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研究リポート
ナンバーワンブランド研究会
コロナ後の新しい時代に合わせた最新のブランディングを研究し、参加者の皆様が自社で実装するために、コンサルタントがアドバイス・サポートいたします。
研究リポート 2026.08.06

障がい者雇用を会社発展に生かす オムロン太陽

第3回の趣旨
ナンバーワンブランド研究会では、自社のベース価値に、顧客の潜在的な「不」への約束や独自の体験価値を付加するブランドストーリーの構築を学ぶ。大手とは異なる「尖った価値」を定め、中長期的な信頼を築く収益モデルの創造を目指す。
第3回は、オムロン太陽代表取締役の辻氏から、障がい者雇用を経営戦略とし「ユニバーサルものづくり」を実践する事例や、地域資源を生かした独自の価値創造について講演いただいた。持続可能な成長に向けた戦略について学んだ。

開催日時:2026年1月22日(九州開催)



はじめに

オムロン太陽は、1972年に「日本パラリンピックの父」中村裕博士とオムロン創業者(立石一真)によって設立された日本初の障がい者福祉工場だ。「保護より機会を」という理念の下、電子部品生産を主力としている。

 

従業員の約半数が障がい者ながら、健常者と同一の給与・評価体系を実現。その背景として、独自の「ユニバーサルものづくり」を推進し、特製治具やITを活用した誰もが活躍できる環境を整備していることが挙げられる。そのノウハウや特許の無償開放、インクルーシブ研修を通じて、障がい者雇用を「社会貢献」から「経営戦略」へと昇華させている。ダイバーシティーの先駆者として、持続可能な自律社会の実現を目指しています。

  オムロン太陽は「ゆにもの(ユニバーサルものづくり)特許解放」として、障がい者も活躍できる職場づくりに役立つ治具や生産技術に関する特許20点を無償で公開・開放した

オムロン太陽は「ゆにもの(ユニバーサルものづくり)特許解放」として、障がい者も活躍できる職場づくりに役立つ治具や生産技術に関する特許20点を無償で公開・開放した
出所:オムロン太陽ホームページ






障がい者雇用を「社会貢献」から「経営戦略」へ転換する

従来の障がい者雇用は、法定雇用率の遵守やCSRといった「守り」の文脈で語られることが一般的だった。しかし同社は、これを組織の生産性や競争力を高める「経営戦略」そのものと定義している。

 

労働人口が急減するマクロ環境下において、多様な人材が活躍できる基盤を整えることは、企業の生存に直結する。障がいのある社員が直面する「業務上の障壁」を解消するプロセスは、結果として動線の最適化やミス防止策(ポカヨケ)の構築を促し、全従業員の生産性向上と品質の安定化をもたらす。「障がい者への配慮」に留まらず、「誰もがミスなく効率的に働ける仕組み」を追求することこそが、強靭な現場を作る鍵となるのだ。



「ユニバーサルものづくり」による現場力の最大化

同社が提唱する「ユニバーサルものづくり」の学びは、技術(ハード)、仕組み(ソフト)、相互理解(ハート)の三位一体の改善にある。身体的欠損を補う「バリアフリー」の段階を超え、精神・知的障がいを含めた多様な特性に合わせ、機械が人に歩み寄る環境を構築している。

 

例えば、AIを活用して指導者の経験不足を補ったり、感情を共有する「ニコニコボード」で心理的安全性を高めたりと、個人の「自律」を支える仕組みが徹底されている。現場起点で積み上げられた1500件以上の改善提案は、働くことの喜びややりがいを育むだけでなく、蓄積された知見を「特許の無償開放」という形で社会に還元するまでに至っている。

 

業務改善事例紹介ページ

同社の業務改善事例はコーポレートサイトで公開されており、誰でも閲覧できる

同社の業務改善事例はコーポレートサイトで公開されており、誰でも閲覧できる
出所:オムロン太陽ホームページ



インクルーシブな組織を支える「自律社会」の働き方

同社の根底にあるのは、障がいの有無に関わらず「同一の土俵(職能・査定・給与体系)」で評価し、個々の主体性を尊重する姿勢だ。これは、自分らしさを発揮しながら他者と協調し、社会発展に貢献する「自律社会」のモデルケースと言えよう。特に、メンター(指導者)が「善意の押し付け」に陥らないよう、システムや客観的なデータを用いてサポートする仕組みは、現代の多様なマネジメント課題に対する有力な解である。

 

障がい者理解を深める研修を通じて、管理職が「異能人財」との協働に慣れることは、イノベーションが求められる現代の事業創出において不可欠なスキルである。一人の「やりにくさ」を起点に組織全体をアップデートし続ける姿勢こそ、これからの時代に求められるリーダーシップの核心でろう。

PROFILE
著者画像
辻 潤一郎 氏

オムロン太陽株式会社 代表取締役