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研究リポート
PR/広報研究会
クロスメディア時代を生き抜くために欠かせない「PR/広報」の本質的価値と、顧客体験価値向上に成功している企業の事例を通して、最適なコミュニケーション手法を研究します。
研究リポート 2025.07.30

中小企業特化の採用戦略PRのコツ 北海道アルバイト情報社

【第3回の趣旨】
タナベコンサルティングのPR/広報研究会では、多種多様な他企業の成功事例から、自社におけるPR戦略構築~具体的実装力を強化する方法を学び、自社の魅力を最大限に発信する広報・PRのメソッドを提供する。
第2期第3回のテーマは「コーポレートPR/採用PR」。PMVV(パーパス、ミッション、ビジョン、バリュー)を軸にしたコーポレートPRや、採用活動をPR視点で戦略的に実装する採用PRについて、戦略の考え方をゲスト講師2社(LAUGH GROUP、北海道アルバイト情報社)にご講演いただいた。

開催日時:2025年6月27日(北海道開催)

 

はじめに

 

株式会社北海道アルバイト情報社(以降、HAJ)は1971年に創業した求人、人材サービス会社であり北海道全域で事業を展開している。同社のパーパスは「北海道で『たのしくはたらく』を増やす」であり、北海道の企業と求職者をつないでいる。

 

求人企業や求職者のニーズやエリアに合わせた「アルキタ」「ジョブキタ」などのメディア運営を中心に、地元を応援するためのイベントを企画したり、子ども向けにキャリア教育の機会を提供したり、北海道に根差した活動を幅広く行うことで道内における認知を獲得している。

 

今回は北海道の採用に欠かせないHAJに、採用活動の重要な要素を広報戦略室室長の日景氏にご講演いただいた。


片手間が引き起こす負のスパイラル
出所:日景氏講演資料

 


 

中小企業の採用業務の体制作り

 

中小企業の採用担当者の70%以上が他の業務と採用活動を兼務しており、採用に十分な時間やリソースが割けないという課題を抱えている。この課題を解決するために、中小企業が目指していくべき採用業務の体制作りのコツは次の3点である。

 

1つ目は、兼業ではなく専任者を配置すること。主たる業務+採用業務という状況が最も負のスパイラルに陥りやすい。採用業務の陣頭指揮を執り、PDCAを回せる担当者をまずは1人置くことから始める。

 

2つ目は自社にノウハウがない課題は外部に委託し、業務効率化の向上を目指すこと。

 

3つ目は採用業務管理システム(ATS)の導入で事務的な負担を減らすこと。より戦略的な業務に集中できる環境を整備する。

 

採用戦略の立て方とアプローチ手法

 

採用戦略の基本的な流れは、①体制の構築→②KGI/KPI設定→③求める人物像(ペルソナ)の明確化→④自社のアピールポイントを整理→⑤手法の選定と採用ファネルの落とし込みである。

 

HAJの採用課題は、主に母集団形成とマッチング精度の向上であった。交通広告・ウェブ広告・説明会・TVCMなどで企業の認知拡大を狙い、リクルートサイトやYouTube、インターンシップなどのコンテンツを充実させることで自社への理解を促進した。その結果、母集団形成に関しては課題が残るものの、ブランディングを意識した情報発信により、学生の企業理解が進み本エントリー率が向上した。

 


採用戦略立案の流れ
出所:日景氏講演資料

 

採用パートナーを見つける

 

採用戦略の立案・実行(ブランディング、PR)を進めていく上で重要なことは良い採用パートナーを見つけることである。良い採用パートナーに共通する要素は次の3つである。

 

1つ目は労働市場の今を知っているか。採用は「モノ」ではなく「人」が中心だ。人の心は刻々と変化するため、過去の傾向から未来を推し量ることが難しい。だからこそ、日々採用の現場に身を置いている人を味方に付ける必要がある。

 

2つ目はメディアの特性を理解してるか。メディアごとの特性を押さえ、最適なメディアミックスを提案してくれる人を見つけたい。

 

3つ目は企業と求職者の間に立てるか。企業の思いをくみ取り、求職者の視点になって思いを伝達してくれるか。企業の独りよがりや世間ズレに気付き、時にはNOと言ってくれる人に頼ると良いだろう。

 


採用手法の選定とファネルへの落とし込み
出所:日景氏講演資料

PROFILE
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日景 政道 氏
株式会社北海道アルバイト情報社 
広報戦略室 室長