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研究リポート
顧客創造モデル研究会
顧客創造の仕組みだけではなく、体制や制度等にも注目し、時代に合った“顧客創造モデル”を実現している企業を研究していきます。
研究リポート 2025.08.27

地域密着×思想営業が導く「圧倒的シェアと顧客創造」 シアーズホームグループHD

【第3回の趣旨】
デフレからインフレ経済へと移行する中で、企業が適正な利益を確保し成長するには、新たなファンを創造することが不可欠である。そのためには、営業活動の一環としてではなく、中期ビジョン実現の一環として顧客創造を捉え直し、仕組み・体制・制度を経営者主導で構築する必要がある。顧客創造モデル研究会では、顧客創造の仕組みだけでなく、体制や制度にも注目し、時代に合った“顧客創造モデル”を実現している企業を研究する。第3回では、株式会社三松、株式会社シアーズホームグループHDの2社にゲスト登壇いただいた。

開催日時:2025年6月17日

 

はじめに

 

住宅事業や不動産事業などを手掛けるシアーズホームグループは、熊本を中心に30拠点で展開している。紹介率は40%と業界では異例の数字をたたき出し、2016~2021年度の5年間で総売上高を約2.4倍まで伸長させた。

 

同社の成功の鍵は、地域密着型の経営と、社内における理念の浸透にある。「顧客創造は社員が実行する」ということを主軸に、社員一人一人が理念に共感している。また、顧客創造を実行する仕組みが構築されており、取り組みは企業全体の成長戦略として機能している。講演では、シアーズホームグループの顧客創造を実現するための具体的な手法と成果についてお話しいただいた。


シアーズホームグループHD 総売上高・経常利益の推移

 


 

理念共感で顧客創造の基盤を築く

 

シアーズホームグループの顧客創造の基盤は、社員が理念に共感し、感情を動かされることにある。「お客様満足を通じて自らの幸福を実現する」という理念を社員が深く理解し、理念に沿った行動をとることで、顧客との信頼関係が築かれている。理念の共感を促すためには、単なる言葉として掲げるのではなく、理念に対する情熱や思想を繰り返し働きかけることが重要だ。人は感情によって動くため、社員が「これをやっている自分は素敵だ」と思えることが、理念を実現するための自発的な行動へとつながるる。このように、理念共感を通じて社員の行動変革を促すことは、顧客創造の基盤を築く上で欠かせない要素である。


シアーズホームグループHDの展示場やショールーム。熊本に20拠点、佐賀に1拠点、福岡に8拠点、鹿児島に1拠点と合計30拠点展開する

 

リーダーが感情を動かし組織を導く

 

持続的に顧客創造を実現するためには、リーダーシップが重要である。シアーズホームグループでは、リーダーがメンバーに働きかけることによって組織の雰囲気が作り上げられると考えている。そのため、「人を主語」にしたコミュニケーションや、社員の感情に配慮した言葉を選ぶことで、社員のモチベーションを高め、組織全体の文化を形成している。また、役職者と社員の距離を縮めるために役職を上下関係ではなく役割として捉え、現場の声を吸い上げやすくしている。顧客に向き合う社員の対応は、上司や組織文化が反映される。顧客の信頼性を高め、持続可能な成長を実現するためには、リーダーが感情を動かし、組織を導くことが重要である。


これまでの施工実績10,000棟以上。地元である熊本の気候風土を知り尽くしている同社は30年後も安心して住める家づくりを目指している

 

思想営業で顧客の心を動かす

 

シアーズホームグループが実践する「思想営業」は、価格や機能ではなく「想い」を伝える営業手法である。この手法の本質は、顧客に「この人(営業パーソン)は本気で自分の幸せを考えている」と感じてもらうことにある。顧客との信頼関係を構築できれば、次の顧客の紹介を生む可能性がある。

 

そのためには、社員が「この顧客を幸せにできるのは自分しかいない」と思えるような感情を持つことが重要であり、その感情を起点に行動することで、顧客との深い信頼関係が築かれる。同社では時代に合わせて柔軟に営業手法を変化させている。例えば、従来の手紙によるフォローをLINEに切り替え、顧客のニーズに即したコミュニケーションを実現している。このように、思想営業は単なる営業手法ではなく、顧客の心を動かし、持続的な顧客創造を可能にする戦略的なアプローチである。


シアーズホームグループHD本社

PROFILE
著者画像
橋本 葵 氏
シアーズホームグループHD 代表取締役社長