はじめに
株式会社影山鉄工所(静岡県沼津市)は、1947年創業の建築鉄骨製造会社。Hグレード認定工場として鉄骨工事を主軸に、ICTやHRブランディングを活用し、M&Aでグループ企業を拡大しシナジーを創出している。
今回、2018年に3代目社長として就任した彰久氏に、2020年から戦略的に毎年1件以上M&Aを実施し、どのように事業を拡大してきたのか、検討から実行に至るまでのプロセスと、DDで注意すべきポイントについて講演いただいた。
影山鉄工所のM&A
影山鉄工所は、2020年7月に三重県の鋳物製造会社を皮切りに、2021年4月には神奈川県の金属加工会社、2022年6月には静岡県のトラック部品製造会社、2023年2月には愛知県の自動車部品製造会社、2024年11月には静岡県の運搬部品製造会社、2025年2月には愛知県の工作機械用鋳造品製造会社をM&Aにより買収している。2025年現在、2事業8社でグループを構成し、現在さらに拡大している。
毎年のように行われるM&Aにより、グループ全体の業績は毎年約10億~20億円増収と拡大を続けてきた。通常、これだけグループ会社が増えると管理が行き届かないといった問題が生じるケースが多い。
しかし、影山鉄工所のM&Aは急激な売上高の増加だけを目的としていない。利益の増加はもちろん、人財育成、業務の効率化など組織をブラッシュアップする運営に力を入れており、グループ全体の安定性向上とさらなる成長を同時に実現できるよう管理体制を構築している。
影山鉄工所は2017年には売上10億円に満たなかったが、2025年には100億円を突破。まさにM&Aで時間とノウハウを買うというお手本のような会社となっている。
M&Aが中小零細企業の未来を救う
影山鉄工所によるM&Aのポイントは2つある。
1.コングロマリットを目指す 1つ目はコングロマリット化についてである。 影山鉄工所は2008年のリーマンショックで倒産危機に陥っている。しかし、彰久氏主導による新規事業参入やM&Aの積極的な活用により、危機的状況から一変、今では事業規模を大幅に拡大。2020年以降は毎年複数の企業を買収し、2025年には総売上高約100億円にまで成長させている。 これらを可能にしたのはコングロマリットを目指し取り組んできたためである。影山グループは10の企業・事業から成り、M&Aなどを通じてさらなる事業拡大を図っている。複数の企業や事業が着実に力をつけ、「影山グループ」としてグループ全体が安定化する経営を目指している。
2.社員のステージを作る 2つ目は社員のステージを作ることである。 影山グループは売上高の拡大だけを目的としていない。人財育成、業務の効率化など組織全体のブラッシュアップを行いながら、従業員を大切に成長させ、顧客、地域に貢献できる企業を目指している。 M&Aにより買収した会社の社員にも、研修やセミナー参加の他、資格制度の導入だけでなく、誰でもさまざまな仕事やプロジェクトに挑戦できる機会を作り、経験と実績を積むことで成長できる環境を構築し、社員のやりがいにつなげている。 彰久氏は、社員がチャレンジできるステージ作りは会社が社会に貢献していく上でも必要性が高く、従業員エンゲージメント向上のためにも重要だと考えている。 IT、人事、ブランディング等のノウハウを用いた組織マネジメントがグループ企業を安定化させ、離れた拠点でも問題なく事業をコントロールし成長させることを可能としている。
DD(デューデリジェンス)の留意点
影山鉄工所がM&Aを実行する上で留意している点は以下の項目である。
1.ビジネスDD →製造業のビジネスモデルの確認、顧客との契約実態、業界分析、オペレーション、組織、グループシナジーについて等
2.財務DD →簿外債務の調査等
3.税務DD →税金の未払等
4.法務DD →COC(チェンジ・オブ・コントロール)契約、特許等
5.労務DD →組織図(誰がどのような役割をしているか、属人化していないか)、未払残業代含む労使係争の有無
また、案件をブレイクさせないために留意している事項は以下5項目である。
1.未払残業代 →規模によるが、従業員30人程度で数千万円をイメージ
2.就業規則、労務体系 →既存規則が労基法に合っていない場合は買収後に修正
3.DDレポートでの指摘事項 →リスクヘッジの一つとして株価に織り込む
4.DDレポートと買収後の乖離 →DD業者は、財務、税務、法務、労務をセットでできる、信頼できる業者に頼むのが良い
5.買収資金のファイナンスの組み立て →自社の財務バランス、投資資金の回収スケジュールには注意する