戦略的M&Aと“買収判断力”を高めるDD(デューデリジェンス)の実践 シンク・アイホールディングス
『成長M&A』実践研究会では、M&Aのモデルを確立している企業から独自のM&Aノウハウと業種の特徴を取り入れた事例を学ぶ場を提供。M&Aを活用した成長戦略を実現し、自社の企業価値を向上させるための道しるべを提示する。
第3回のテーマは、「M&A交渉実務」ということで、シンク・アイホールディングス様より、事業の成長に向けたM&Aの戦略的取り入れ方、およびDD(デューデリジェンス)の実務上留意点についてお話いただいた。
開催日時:2025年6月20日(福岡開催)
はじめに
シンク・アイホールディングスは、「日本の匠・高度技術を承継し、錬磨することにより国際社会および産業の共創に貢献する」を企業使命に掲げ、複数の事業会社を束ねる持株会社として2020年に設立。
同社は産業用機器の商社を祖業とし1991年に創業し、時代の流れの中でさらなる付加価値の提供を目指し製造業へ事業領域を拡大させた。
また多角化を進める中でM&Aを行った。その企業は低収益だったが、適正な経営・マネジメントを行うことで収益性の改善、事業の成長を実現させた。この経験から、さまざまな地域・業態の企業の買収を進めていった。
現在は多角化を強化するため、同社を設立、ホールディングス体制とし、経営ノウハウと資金力を活かして高度技術の継承、地域経済の発展、雇用の創出を目指している。加えて、単に事業承継を進めるだけでなく、大学や企業とオープンイノベーションの連携を進め、新たな技術、製品、事業の共創に挑戦している。
出所:シンク・アイホールディングス講演資料
自社のM&Aに対する位置付け・方針の意思
シンク・アイホールディングスでは現在、年間300~500件のM&Aの検討を行っており、日々仲介会社や銀行等から案件紹介を受けている。その中において、M&Aの基本である買収目的や条件から、経営統合後に発展・成長させることができる会社を見極めている。
下図の6項目はM&Aを検討する際に初期段階で確認する事項であり、条件を整理しながら検討を進める。加えて、これまでのM&A経験を踏まえて業種や規模、スキーム等を事前に設定することでより効率的に、精度高く検討を進めており、DDに進んだ際も右記の観点を中心に企業の”本当の姿”の見極め、リスクの洗い出しを行っている。
出所:シンク・アイホールディングス講演資料
DDは“稼ぐ力”を見極めるフェーズ
M&Aの検討段階においてDD(デューデリジェンス)を実施するが、同社においてDDは「利益を担保するもの」「正しくM&Aを実施するためにあるもの」としてDD工程を重要視している。そのため、DDを専門家に依頼する場合は必要経費として捉え、精度を重視することで買収後のリスクを最小化している。
DDは帳簿の確認だけでは成し遂げられず、現場の実態=「ビジネスの真実」を掴めるかが重要となる。在庫(額)の実態や設備の状況、従業員の勤務・業務状況や取引先の構成など、帳簿の情報を深堀して確認することが求められる。
DD実施の際はトップ面談や視察を行うことも大切である。会話の中で出てくるキーワードや現場のメンバーの意見、現地の状況を見る中で小さな違和感を見逃さないことが求められる。M&Aを実施したい気持ちを抑え、冷静な判断をすることが求められる。
出所:シンク・アイホールディングス講演資料
ホールディングス化の目的の最大化
ホールディングス化(HD化)する効果はさまざまあり、上場企業だけでなく、中堅・中小企業でも導入が進んでいる。同社は事業リスク分散のため、多角化を進める上で、資本政策の柔軟性や経営人財育成・確保、および買収後のガバナンス強化の目的のためHDを導入している。
加えて、同社はHDに事業会社を支援する3つの機能(事業共創チーム、経営戦略室、経営デザインチーム)を保有することで現在から中長期的な視点で事業の発展を目指している。
現事業会社の有機的な成長に加えて持続的な成長手段の一つであるM&Aを駆使しながら同社はさらなる事業拡大、企業使命(Mission)の体現を行っている。
出所:シンク・アイホールディングス講演資料
株式会社シンク・アイホールディングス 取締役・CFO