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研究リポート
アグリサポート研究会
アグリ関連分野において、先進的な取組みをしている企業を視察。持続的成長のためのポイントを研究していきます。
研究リポート 2026.04.30

道の駅・体験施設を再建。直売所事例で利益を最大化 たくみの里

第4回の趣旨
アグリサポート研究会は、「アグリ関連分野の持続的成長モデルの追求」をコンセプトに掲げている。
第10期4回となる本研究会では、群馬県利根郡みなかみ町に拠点を構える「たくみの里」を視察した。同法人は、道の駅や「フルーツランド モギトーレ」などを運営し、東京ドーム約70個分にも及ぶ広大な敷地での農村体験を収益化する独自の観光経営を展開している。
今回は「食と農で地域経済を回す地域振興策」をテーマに、道の駅の再生、複合施設の運営改善、そして人材・収益管理の実践ノウハウについてご講話いただいた。

開催日時:2026年3月18-19日



はじめに

たくみの里は、群馬県みなかみ町を拠点に、道の駅やフルーツランド、温泉施設、農園などを幅広く展開している。

 

同社の前身である「みなかみ農村公園公社」は、公益法人時代から万年赤字が続いており、事業継続が困難な状況にあった。そして2019年12月、破産の危機に直面し一般財団法人も引き継ぎつつ事業を分割して株式会社たくみの里を立ち上げた。同社代表である西坂文秀氏は、それ以前の約2年間にわたり町内の直売所や各種施設、イベントなどに対する企画提案を行い、地域支援に奔走していた。その経緯もあり、2020年4月に公社の事業を引き継ぐ形で株式会社たくみの里を設立し代表取締役社長に就任した。

 

しかし、船出と時を同じくしてコロナ禍による緊急事態宣言が発令される。事業は突如として立ち行かなくなり、1日の売り上げがわずか5万円にまで激減するという危機的状況に陥った。

 

この窮地に対し、2020年からの3年間で抜本的な経営改革を断行。従業員数を半分以下に削減するという痛みを伴う適正化を進めつつも、徹底した収益改善を図り、見事に黒字化を実現した。現在ではその経営手腕が評価され、2024年4月より町から新たに日帰り温泉施設を引き継ぐなど、地域における事業基盤をさらに強固なものとしている。

  たくみの里が管理する施設、イベント

たくみの里が管理する施設、イベント






農業・農産加工・観光業を統合した「6次産業化」とコロナ禍の逆転戦略

同社は「日本一の里山景観を創る」をミッションに掲げ、みなかみ町において農業(一次産業)、農産加工(二次産業)、観光業(三次産業)を統合した「6次産業化」を展開している。地域の農業を根底から支えるため、地元で採れた農産物(大豆、そば)は「たくみの里」がすべて買い取る体制を構築している。

 

会社設立と同時にコロナ禍に見舞われるという逆風の中にあっても、同社は「コロナ禍だからこそできること」へと発想を素早く転換した。ターゲットを従来の観光客から地元客へとシフトし、「人が現地に来なくても成り立つビジネス」の構築を模索したのである。

 

その象徴的な取り組みが、「モノを売るより恩を売る」という徹底した姿勢である。休業を余儀なくされた地元の旅館やホテルが作った弁当を「たくみの里」が買い受け、役場などへ宅配・販売する地域支援事業を展開した。

 

未曾有の危機を「普段できないことに取り組む好機」と前向きに捉え、社員一丸となって未知の課題にチャレンジした経験が、現在の強固な組織力と地域からの厚い信頼へとつながっている。

  モギトーレの案内図とみなかみ町のぶどう園

モギトーレの案内図とみなかみ町のぶどう園



山積みする地域課題の解決と、持続可能な「循環する仕組み」づくり

「たくみの里」の誕生から40年以上が経過し、利用者のニーズは大きく変化した。観光客数の減少による事業継続の危機に加え、人口減少に伴う空き家の増加や耕作放棄地の拡大など、里山の美しい景観の悪化も進行。「このままでは観光地としても、地域事業者としても持続が困難になる」という山積みする課題に直面していたのである。

 

これらの危機を打破するため、同社は観光地としての再活性化を図るとともに、地域の暮らしと景観を守り抜くことを決意した。「利益が地域内で循環し、地域へ還元される仕組みづくり」へと大きくかじを切ったのだ。

 

具体的な取り組みとして、町のオーガニックビレッジ宣言に呼応し、「環境負荷低減×資源循環型×地域循環型」を掛け合わせた独自の「みなかみスタイル」を構築した。さらに、統廃合で使われなくなる給食センターを食品加工場へと転換する計画を進めている。空き家対策として新たな「たくみの家(工房など)」を誘致。加えて、スターバックス コーヒー ジャパンとの連携プロジェクトを展開するなど、多角的なアプローチで地域課題の解決を進めている。

 

これらの多岐にわたる挑戦は、同社が掲げるミッション「日本一の里山景観を創る」を達成するためのブレない信念に基づくアクションだ。

 

みなかフルーツランドのBBQ席(左)、モギトーレの豚のオブジェ(右)

みなかフルーツランドのBBQ席(左)、モギトーレの豚のオブジェ(右)



みなかみ町の基幹産業が抱える課題を「ものづくり」で解決する

第一に農業を守るべく、収穫物を全量活用し、農家が安心して生産を継続できる仕組みを構築。第二に宿泊業を支えるため、人手不足解消や特産品開発に寄与。第三に地域の絆を深めるべく、ものづくりを通じた通年の資源循環と雇用創出により、地産地消を強力に推進している。

 

また、町との未来共創ビジョンを掲げ、里山・滞在型ツーリズムへの発展や、雇用・居住環境の整備による移住者の受け皿づくりを通じ、地域課題の解決を目指している。

  日帰り温泉施設「游神館」

日帰り温泉施設「游神館」
出所: 「游神館」ホームページ

PROFILE
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西坂 文秀 氏

株式会社たくみの里 代表取締役