【第5回の趣旨】
株式会社吉勝重建は、1988年創業の解体工事業の企業である。建物解体工事、内装解体、はつり工事、アスベスト除去工事などを手掛け、産業廃棄物の収集・運搬・処分まで一貫して行っている。本社を福井県福井市に置き、東京都、兵庫県、滋賀県、石川県にも拠点を展開し、全国で事業を行っている。
同社は、「解体工事を通じ日本の未来づくりに貢献する」という経営理念を掲げ、土地の資産価値向上と資源・エネルギーの有効活用を目指している。グローバル人材の活用にも積極的に取り組み、多様な文化背景を持つ人材が活躍できる環境を構築している。
今回の講演では、「グローバル人材を活用した経営戦略」と題し、日本の人材不足が進む建設業界の課題に対し、外国人材を活用した経営戦略、具体的な採用・育成、そして日本人社員との共育を通じた持続的成長について学ぶ。
開催日時:2025年5月20日(北陸開催)
建設業の人口減少と人材課題
日本の人口動態は少子高齢化が進行しており、2020年時点で国民の約3割が65歳以上になった。2025年には東京でも人口減少が見込まれており、全国の住宅の1/3が空き家になる可能性も指摘されている。人口ピラミッドが示すように平均年齢が上昇し続け、2030年には約50歳になる予測である。
現在の50歳以上の社員が今後10年、15年で第一線を退くことを考えると、若い世代の補充・育成が追いつかなければ企業の運営自体が困難になるという危機感がある。日本人人口の減少と外国人人口の増加は確実な流れであり、建設業界全体としての人材確保は極めて難しい状況である。特定技能ビザを持つ外国人が急速に増加している現状を踏まえ、外国人労働者を受け入れることは、少子高齢化が進む中では避けられない状況である。
外国人材活用戦略と実践
外国人材の活用は不可避だが、数を増やせば全て解決するわけではない。特定技能や技能実習ではベトナム、インドネシアからの人材が多い(ベトナム46.8%)が、ベトナムの経済成長により今後の人材流入は不透明だ。近年注目しているのはネパールからの技人国ビザを持つ高度人材である。彼らは大卒以上で「施工管理技士」を目指すなど高い目標を持ち、世界で活躍することを目的として勉強している。
採用にあたっては、語学力や知識よりも、社長自身が「将来一緒に仕事をするイメージが湧くか」というフィーリングを最も重要視している。入社後は、午前中に日本語学習、午後に現場作業というカリキュラムで建設業の専門用語を含む日本語教育を行い、苦手ではなく得意なことを伸ばす育成方針を取っている。企業側がチームの監督のように、社員の適性を見て配置する責任があると考えている。
外国人従業員のための寮
オフィスのカフェスペース
共育環境整備と将来
外国人人材の能力を引き出し、日本人社員と共に成長できる環境を整備するのは企業の責任である。彼らの活用成功は企業側の準備体制にかかっているため、日本人社員には少子化による人材不足や外国人材の役割(日本人若手のサポート等)を事前に説明し、職場の調和を図ることが必要である。
安全教育については知識不足が事故につながると考えており、ベトナム語、インドネシア語、英語での翻訳資料提供などの工夫をしている。ネパールからの高度人材には、入社後約4カ月間、午前中に建設専門用語を含む日本語学習、午後に現場作業を行っており、日本語学習の時間も給与を支払っている。
さらに彼らが目指す施工管理技士等の資格取得に向けた支援も行っている。外国人が運転をすることのリスクに対しては、社内規定の徹底、警察OBの運転チェック、一定期間の日本人同乗義務付け等の対策を実施している。また、現場での教育は簡単な作業から段階的に進め、母国語での教育と熟練者とのペア作業が有効である。
今後はトレーニングセンター開設や外国人向け技能講習も計画中である。これらの継続的な環境整備と挑戦が、10年後20年後の会社を強くするために不可欠であると考えている。社員の能力、特に得意なことを伸ばせるよう、企業はチーム監督のように適材適所で育成・配置する視点が重要だ。
受付・エントランス
