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研究リポート
アグリサポート研究会
アグリ関連分野において、先進的な取組みをしている企業を視察。持続的成長のためのポイントを研究していきます。
研究リポート 2026.03.17

生産、加工、販売、一気通貫による高収益・安定生産モデル くしまアオイファーム

第3回の趣旨
アグリサポート研究会は、「アグリ関連分野の持続的成長モデルを追求する」をコンセプトに掲げている。
第10期の第3回研究会では、宮崎県串間市に本社を構えるくしまアオイファームを視察。消費者のニーズに応える商品開発や、海外への販路拡大など、時代に合わせて価値を生み出していく取り組みについてご講話いただいた。
開催日時:2026年1月29~30日


はじめに

くしまアオイファームは、宮崎県串間市を拠点にさつまいも専門で事業を展開する農業法人である。2013年の創業以来、10期連続増収を達成し、売上高は25億円に到達。従業員130名、契約農家280件、年間取扱量は1万トンという規模を誇る。

 

「強い農業はこえていく。」を経営理念に掲げ、生産者が守りに入らず、常に新しい挑戦を続ける姿勢を重視している。その事業モデルは、自社生産1割・契約農家調達9割という独自の構成だ。これにより、全国1000件を超える取引先への周年供給を実現し、さらに海外11カ国への輸出も展開している。

 

また、宮崎大学との共同品種開発や沖縄でのカフェ事業など、川上から川下までを一貫して手掛ける「スマイルカーブ戦略」を推進。さつまいも産業の新たな可能性を切り開いている。





多品種展開と契約栽培による販路拡大

くしまアオイファームの急成長を支えたのは、業界の常識を覆す多品種展開戦略である。2010年の「紅はるか」品種登録を機に、従来「一品種・一産地」が主流だった業界において、最大20品種を取り扱う体制を構築した。これにより、バイヤーが複数産地と商談・決済を行う手間をワンストップで解決する提案が可能となった。

 

さらに、「たくさん買ったもん勝ち」と言われるさつまいも特有の長期貯蔵性を生かし、契約農家280件から年間9000トンを調達する体制を整備。自社生産は1000トンにとどめ、調達と販売を営業部門が一体管理することで精度の高い需給調整を実現した。

 

取扱量が5000トン規模に達してからは、同一品質での周年供給を求める全国展開スーパーのニーズに応え、オリジナルパッケージなどの自社ブランド展開を強化。この戦略により、12年で売上高25億円、10期連続増収を達成した。

  1500トン規模の貯蔵庫貯蔵設備や、入出庫情報を一元管理。自社システムの活用により、年間1万トンにのぼる取り扱いを実現している 1500トン規模の貯蔵庫貯蔵設備や、入出庫情報を一元管理。自社システムの活用により、年間1万トンにのぼる取り扱いを実現している

海外輸出の継続と腐敗率低減への挑戦

くしまアオイファームの輸出事業は、「誰でもできるが続けるのが難しい」と言われる生鮮品輸出の本質を体現している。当初、約200キロの小口輸出からスタートしたが、混載便では他社の大ロット品に合わせた温度設定を余儀なくされ、低温障害による腐敗が課題となっていた。

 

この課題を解決するため、同社は販売先が確保できていない状態でありながら、20フィートコンテナ単位(6トン)での単独輸送へ切り替える決断を下した。これにより、12度という最適温度での管理を実現。現地で自ら販路を開拓し、一部のロスを「将来への投資」と割り切って挑戦した結果、腐敗率は年間1桁台へと劇的に改善した。

 

この成功モデルを香港、シンガポール、タイへと展開し、現在では輸出量約1000トン、11カ国への販路を確立している。さらに、ダブルキュアリング処理や鮮度保持袋の導入など、年2回の実証試験を重ねて技術改善を継続中だ。現在の輸出比率は10%程度だが、価格競争に巻き込まれない市場を選定し、周年供給体制を維持する戦略によって安定した海外事業を実現している。

  くしまアオイファームの「おやついも」 くしまアオイファームの「おやついも」

研究開発投資とスマイルカーブ戦略

くしまアオイファームが次に目指すのは、川中の薄利構造から脱却し、スマイルカーブ全体を底上げすることである。川上の強化として、2018年から宮崎大学と共同で品種開発に着手。さつまいも基腐病に強い「紅はるか」系統の育成を進めている。品種登録には10年を要するが、それを「諦める理由」ではなく「今すぐ始める理由」と捉え、代表自らが大学院に進学し、研究を継続している。

 

川上の強化と並行し、川下への進出も果たした。2024年11月、沖縄県那覇市のさつまいも専門カフェ「KOHAKUIMO(コハクイモ)」を事業承継。「川上だけを強化しても全体は上がらない。川上・川中・川下がつながって初めてスマイルカーブ全体が上がる」という気付きから、研究開発・生産・小売りを一貫して手掛ける体制構築を推進している。

 

さらに、バイオ炭によるJ-クレジット化など循環型農業へも投資。「先祖代々の農地を後代により美しく託す」という理念のもと、長期的視点で経営基盤強化を図っている。

  顧客のニーズに対応したオリジナルのパッケージ制作に取り組んでいる。串間市の道の駅には、くしまアオイファームのさつまいもが並んでいる 顧客のニーズに対応したオリジナルのパッケージ制作に取り組んでいる。串間市の道の駅には、くしまアオイファームのさつまいもが並んでいる

PROFILE
著者画像
奈良迫 洋介 氏

株式会社くしまアオイファーム 代表取締役