【第1回の趣旨】
第12期ナンバーワンブランド研究会では、「価格決定力を生み出すブランド経験価値をデザインする」をテーマに、先進企業の事例から学び、企業の持続的成長を目指している。第1回は、アフラック生命保険株式会社社の「社会貢献活動」、パナソニック コネクト株式会社の「事業戦略とカルチャー改革」を取り上げ、それぞれがブランド価値向上や顧客との信頼構築にどのように寄与しているかをご講演いただいた。これらの事例を通じて、経営改善に役立つ具体的なヒントを探った。
開催日時:2025年9月24日(東京開催)
はじめに
企業が持続的に成長するためには、単なる製品やサービスの提供だけでなく、組織文化やブランド戦略を通じて、顧客や社会との深い関係性を築くことが重要である。特に日本の中堅・中小企業においては、限られたリソースを最大限に活用し、独自の価値を打ち出すことが求められる。今回取り上げたパナソニック コネクトは、2022年に設立された新しい企業形態ながら、長年培った技術力と革新的なカルチャー改革を通じて、事業戦略を支える基盤を構築している。同社は「縦割りで重たいカルチャー」から「フラットで俊敏なカルチャー」への転換を目指し、社員の行動指針を明確化したことで、組織全体の競争力を強化できた。また、「現場から社会を動かし、未来へつなぐ」というパーパスを軸にしたブランド戦略を展開し、顧客や社会との信頼関係を深めている。

パナソニック コネクトの行動指針である「Our 5Core Values」
トップから現場まで、全社員を巻き込んで行動指針を明確化した
出所:植田氏講義資料より
パーパスを軸にしたブランド戦略
同社は「現場から 社会を動かし 未来へつなぐ」というパーパスを策定し、これを全社的なブランド戦略の基盤としている。このパーパスは単なるスローガンではなく、社員の共感を得るために全社を巻き込んで策定された。統合的なコミュニケーションを通じてパーパスを浸透させることで、企業活動の一貫性と信頼性を高めている。
この取り組みは、顧客や社会との関係性を強化し、企業の存在意義を明確にする効果を生んだ。特に、パーパスを中心に据えたブランド戦略は、企業が長期的な視点で価値を創造し続けるための重要な要素である。同社の事例は、中堅・中小企業が自社の強みを生かし、独自のブランド価値を構築する際のヒントとなり得る。

同社が取り組んだ「ブランドの一貫性」を持たせるコミュニケーション
出所:植田氏講義資料より
カルチャー改革で競争力を強化する
同社は、従来の「縦割りで重たいカルチャー」から「フラットで俊敏なカルチャー」への転換を図ることで、組織の競争力を強化している。心理的安全性の確保や多様性の尊重、社員の行動指針を明確化するなどして、社員が安心してチャレンジできる環境を整備した。この改革は、単なる働き方の改善にとどまらず、社員のモチベーションを高め、組織全体の生産性と創造性を向上させる効果を生んだ。
変化の激しい市場環境において競争力を維持するためには、自社のカルチャー改革を通じて社員の主体性を引き出し、組織の俊敏性を高めることが重要である。同社の取り組みは、企業文化が事業戦略の実現に直結することを示しており、中堅・中小企業にとって学ぶべき点が多い。

同社が実践しているカルチャー改革
出所:植田氏講義資料より
社員エンゲージメントを高める仕組み
社員のエンゲージメントを高めることは、組織の競争力を維持する上で非常に重要である。同社は「オールハンズミーティング」(会社・組織の全従業員が参加する会議)や「ワンオンワンミーティング」(上司と部下が定期的に行う1対1の対話)を通じて、社員間のコミュニケーションを活性化させている。また、感謝を共有するアプリケーションを導入し、社員同士のポジティブな関係を促進。そうすることで組織の一体感を強化している。これらの取り組みは、社員の満足度向上だけでなく、組織全体の生産性と創造性を向上させる効果を生んでいる。特に、社員が自分の役割を理解し、組織の目標に共感することで、企業全体のパフォーマンスが向上する点は注目に値する。同社の事例は、中堅・中小企業が社員のエンゲージメントを高めるための具体的な施策を検討する際の参考になる。

バリューを軸にしたカルチャー改革の一環として、サンクスカードアプリを導入している
出所:植田氏講義資料より
 
                      コーポレートブランディング部
シニアマネージャー
 
				 
					 
					