第12期ナンバーワンブランド研究会では、「価格決定力を生み出すブランド経験価値をデザインする」をテーマに、先進企業の事例から学び、企業の持続的成長を目指している。第2回は、ダイドードリンコの「発送の原点から繋がるコーポレートブランディング」、タビオの「靴下産業の永続発展を目指すブランディング」を取り上げ、それぞれがブランド価値向上や顧客との信頼構築にどのように寄与しているかを講演いただいた。
開催日時:2025年10月29日(大阪開催)
はじめに
タビオは、東証スタンダード市場上場の靴下専業のSPA企業である。1968年の創業以来、靴下一筋で業歴を重ね、日本で歴史ある靴下専門店として成長してきた。国内外で「靴下屋」「Tabio」「Tabio MEN」などのブランドを展開し、企画から製造、小売り、卸売りまでを一貫して手掛ける。その特徴は、日本製にこだわった最高品質の靴下を、量販店ではなく専門店で売るビジネスモデルにある。JIS規格よりも高い品質基準を設定し、多種多様な商品ラインアップを取りそろえた靴下専門店――。これがタビオのブランドを支える基盤であり、同社をニッチトップ企業たらしめるゆえんだ。
同社の事業は、国内専門店事業、国内EC事業、海外・スポーツ卸事業の3つで構成されており、4期連続増収を達成するなど業績も好調である。
タビオの商品ブランド
シュリンクする業界で成長を続けるタビオの戦略
現在、日本に流通する靴下の約9割が海外生産品である。国内工場は1990年頃から激減し、業界は30年以上右肩下がり。そんな中、タビオは顧客ニーズに合わせた改革で成長を続けてきた。主力ブランド「靴下屋」では1995年頃にルミネ新宿へ出店。自社の靴下を「雑貨」と定義し、地域のニーズに合わせた柔軟な店づくりでルミネ全店舗への出店をかなえた。「Tabio」では、赤字続きだった百貨店事業を縮小し、現在はGINZA SIXなどに出店。海外では、靴下専門店としての姿勢を貫くため多店舗展開しない方針で、ハイブランド店が立ち並ぶ一等地を厳選して店舗を構えている。「Tabio MEN」をはじめとするメンズソックスでは、商品の領域をビジネスソックス中心からカジュアルやスポーツへ転換している。
パリ・マレ地区の店舗
ブランドの“劣化”を防ぐ改革人材の重要性
「ブランドとは劣化していくものである」。靴下専門店を展開する中で、数々のアパレルブランドの栄枯盛衰を間近で見てきた越智氏はそう語る。ブランドを作っても、磨き続けなければいずれは廃れてしまう。劣化を食い止められるのは、成功体験にとらわれずブランドを変えていける人材だ。越智氏いわく、革新的な手が打てるか否かは、年齢でも性別でもなく人の特性によるという。これを見極められるかどうかがブランドの進退を決める重要なポイントになる。そのためには、過去の実績をあてにせず、社内や人をまっさらな目で見て判断することだ。改革に対する柔軟性を持った適材を見つけて、機を逃さず適所に配置しブランドを改革し続けることが求められる。
新たに開発した野球専用のソックス
「やり方」を変えて靴下産業の永続発展を目指す
同社には「日本の靴下産業の永続発展を目指す」という、創業者から受け継いだ信念がある。この思いを軸にして、「やりたいこと」は変えず「やり方」を変えることでブランドを磨いてきた。変化を生む起点は業界慣習や自社の独自ルールを疑うことにあり、例えば近年では、同業他社との協業による新規業態店舗を出店し、両社の商品が混在した売り場を作ることで顧客への提案の幅を広げている。
越智氏は「守るべきものを決めれば、それ以外は全て変えていい」と話す。タビオにとって守るべきものは「日本の靴下産業」であり、その永続発展を実現すべく、協力工場やフランチャイズオーナー、販売員など全てのステークホルダーとともに改革を続けていく。
新規協業店舗「靴下屋UPDATEニュウマン高輪店」(出所:講演資料より)
タビオ株式会社 代表取締役社長