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研究リポート
PR/広報研究会
クロスメディア時代を生き抜くために欠かせない「PR/広報」の本質的価値と、顧客体験価値向上に成功している企業の事例を通して、最適なコミュニケーション手法を研究します。
研究リポート 2025.05.30

リアルとデジタルでつなぐステークホルダーとのコミュニケーション やまやコミュニケーションズ

【第2回の趣旨】
タナベコンサルティングのPR/広報研究会では、多種多様な他企業の成功事例から、自社におけるPR戦略構築~具体的実装力を強化する方法を学び、自社の魅力を最大限に発信する広報・PRのメソッドを提供する。
第2期第2回のテーマは「サービス/商品PR」。自社サービス/商品をステークホルダーへ情報拡散させていく「情報連鎖」を生み出すさまざまな仕掛けを、ゲスト講師2社(ダイショー、やまやコミュニケーションズ)にご講演いただいた。

開催日時:2025年4月24日(福岡開催)

 

はじめに

 

やまやコミュニケーションズは1974年に創業し、2024年に50周年を迎えた。辛子明太子をはじめとした水産品・一般食品の加工販売を行う業界のリーディングカンパニーである。商品・サービスの魅力を伝えるマーケティングの視点から、明太子そのもののルーツや、食材としての特徴を広く周知する広報の取り組みに至るまで、ご講演いただいたのは代表取締役社長である山本正秀氏。本社での体験価値の創出や、トレンドをおさえたタイアップ、こだわりのメディアプロモーションなど、PRにかかわる具体的な手法や実践内容を踏まえながらポイントを解説いただいた。

 

顧客との接点(タッチポイント)をいかに増やすかを重視し、外食産業や各種小売店、直販の店舗運営など販売チャネルの幅を広げるブランドビジネスモデルを設計している。

 


やまやコミュニケーションズ本社·本社工場

 


 

ブランドビジョンと体験価値(CX)にこだわったマーケティング

 

多岐にわたる商品や、事業を展開している同社だが、パッケージをはじめとしたブランドデザインや各種広告でのクリエーティブ一つ一つにこだわり、ブランドビジョンが正しく伝わるように徹底している。

 

また、本社で実施している明太子の漬け込み体験や工場見学、アグリ事業での農業体験など、実際に消費者に参加・体験してもらう取り組みに注力。やまやコミュニケーションズのブランドビジョンへの共感を高め、いち消費者からファンになってもらう狙いがあるという。単なる商品訴求だけではファン化は難しくなった現代において、より効果的なマーケティング戦略を実践している。

 


漬け込み体験の様子

 

 

タッチポイントを意識したコミュニティーの形成

 

辛子明太子の製造・toC向け販売が事業の軸であるが、直営店舗の運営、外食産業への参入、小売店・量販店・空港などさまざまなチャネルへの卸売りなど、幅広く事業を展開している。そうすることで幅広いステークホルダーとの接点が生まれ、やまやコミュニケーションズへの認知や共感が生まれる。

 

多岐にわたる事業展開を牽引するのは、同社の商品開発力だ。明太子の良さを最大限に生かしながら調味料やお弁当、だし、もつ鍋、さらにはお菓子など、幅広いジャンルの商品を開発している。長年の研究が幅広い商品ラインアップを可能とし、多彩なラインアップがあるからこそチャネル展開の拡大につなげられ、生活者との接点を多くのシーンで生み出すことができるのである。

 


明太子への理解が深まるムービーを見る参加者
 

リーディングカンパニーならではの市場を活性化させるPR

 

自社の商品プロモーションだけでなく、明太子や素材そのものの良さを知ってもらう取り組みに同社は注力している。競合との優位性を示すこともPRにおいて重要だが、市場自体を拡げていく情報訴求もPRの重要な観点である。

 

また、市場の魅力を率先して発信することによって、この市場のリーダーだと生活者へ認識してもらうことにつながり、結果的に大きなメリットがある。特に広報の観点では第三者からの情報発信は公共性の高い情報になるため、「市場の魅力×社会性×自社(商品)の魅力」を意識した活動が効果的である。


明太子の魅力を伝える・肌で感じることができる工場見学

PROFILE
著者画像
山本正秀 氏
株式会社やまやコミュニケーションズ
代表取締役社長