【第4回の趣旨】
タナベコンサルティングの「企業価値を高める戦略CFO研究会」第4回テーマは「企業価値を高めるPBR改革と戦略CFOの役割の進化」である。
企業価値を向上させる上で、CFOの役割がいかに重要であるか、またその役割をどのように進化させるべきかについて、タイミーおよび大日本印刷の講義を通じて学んだ。企業の成長速度や成長段階に応じて、CFOとして何を考え、どのように行動すべきかをあらためて理解し、自社に活用することが求められる。
開催日時:2025年8月27日(東京開催)
「働きたい」と「働いてほしい」をマッチング
タイミーは、従来の「雇用」に焦点を当てたサービスではなく、労働者の「スキマ時間」、すなわち「スポットワーク市場」に着目した、「働きたい時間」と「働いてほしい時間」をマッチングする新サービスを展開する急成長企業である。同社は2024年に東証グロース市場に新規上場を果たし、今後さらなる成長が期待されている。
今回の研究会では、取締役CFOである八木智昭氏が「急成長企業におけるCFOの役割」をテーマに講演を行った。講演では、上場後の事業戦略やそれに伴う新規投資、CFOとしての役割、さらに自身が重視しているポイントやIR活動について幅広く解説いただいた。
出所:タイミー講演資料
競争優位性を意識した事業戦略と投資戦略
スポットワーク市場は成長期のため、他社の新規参入がますます加速していくと予想される。そのため同社は、先行者優位によって得た、他社よりも多く蓄積されているワーカーデータを活用した戦略を推進している。
また、「エリア×業界」でマーケットを捉え、地方中核都市や深刻な労働者不足に悩む宿泊・介護・保育業界にも事業分野を広げていくことを考えている。
このような事業戦略を推進していく上では、継続的なプロダクト開発が必要である一方、どの分野に重点投資するのかが重要になってくる。同社では、タイミー事業とシナジーが期待できる領域に限定し、投資資金は手元資金、銀行借入調達、エクイティー調達の順番で活用すること、投資回収期間に重点を置いた投資を行うことなどの「投資規律(投資判断基準)」を整備している。
非連続成長に向けた新規投資 出所:タイミー講演資料
急成長企業におけるCFOの役割
CFOの役割は、単なるファイナンス業務にとどまらず、中長期的な視点で事業をどのようにスケールさせるか、また経営をどのように進めるべきかを考え、意思決定を行うことである。
さらに、スタートアップ企業のCFOとして八木氏が重視している点として、次の3つを挙げた。
①合理と情理を使い分けること
②全ての意思決定をミッションにひも付けること
③働き手の前で自信を持って意思決定を行うこと
合理的な判断に偏りすぎると、現在の延長線上のビジネスしか展開できない。そのため、スタートアップ企業ではミッションを最重要の判断基準として位置付け、合理と情理のバランスを取ることがCFOとして重要である。
経営視点での業務遂行 出所:タイミー講演資料
IRの重要性と取り組み事例
タイミーの株価は、スキマバイトの不正利用報道などの影響を受け、上場後に大きく下落したが、現在は回復傾向にある。同社はIR活動として、米国、英国、アジア、日本など世界各国の投資家と四半期ごとに約150件の面談を実施している。その結果、現在では株主のうち海外機関投資家が40%を超える割合を占めている。
また、従業員に対しても「社内IR」という名目で、投資家がタイミーに期待している内容を共有する勉強会を実施するなど、さまざまな取り組みを行っている。
タイミーのIR活動 出所:タイミー講演資料
