、実際にTOKYO PRO Market(TPM)に上場した経験から「なぜ上場を選択したのか」「上場の目的」「上場したことによる効果や影響力」などについて講演いただいた。
同社は人口減少や少子高齢化、南海トラフ地震などの災害リスク、経済基盤の弱さなど、さまざまな課題を内包した高知県におけるTPMの唯一の上場企業であり、地方発の上場モデル事例である。
TPM上場の効果
TPMへの上場による信用力獲得により、同社は、➀人材採用、➁M&A、➂金融機関からの関係性という3点で、次のような大きなメリットを得た。
➀人材採用
新卒採用では県内唯一の工科大学側からアプローチを受けたほか、インターン生が5名から30名程度に増えた。経験者採用においても、Iターン、Uターン希望者からの問い合わせが増えた。
➁M&A
金融機関やセンターからの持ち込み量が圧倒的に増加した(1件/日以上)。
➂金融機関
県内の金融機関側からのアプローチがあり、関係性が強固になった。融資提案件数、融資条件ともに、上場前から大きく改善した。
出所:フクヤ建設講義資料
上場準備としてガバナンス体制の構築と意識改革を実行
J-Adviserと契約し、取締役会・監査役の設置、社内規程・内部監査体制の整備、月次決算体制の構築、労務管理体制の確立など、ゼロから経営基盤の再構築を行った。
上場準備は質、量ともに負担が大きく、特に決算短信開示の45日ルールへの対応には苦労したが、結果的に月次決算体制が整い、各部門で業績の先行管理ができるように改善。併せて、権限委譲による「脱ワンマン経営」を進めたことにより、スピード感のある経営判断が可能となり、財務面でも安定した“潰れにくい会社”へと変化した。
出所:フクヤ建設講義資料
M&Aによる売上高100億円への挑戦
同社は2034年までにグループ売上100億円を目指し、注文住宅・商業施設・建材卸の拡大とM&A戦略を推進している。
注文住宅・商業施設・建材卸の拡大では、30万人規模の都市に、同社の強みであるデザイン力が伝えられる環境を整備。「CAFÉ+住まいの間」のブランド体験型施設10拠点の展開を計画している。
M&A戦略では、1年に1社のM&Aを実現し、FUKUYAブランドをエリア展開することで、成長スピードの加速とスケールメリットを狙っている。
また、これらを実現するためのPMIのポイントや、成長を加速させるための人材採用、働きがいの向上による人材定着のポイントについても説明いただいた。
出所:フクヤ建設講義資料
フクヤ建設株式会社 代表取締役