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研究リポート
『成長M&A』実践研究会
「戦略」と「実行のスピード」をポイントに、アフターコロナ時代に求められる戦略の方向性と、それを実現するためのM&A・アライアンスの手法を学びます
研究リポート 2025.11.28

PEファンドが投資実行後に行うPMI、成長戦略の描き方 エンデバー・ユナイテッド

第5回の趣旨
第5回『成長M&A』実践研究会では「PMI(買収後統合)」をテーマに、企業変革の実践知に迫った。
三井化学株式会社より小野真吾氏を迎え、グローバルM&Aを通じた人的資本経営と人材・文化統合のリアルを学んだ。
エンデバー・ユナイテッドの高橋氏・朽名氏からは、PEファンドの視点による投資後の企業価値向上プロセスが事例をもとに紹介された。
両講師に共通していたのは、「PMIを買収後の整理作業ではなく、投資前から始まる経営変革の設計プロセス」と捉える姿勢であり、人と組織を軸にした統合と変革の重要性を再確認する機会となった。
開催日時:2025年10月21日


エンデバー・ユナイテッド株式会社
シニアヴァイスプレジデント 高橋 深氏(写真左)
ヴァイスプレジデント 朽名 和俊氏(写真右)


はじめに

 

PEファンドが投資実行後に企業価値をどのように高めていくか、その核心である「PMI(統合後マネジメント)」の実践と仕組みが、現場に根ざした事例を通じて紹介された。

 

登壇したのは、国内有数の独立系PEファンドであるエンデバー・ユナイテッドの高橋氏と朽名氏。両氏は、PMIを「投資後の統合作業」ではなく「投資前から始まる企業変革の設計プロセス」と捉えており、①投資前準備の徹底が成功確率を決定づけること、②人と組織の変革に真正面から向き合うこと、③ロールアップ(複数企業統合)による非連続的成長と出口設計の一貫性、という3つの柱を示した。

 

これらを支えるのは、「現場に入り込むハンズオン型支援」と「速い意思決定」であり、投資対象企業の中に入り込む伴走型経営の真価を感じさせる内容であった。

 




投資前準備がPMIの成否を左右する

 

繰り返し強調されたのは、「PMIの成功には投資前の準備が重要」という視点である。投資前のデューデリジェンス(財務・法務調査)に加え、経営者・幹部との対話を通じて、企業の本質的な課題や潜在力を探る“事業デューデリジェンス”を重視している。市場調査、競合比較、有識者・顧客ヒアリングなど、現場を多角的に可視化し、投資後の成長テーマを「仮説」として具体的に描く。

 

さらに、投資前から対象会社と連携し、諸施策の検討を実施する。この「前倒しの検討」が、投資後の初速を決める。

 

逆に準備段階で人や文化への理解が浅いと、買収後に反発や離職が起き、PMIが停滞する。投資前の段階で“人・組織・市場”の整合性を確認することが、成功の決定要因となる。

  出所:講演資料


人と組織に向き合うPMIの型

 

PMIの現場では、最も重要なのは「従業員との丁寧なコミュニケーション」である。

 

買収後、従業員は将来への不安を抱えやすく、放置すればモチベーション低下や離職が起きる。これを防ぐため、経営陣と連携して従業員説明会や個別面談を実施し、PMIの目的と方向性を繰り返し説明する。

 

人材登用では、既存社員の潜在能力を引き出し、外部から不足機能を補完して“融合型の経営チーム”を形成する。待遇改善やインセンティブ制度も、収益改善と連動させることで「努力が報われる」仕組みに変える。また、キャリアパスや評価制度を整備して「この会社で成長できる」未来像を示すことで、離職率の低減や生産性向上につながる。

 

人事制度はPMIの副次的テーマではなく、“企業文化を再構築する主戦場”であることを改めて認識した。

  エンデバー・ユナイテッド社の支援スタイル"" エンデバー・ユナイテッド社の支援スタイル
出所:講演資料


ロールアップによる非連続成長

 

成熟市場では、単体企業の努力だけでは限界がある。エンデバー・ユナイテッドは、補完関係にある企業をロールアップし、スケールメリット・人材融通・顧客基盤の拡張を実現している。統合後は、HD(ホールディングス)体制を整備し、権限・KPI・管理体制を明確化する。

 

ロールアップは単なるM&Aではなく、“中堅企業の成長を再設計する構造改革”である。戦略立案・組織再編・人材育成・DX・ガバナンスのすべてを一体で動かす設計力こそ、PEファンドの真価である。

 

講師写真

シニアヴァイスプレジデント 高橋 深 氏(右)

ヴァイスプレジデント 朽名 和俊 氏(左)