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研究リポート
アグリサポート研究会
アグリ関連分野において、先進的な取組みをしている企業を視察。持続的成長のためのポイントを研究していきます。
研究リポート 2026.10.09

農業を核に地域を動かすエリアマネジメント アトレファームジャパン

第1回の趣旨
アグリサポート研究会は、「アグリ関連分野の持続的成長モデルを追求する」をコンセプトに、先進企業の現地視察を通じて、技術活用や異業種・自治体連携の実践を学ぶ場である。
今回はアトレファームジャパンを訪問し、代表取締役社長の若原雄一郎氏より、体験農園の運営、農業の仕組み化、継続的な発信、岐阜県山県市との官民連携、周辺施設との協働などを学んだ。
農業を核としたまちづくり(エリアマネジメント)から、企業と地域がともに成長する条件を考察した。

開催日時:2026年9月25日(岐阜開催)



はじめに

アトレファームジャパンは、岐阜県山県市で体験農園「みとか」とカフェを運営する企業である。建設コンサルタント、建設会社、農業の専門企業の3社が出資して設立した。耕作放棄地だった土地を活用し、いちごを主力に複数の作物を栽培。年間52週、毎週末に収穫体験ができる体制を築いた。

 

施設の目的は、農園単体の集客にとどまらない。山県市との官民連携や地域事業者との企画を通じ、人が市内を巡る拠点となることを目指している。

 

今回の講演と農園見学では、農産物に体験価値を加える設計、継続的な発信による集客、地域へ人の流れを広げるエリアマネジメントの実践から、その成長の条件を探った。

  農作業で出るいちごやサツマイモの葉をヤギの餌に活用し、子どもたちの環境学習にもつなげている

農作業で出るいちごやサツマイモの葉をヤギの餌に活用し、子どもたちの環境学習にもつなげている






農産物に「ここへ行く理由」を加える

いちごはスーパーでも買える。観光農園が選ばれるには、農産物そのものに加え、現地へ足を運ぶ理由が必要である。アトレファームジャパンは、「みとか」での収穫体験にカフェを組み合わせ、ハウスから運ばれたいちごがスイーツになる様子を見せる動線を設けた。

 

収穫したいちごを、顧客の好みに合わせてパック詰めして販売する取り組みも行う。若原氏は、「収穫する『コト』、その時だけの『トキ』、持ち帰る『モノ』を重ね、再訪や口コミにつながる体験を目指す」と説明した。

 

農業を核としたまちづくりでは、農園が来訪のきっかけになる。顧客が訪れ、滞在し、誰かに伝えたくなるまでの体験を設計することは、商品を価格だけで比較されない価値に変え、地域へ人を呼び込む第一歩となる。

 

体験農園「みとか」の案内図。いちご、ブドウ、サツマイモなどの栽培エリアを配置し、季節ごとに異なる収穫体験を提供している

体験農園「みとか」の案内図。いちご、ブドウ、サツマイモなどの栽培エリアを配置し、季節ごとに異なる収穫体験を提供している



継続発信を予約につながる営業に変える

メディアに一度取り上げられても、その効果だけで集客を続けることは難しい。若原氏によれば、出演後のホームページへのアクセス増加は、自然に落ち着くという。同社が重視するのは、Instagram(インスタグラム)で農園の情報を発信し続け、顧客と日常的な接点を保つことである。

 

その発信は、予約の現場にも直結する。いちご狩りでは、週末前に収穫見込みを確かめ、追加できる枠を木曜日にSNSで発信する。作物が足りなくなるリスクを抑えながら、来訪の機会を増やす仕組みだ。来訪者調査でも、Instagramと口コミは来訪のきっかけとして多く挙がったという。

 

発信の目的は、フォロワー数を増やすことではなく、「来訪につながる信頼を積み上げること」にある。自社の供給能力を見極め、必要なときに必要な情報を届ける運営こそ、発信を営業力に変える。

  ブドウ畑で袋をかけて栽培する大粒のブドウ。シャインマスカットなどを育て、完熟した果実を味わえる収穫体験で差別化を図る

ブドウ畑で袋をかけて栽培する大粒のブドウ。シャインマスカットなどを育て、完熟した果実を味わえる収穫体験で差別化を図る



農園を核に地域へ人の流れを広げる

農園に人が集まっても、そこで帰ってしまえば地域全体の活性化には届かない。同社は山県市との官民連携協定のもと、市から広報や住民との調整などの支援を受け、周辺施設とスタンプラリーや共同企画に取り組んでいる。自社を来訪の「点」とし、施設間を人が巡る「線」、さらに地域全体の「面」へと広げる試みである。

 

これが、農業を核としたエリアマネジメントの実践だ。ただし、若原氏は、「来訪者の多くがまだ農園以外の施設へ立ち寄っていない」と続ける。農園への集客と地域での周遊・消費は、同じ成果ではない。

 

地域連携の本質は、協定を結び、企画を実施することだけではない。来訪者の動きを確かめ、次に立ち寄りたくなる理由を関係者とつくり直すことだ。一社の強みを地域の商機へ変えるには、成果と課題を共有し、連携を磨き続ける必要がある。

 

いちご狩り用の栽培ハウス。通路を通常より広く取り、車いすやベビーカーでも利用しやすくした。温度や水やりなどは環境制御システムで管理する

いちご狩り用の栽培ハウス。通路を通常より広く取り、車いすやベビーカーでも利用しやすくした。温度や水やりなどは環境制御システムで管理する

PROFILE
著者画像
若原 雄一郎 氏

アトレファームジャパン株式会社 代表取締役社長