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研究リポート
アグリサポート研究会
アグリ関連分野において、先進的な取組みをしている企業を視察。持続的成長のためのポイントを研究していきます。
研究リポート 2026.10.27

商品の高付加価値化経営と食と地域をつなぐ事業戦略とは サラダコスモ

第1回の趣旨
タナベコンサルティングのアグリサポート研究会では、個(企業)から地域(地域活性化)へ収益モデルを創造することをメインテーマとし、「持続可能な社会」と「自社の持続的な成長」の両立の実現を先進事例から学ぶ。
第1回は、岐阜県中津川市に本社を置き、もやし・スプラウト・カット野菜を主力として、無添加・無漂白の独自栽培で「安全・安心・食べて健康」を安定供給している「(株)サラダコスモス様を視察。
同社は、教育型観光生産施設「ちごり村」も営み、量販向けBtoBと直販・観光の両輪で事業を拡大しており、そのノウハウを現地現場の視察も踏まえ講演頂いた。

開催日時:2026年9月24日(岐阜開催)



「親が思う気持ちで、おいしく安心して食べられる、体にいいものをお届けしたい」が原点

サラダコスモは1973年、「漂白は体によくない」との思いから無添加無漂白もやしを開発した小さな町のもやし屋を原点とし、46期連続黒字、売上高271億円(2026年)の全国企業へ成長した。発芽野菜・カット野菜を軸とする野菜づくり農業(251億円)に加え、教育型観光生産施設「ちこり村」の運営、酒類製造・通信販売・給食事業を展開する。

 

安価な増量野菜と見られがちなもやしを、「親が思う気持ちで、おいしく安心して食べられる、体にいいものをお届けしたい」という使命感にもとづくミッション経営で高付加価値化してきた同社の歩みは、研究会が掲げる「持続可能な社会と持続的成長の両立」の先進事例である。

 

もやし・かいわれなどを栽培

もやし・かいわれなどを栽培

 

化学肥料を使わず、温泉水・岩塩栽培によって、「安全、安心」を届けている

化学肥料を使わず、温泉水・岩塩栽培によって、「安全、安心」を届けている



常識を疑う開発と安定供給が生む高付加価値化

もやしはコモディティー化しやすく、価格競争に陥りやすい商材である。

 

同社は温泉水と天然塩による独自栽培法を確立し、日本初のオーガニックもやし(2016年)や生鮮食品初の機能性表示食品「大豆イソフラボン子大豆もやし」(2015年)を開発。同商品は緑豆もやしの3倍の価格ながら発売3カ月で出荷量1.7倍となり、最後発のカット野菜も微酸性電解水の導入により売上の40%超へ成長した。

 

こうした「産む力」を支えるのが供給基盤である。全国8拠点で良質な地下水と商圏への物流アクセスを確保し、365日、栽培・収穫・出荷を自動制御で継続可能。小売業者と直接つながる受注販売物流網を持ち、「作る力・売る力・届ける力・産む力」の4つがそろった生産直販モデルが強みであり、既成概念にとらわれない開発力と安定供給体制の両輪をどのように実現し、持続的成長をなしえているかを高付加価値化経営の本質として学ぶ。

 

自動化に積極的に投資し、安定した品質維持と365日案提供給を実現。また、全国8拠点で展開し、商圏へのスムーズな物流アクセスも強み

自動化に積極的に投資し、安定した品質維持と365日案提供給を実現。
また、全国8拠点で展開し、商圏へのスムーズな物流アクセスも強み



ちこり村発、食と地域をつなぐ事業戦略

オランダの市場で出会った西洋野菜「ちこり」の国産化構想は、鮮度の高い野菜の提供にとどまらず、休耕地の活用、雇用創出、町の活性化へと可能性を広げた。

 

2006年、生産工場に併設して教育型観光生産施設「ちこり村」を開業。

 

当初は1日の来場者が5〜10名だったが、日々の改善を重ね、昨年は年間来場者数44万人を達成した。

 

同施設は、バイキングレストラン「バーバーズダイニング」、栗きんとん生食パン、手作りおせち、ちこりの根を原料とするクラフトジンなど、地域の素材と文化を生かした6次産業化を体現する。60歳以上の優先雇用(71歳以上53名、最高齢86歳)や地域文化・偉人の伝承にも取り組み、2024年には「日本でいちばん大切にしたい会社」大賞・地方創生大臣賞を受賞した。個の収益事業が地域活性化と一体で成立する、研究会が目指す収益モデルの好例である。

 

ちごり村内の焼酎蔵を視察

ちごり村内の焼酎蔵を視察

 

ちごり村入口

ちごり村入口

 

名物の栗きんとん生食パン

名物の栗きんとん生食パン

 

農家手作り家庭料理レストラン

農家手作り家庭料理レストラン

売上高1,000億円へ、成長の系譜を未来につなぐ挑戦

同社の成長は、常識への挑戦の積み重ねの上にあり、数々の「産む力」による節目を刻んできた。この系譜の延長線上に、同社は売上高1,000億円の野菜生産者という展望を掲げる。

 

アルゼンチン自社農場(7,700ha)を含む原料種子の自社生産、栽培・包装技術の革新による品質・生産性向上、オーガニック・機能性表示食品の開発、直販直送物流網を活用した新規事業・新カテゴリ商品の開発、野菜残渣の有効利用、ちこり村・通信販売・弁当事業の拡大がその柱である。「野菜(サラダ)の可能性は無限に広がる(コスモ)」という社名に込めた思想の通り、原点の使命感を貫きながら事業領域を広げ続ける姿勢こそ、持続可能な社会と自社の持続的成長を両立させる条件であることを示す事例である。

 

「第14回「日本でいちばん大切にしたい会社」大賞』において、『地方創生大臣賞』を受賞

「第14回「日本でいちばん大切にしたい会社」大賞』において、『地方創生大臣賞』を受賞

 

アルゼンチン自社農場(7,700ha)

アルゼンチン自社農場(7,700ha)

PROFILE
著者画像
宮川 真一 氏

総合企画室 ちごり村支配人